Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す
(10)いびつな傾倒
◇ ◇ ◇
「うっわー……
やっぱり、不都合な生徒はみんな転校させられてるんだ」
私服の『せーちゃん』は、ファミレスのテーブルの上で、皆が持ち寄った情報を、ノートにまとめながら呟いた。
テーブルの上には、それぞれの色がついたフリードリンクのコップが雑多に並んでいる。
「そだねー。びっくりしたね。この、去年からの1年生から3年生の転校の数は。こんなに転校してたんだ?」
「公立だから、退学とかはできないからかなー」
今日は『せーちゃん』についている取り巻きは3人。いつもの子が2人、体調不良でダウンしているので来られない、という。加えて、元カレも同席している。
元カレは、『せーちゃん』以外の少女たちの疲れた顔を見ながら、自分の報告を始めた。
「確かに転校は多いんだけど…
それも、いじめの中心メンバーだった奴が転校してる、ってことが多い」
「そうなんだ。
どういう理由で?」
「とりあえず、慌ただしいのが多いかも。
住所変わってないけど転校だけしてるパターンもあった。
どうやって親に働きかけてるのかはわからん。
でも、何人かは、その前に何かしらで警察沙汰になったっぽい。
身に覚えのない、傷害とかで」
「……え?」
「あと、いじめの中心だったはずが、いつのまにかハブられてた系もあった。親も、おおごとにするわけにいかなくて、すっと転校させた感じ。
わりとそういう奴は、反省してたね」
「ハブられてた……?
そっちも、なんか会長が関わってたのかな」
「……そうとは限らないんじゃねぇ? だって、いじめの加害者と被害者なんて、結構簡単に入れ替わるもんじゃん」
やや、突き放したように元カレが言うのだが、『せーちゃん』は、こんな些細なことでも気にくわないらしく元カレをにらむ。
「そんなことないよ。
いじめられる奴なんて、理由があるからいじめられるんだよ」
「きた。想像力の欠如ってやつ」
「……は?けつじょ?」
「いじめられる理由はあるかもしれねーけど、その理由なんて要はこじつけで。口実はなんでもいいんだよ。頭悪いとか、良すぎて調子のってるとか、巨乳とか貧乳とか、チビとかデカイ奴とか。
どんな個性だって『調子のってる』ってつけたらいじめのターゲットになりうる。
正直、いじめの中心になってた奴なんて、いついじめられる側に回ってもおかしくないと思うけどね……」
ふん、と鼻を鳴らして、『せーちゃん』は顔を背けた。
「いいよ、一果ちゃんに聞くから!」
「は?いちか、って……」
「こないだの女の子。
六角一果ちゃん。
聞いたらなんでも調べてくれるんだよ!!」
「……怪しくねーか、あの女」
「はぁ?ガチ不審者のあんたに言われたくないよー。
ねぇ?」
『せーちゃん』が周囲の少女たちに声をかけるが、疲れた様子の少女たちは上の空だ。
「最近さぁ、なーんか周りの奴ら、みんな役に立たないしさー。調べて、って言っても、はぐらかしてばっか。今日来てない子らも、なんかメール返ってこなくなっちゃったし……」
「あら?そうなの?」
後ろから声をかけられ、『せーちゃん』が嬉々として振り向くと、そこにいつの間にか六角一果が立っていた。
「お待たせ」
「一果ちゃん!」
『せーちゃん』が嬉しそうな声をあげる。
相変わらず、美しすぎる。
不気味なほどの美少女ぶりだ。
「待ってたよ!!
みんな飲み放題頼んでるの。
一果ちゃんは何のむの?」
それ以上に不気味なのは、この短期間での『せーちゃん』の傾倒ぶりだ。
「そうねー。ちょっと考えるわ。
ここに座っていいかしら?」
優雅に隣の席から椅子を引くと、元カレの横にするりと座ってくる。
その場にふわりと、甘い香りが漂った。
「さっき話をちらっと聞いちゃったんだけど、お友達と連絡が取れないの?」
「あ、うん…」
「そっか……ちょっと怖いわね」
「え?」
悠然と微笑んでいた一果の美しい顔に、ほんのわずか、わざとらしい眉のひそみが浮かぶ。
「何が?」
「彼女……生徒会長たちの手口よ。
気に入らない集団があっても、正面から正々堂々は闘わないの。
弱いところから攻めて、少しずつ切り崩して、『組織』を『解体』してくのよ」
「…………は?」
わざわざ『たち』をつけた意味がわからないのだが。
「表面上はそのまま従わせておいて内心では裏切らせて、真ん中の一人を、気づかないうちにたった一人にまで削って。
そして。ある日突然……」
「うっわー……
やっぱり、不都合な生徒はみんな転校させられてるんだ」
私服の『せーちゃん』は、ファミレスのテーブルの上で、皆が持ち寄った情報を、ノートにまとめながら呟いた。
テーブルの上には、それぞれの色がついたフリードリンクのコップが雑多に並んでいる。
「そだねー。びっくりしたね。この、去年からの1年生から3年生の転校の数は。こんなに転校してたんだ?」
「公立だから、退学とかはできないからかなー」
今日は『せーちゃん』についている取り巻きは3人。いつもの子が2人、体調不良でダウンしているので来られない、という。加えて、元カレも同席している。
元カレは、『せーちゃん』以外の少女たちの疲れた顔を見ながら、自分の報告を始めた。
「確かに転校は多いんだけど…
それも、いじめの中心メンバーだった奴が転校してる、ってことが多い」
「そうなんだ。
どういう理由で?」
「とりあえず、慌ただしいのが多いかも。
住所変わってないけど転校だけしてるパターンもあった。
どうやって親に働きかけてるのかはわからん。
でも、何人かは、その前に何かしらで警察沙汰になったっぽい。
身に覚えのない、傷害とかで」
「……え?」
「あと、いじめの中心だったはずが、いつのまにかハブられてた系もあった。親も、おおごとにするわけにいかなくて、すっと転校させた感じ。
わりとそういう奴は、反省してたね」
「ハブられてた……?
そっちも、なんか会長が関わってたのかな」
「……そうとは限らないんじゃねぇ? だって、いじめの加害者と被害者なんて、結構簡単に入れ替わるもんじゃん」
やや、突き放したように元カレが言うのだが、『せーちゃん』は、こんな些細なことでも気にくわないらしく元カレをにらむ。
「そんなことないよ。
いじめられる奴なんて、理由があるからいじめられるんだよ」
「きた。想像力の欠如ってやつ」
「……は?けつじょ?」
「いじめられる理由はあるかもしれねーけど、その理由なんて要はこじつけで。口実はなんでもいいんだよ。頭悪いとか、良すぎて調子のってるとか、巨乳とか貧乳とか、チビとかデカイ奴とか。
どんな個性だって『調子のってる』ってつけたらいじめのターゲットになりうる。
正直、いじめの中心になってた奴なんて、いついじめられる側に回ってもおかしくないと思うけどね……」
ふん、と鼻を鳴らして、『せーちゃん』は顔を背けた。
「いいよ、一果ちゃんに聞くから!」
「は?いちか、って……」
「こないだの女の子。
六角一果ちゃん。
聞いたらなんでも調べてくれるんだよ!!」
「……怪しくねーか、あの女」
「はぁ?ガチ不審者のあんたに言われたくないよー。
ねぇ?」
『せーちゃん』が周囲の少女たちに声をかけるが、疲れた様子の少女たちは上の空だ。
「最近さぁ、なーんか周りの奴ら、みんな役に立たないしさー。調べて、って言っても、はぐらかしてばっか。今日来てない子らも、なんかメール返ってこなくなっちゃったし……」
「あら?そうなの?」
後ろから声をかけられ、『せーちゃん』が嬉々として振り向くと、そこにいつの間にか六角一果が立っていた。
「お待たせ」
「一果ちゃん!」
『せーちゃん』が嬉しそうな声をあげる。
相変わらず、美しすぎる。
不気味なほどの美少女ぶりだ。
「待ってたよ!!
みんな飲み放題頼んでるの。
一果ちゃんは何のむの?」
それ以上に不気味なのは、この短期間での『せーちゃん』の傾倒ぶりだ。
「そうねー。ちょっと考えるわ。
ここに座っていいかしら?」
優雅に隣の席から椅子を引くと、元カレの横にするりと座ってくる。
その場にふわりと、甘い香りが漂った。
「さっき話をちらっと聞いちゃったんだけど、お友達と連絡が取れないの?」
「あ、うん…」
「そっか……ちょっと怖いわね」
「え?」
悠然と微笑んでいた一果の美しい顔に、ほんのわずか、わざとらしい眉のひそみが浮かぶ。
「何が?」
「彼女……生徒会長たちの手口よ。
気に入らない集団があっても、正面から正々堂々は闘わないの。
弱いところから攻めて、少しずつ切り崩して、『組織』を『解体』してくのよ」
「…………は?」
わざわざ『たち』をつけた意味がわからないのだが。
「表面上はそのまま従わせておいて内心では裏切らせて、真ん中の一人を、気づかないうちにたった一人にまで削って。
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