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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(1)美しき断罪者

   ◇ ◇ ◇






「……お願い!センパイ。
 どうか見逃して!」


 暗い空き教室。


 必死で土下座する下級生を冷たい眼差しで見下ろして、センパイと呼ばれた少女は椅子の上ですらりと長い足を組み替えた。


 隙のないストレートの黒髪は、肩の上でばっさりと切りそろえ。
 きっちりした眼鏡の奥の、整いすぎた顔は、中学3年生にはとても見えない。
 切れ長の目は華やかに開き、長いまつげが影を落とす。きめ細やかな白磁の肌。芸術品のような線を描く鼻筋。
 誰がどう見ても、かなりの美少女、といえる。
 そんな顔なのに、いやそんな顔だから余計に、後輩の恐怖は増していた。


「合成写真のばらまきに、濡れ衣の万引きの密告、ネット掲示板での連絡先さらし上げ…。
 あなたのクラスのテニス部の子たちに命令されてやったことなのね?」


 床に土下座した少女は、こく、こく、と大きくうなずいた。


「だって、あいつらの言うこと聞かなかったら……何をされるかわからないんだもの!」


「被害者の合成写真は、彼女たちが作ったの?」


「たぶん。…あたしに作れるわけないです」


「ふーん…じゃ、あなたがそれを受け取って、どうしたの?」


 アイコラ写真の一斉送信など、中学生のいじめの域を越えている。
 手口がメディアとインターネットで共有されている現代社会らしい悪質化か。


「お願い、センパイ…」


「まだこちらが質問しているでしょう?」


 眼鏡の少女が一段とキツい声でぴしゃりと言うと、とうとう後輩はすすり泣き始めてしまった。


「泣いていたらわからないでしょう。あなたは、何をやったの?」


「…… 密告しなさそうな男子たちに捨てアドレスで送りました」


「テニス部の子たちは、どうして石神井さんをいじめ始めたの?」


「あっ、あのっ……わかりません。たぶん、ちょっとトロくてイラつくから…」


「イラつくから、自殺でもして欲しかったの?」


「!
 そんなこと…」


「いじめを続ければ、そんな可能性もあるって、考えればすぐわかるでしょ?


 こういうの、未必の故意っていうのかな?」


「……違います!
 ただ、ちょっと……アイツ……石神井さんが、バカで、みんなをイライラさせるのが悪いんです。
 もっとしっかりして、みんなをイラつかせなければ、あたしだって嫌なモノ見ずに済むのに」


「…なるほど、気にくわなければなんでもしていいなら、私も今あなたに最高にイラついてるんだけど?」


「ご、ごめんなさいっ!!」


「……まぁいいわ」


 彼女は、足元の後輩に、ぽいっ、とノートを放る。


「な、なに……」


「そのノートに、全部、いじめの関係者の名前を書きなさい。
 所属と関係性と含めてね」


「……これ、あたしが書いたことがあいつらにバレたら……」


「そうね。書かなかったら先生の方にバレるかもね?」


「…………!!」


「もちろん最後にきちんと自筆でサインするのよ?
 無記名なんて当然0点だからね」


 後輩はおずおずと、ノートに手を伸ばした。
 震える手でノートを開き、シャープペンシルを握る。


 眼鏡の少女はあくまでも冷たい目で、後輩を見下ろしていた。




   ◇ ◇ ◇

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