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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(8)不審な情報

   ◇ ◇ ◇


 デスクトップパソコンのキーボードを、苛立たしげに叩き続ける音が響いている。


「弓名。ちょっと音」


 りえるがたしなめるのに一瞥くれて、ほんの少し指のペースを落とした。


 速く打とうとすると音が強くなる癖がある。苛立っていると尚更静かに打てない。


 43階の、日差しが入る大きなリビングの端に堂々たるデスクが据えてある。


 そのパソコンを使って、生徒会長としての持ち帰り仕事をやっているのだ。


 テレビを見ている少女たちが、居心地悪そうにこちらを見てくるのを、出来るだけ無視している。


「……仕事デキル風なことやってるけどさ。
 資料を勝手に家に持って帰るのは、情報漏洩の危険があるからフツー駄目だと思うよ。
 大人がやったら懲戒免職もあり得るんだけど」


「……個人情報とかではないので」


「そういう問題じゃなくて、習慣としてさ。
 あと、仕事を持ち帰ること自体も当たり前になっちゃ駄目だよ。
 上司が仕事量も労働時間も把握できないことになんじゃん。
 弓名の場合だと、先生か?」


「………………」


 正直、りえるのこういう『社会人として』の上から目線が嫌いだ。


 ……好きで遅く生まれたんじゃない。


 ……まだ中学生なことや、働いたことがないのも、私が悪いわけじゃない。


 金を稼いでくるかどうかや経験の有無で価値や順位を決められるなんて、理不尽だ。


(………………)


 いや、苛立っている理由は、本当はりえるでも生徒会の仕事でもないのだけど。


 目の前に当事者がいないものをどうすることも出来ず、ふと手を止めて、彼女はため息をついた。


 シュウは朝から出掛けている。


 子供たちをAVに出演させていた組織を率いていた、ヤクザの娘の足跡を追っているらしい。


 お気に入りの31歳美人刑事と一緒かどうかは知らないが。


 そして、こちらには“足りないものが多すぎる”らしいが。
 思い出したら段々ムカムカしてきた。


「……ゆっちゃーん。いるー?」


 のんびりした声の主がとんとんとリビングの中に入ってくる。
 早那子はその手に、携帯を持っていた。


「……なんですか?」


 シュウを除けばここの最高司令官は早那子だ。りえる以上に無視出来ない。


「……なんですか?」


「美湖ちゃんから電話」


「電話?私に?」


 首をかしげながら早那子から渡された携帯を受けとる。


 木暮美湖は、この間シュウが人身売買業者から保護して、少しだけここで皆と同居していた中学三年生。


 そうして同じ中学に通い始めたものの、何かあったのか、すぐに祖父母に引き取られていなくなった。
(※第三話参照)


 短い間にも、美湖は早那子にはよくなついていたらしく、よく連絡をしてくるようだった。
 ……が、自分に連絡をしてくる理由は何も思い付かない


「もしもし?」


『あ?もしもし?和久さん?久しぶり』


「久しぶり……かしら?」


『……そうだね……』


 しゃべりがあまり上手ではない美湖は、ちょっとくぐもった。


『……あのね?
 同じクラスにいたテニス部の子の、後輩だって子から、昨日、メールが入ったの』


「知らない子から連絡?」


『そうだよ。あたし、LINEやってないから携帯にメール。あなたは、どうして転校したんですか、って』


「………………?」


『いきなり変なこと聞くよね。
 なんだろうと思ったんだけど、あたし、普通に、お祖父ちゃんお祖母ちゃんと一緒に住むことになったからです、って返信した。
 そしたらね。
 なんか、メールの相手が、“会長に何かされたんじゃないんですか?”って聞いてきて』


「……私に?」


『そう。そんなことないって何度も何度も言ったのにしつこく聞いてきて。
 秘密は守る、あなたがしゃべったことは言わない、みんなそうやって隠すんです、って……。
 和久さん、そんなこと聞いてくる人の心当たりある?』


「……ううん、全然」


『だよね…。
 なんか、気味悪くなっちゃって、返信やめて放置しちゃってるんだけど。
 なんか、そんなストーカーみたいな人が本当におんなじ中学の子だったら怖いな、と思って、電話しました』

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