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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(6)恥ずかしいのは一体どっち?

   ◇ ◇ ◇


 まるで昭和の不良のように。運動部の部室棟の裏に『せーちゃん』の元カレを呼び出して、少女たちは5人で彼を囲んだ。




「和久会長をいじめてた先輩?
 そんなこと聞いてどうすんの?」


「……は?関係ねーだろ。
 余計なこと聞かず教えればいいんだよ」




 『せーちゃん』は、一生懸命悪ぶった言葉を元カレにぶつける。


 だが、かなり長身の元カレには、小柄な女の子の甲高い声の脅迫はまるでこたえないようだ。
 中学2年生のはずだが、声変わりどころか、成人男性の平均身長さえだいぶ越えている。




「教えてもいーけど、いくらくれる?」


「は?金取るのかよ」


「金じゃなくてもいいけど?」




 『せーちゃん』の方を見て、にやりと笑う元カレに、「うわあ……」「キモッ」「サイテー」の声が連続で投げつけられる。
 元カレは、その反応を予想していたようにうなずいて、




「俺にメリットがないんなら、言う理由もないよね♪ むしろお前らがなんかかぎまわってんなぁってことを会長にチクった方が、俺にとって得じゃん?」


「バカじゃないの?
 魔女狩り将軍なんかに協力するなんて」


「そうだよ。
 みんな敵に回してシカトされても知らないから」


「みんなムカついてんだよ?あの……女には」


「そうそう。男だからって安心してんじゃねーよ」


 『せーちゃん』を援護する少女たちだったが、やれやれと、元カレは肩をすくめながらバカにしたような笑みを浮かべた。




「これだから、周りの見えてないガキは…」


「はぁ?なにそれ」


「どの『みんな』か知らないけど、おまえらの言うその『みんな』が一体何できんの?
 やれてせいぜい、クラスで無視とか教科書捨てたりとかじゃん?
 なに? 俺をサッカー部のレギュラーからはずせんの?」


「…………!!!」


「それとも俺に怪我でもさせる?
 先輩抱き込んで、部活んなかで俺をはぶらせる?
 悪いけど、うちのサッカー部、そんなレベル低いことやってる余裕ないんだわ。そんな幼稚ないじめごっこは、おまえらだけでやってれば?」


「……変態がかっこつけてんじゃねーよ……」


「大人なだけですよー。
 おまえより会長の方が、美人で隠れ巨乳だしね。
 知ってる? あの人普段サラシ巻いて胸つぶしてんの♪」


「……………ストーカー?」


 少しずつ、取り巻きの少女たちが分の悪さを感じて後ずさりし始めた。


 それを尻目に、『せーちゃん』はしばらく思案したのちに口を開いた。


「あんた……結局、会長狙ってんの?」


「狙ってる、って言うか……まぁ、いまは脈も接点もないけどねー。
 でも生徒会長は全部活把握してるし、試合で活躍すれば、否応なく目を留めてくれるよね。
 生徒会賞とれば、話す機会もあるし」




 すらすらと言ってのける元カレに、キモッ、なにこの手のひら返しぶり、などと、えらく引いている周りの少女たちは置いておいて。


 『せーちゃん』は、その言い分を静かに聞いてから、返した。




「確率はどれぐらいだと思う?」


「……さぁ?今の段階じゃイメージできんけど」


「もっと確実にモノにできる方法があるのわかってる?」


「……は?」




「私とあんたで組んで、一緒に会長の過去掴んでさ。その弱味で脅せばいいんじゃないの? 私はこっちの邪魔をしないように言って、あんたはあの女をモノにすれば?」




 コイツの性格上、100パーセント乗るはずだ。『せーちゃん』はそう計算して言った。なのに、元カレはあっさり鼻で笑う。




「……まず、お前の感覚が色々ずれてんだけど。なんで、いじめられた過去が恐喝の種になんの?」


「はっ?
 だってそれは、恥ずかしいから…?」


 元カレから問いかけられた言葉に『せーちゃん』は戸惑った。
 いったい何を言ってるんだこいつは?




「いやいやいやいや? よーく考えよう?
 だれがどう考えたって明らかに、いじめた側の方がバレると恥でしょ??」


「へ………?」


 一瞬、元カレの言葉に呆ける。
 恥ずかしい? いじめた方が? なんで?


「というか会長がされたことの場合、犯罪でしょ?? いじめた側捕まるでしょ? で、いじめてきた奴が100%悪いのに、何でいじめられたことを引け目に感じなきゃいけない?
 ……って、会長だって言いそうじゃない?」


「………………」


 いじめた方が恥ずかしい、という言葉は納得いかなかったが、続いた元カレの言葉は、いかにもあの会長言いそう、と納得できるものだった。


「ま、現在進行形でいじめやってる人は言うことが違うね♪ ちょっと認知がゆがんでるっていうか……大丈夫?病院行く?頭の」


「…けど!会長が遭ってたのって、相当エロいいじめなんでしょ!? あんた写真見てオカズにしてたとか言ってたんじゃ…」


「はいはい。だからむしろ、それ、俺が恥ずかしいことですよね。バレたら『俺が』人生終わるよね?」


「………………」


 どうしてだろう、話がまったく通じない。
 『せーちゃん』は宇宙人でも見る思いで元カレを見ていた。放課後の時間は、無駄にじりじり過ぎていく。


「……でも、その写真は、脅しの種になるじゃん? 広められたら、会長だって………」




「なに考えてんの?」


「先輩が保存してるんでしょ?
 だったら……」


「無理」


「………え?」


「二重の意味で無理。まず、俺が先輩に見せてもらった写真は、小学校の時のだから。脅しの種にはまず、無理、です」


「小学校の?で、でも!」


「顔は映ってなかった上に、今と体型が全然ちげーから、会長のだって信憑性は全然ねえし。
 そもそも、小学生の裸をうちの中学の不特定多数相手に流した時点で、即、通報されて警察来るわ」


「………でも、他にも写真があるんなら?
 それこそ、もっと新しい……」


「うーん。
 実はそれも無理な理由がもうひとつあって」


「……何よ、いったい。写真見せてくれた先輩に聞きゃいーじゃん!」


「残念ながら」


 騒ぎ立てる『せーちゃん』を見つめて元カレは、真顔で慎重な口調になりながら、続けた。


「死んでんだよね。その先輩」

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