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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(13)絶対に許さない

「それより、子供たちの安全を確認するのが先だよね? それに、美湖ちゃんの妹たちがいるのかどうか……」


「……あっ、あたし、見てきます!」


「あっ、危ないからシュウくんと……」




 覇華の言葉も耳に入らないまま、美湖は小学校の暗い廊下に出た。
 薄ら明かりのなか、冷たい床をひた走る。


 ふだんの自分なら、怖いはずの、学校の怪談の幽霊や妖怪たちも気にならない。どうか、どうかここにいて。


 向こうの方に見える、明かりのついている部屋へ。走る、走る。


 ふと、廊下を向こうから歩いてくる、目をこすりながら歩いてくる目の前の小さい人影に、美湖は目をとめた。


 暗いけれど見覚えが確かにある。


「…………莉乃?」


 美湖が声をかけると、ん、と、顔をあげた。


 それから嬉しげに、とてとてとてとてと走ってきて。


「おねえちゃんっ!
 おかえりなさいっ!」


 美湖にぎゅっと抱きついた。


「……おかえりなさいって……」


 嬉しいというよりもただただ力が抜けて、思わず美湖は膝をつく。


 幻ではないのかと恐る恐る触れて、実体とわかってようやく抱きしめた。


 会いたかった。


「会いたかった……」


 ずっとシュウには言えなかった言葉が自然と漏れてきた。


「うん。よかった。おねえちゃんもぶじでよかった。しんぱいしてたんだよ?どこいってたの?」


「ごめん、本当にごめんね……お父さん、お母さんや、たけるたちは?」


「んと、みんなは、ちかくのじむしょ?にいるってイチカおねえちゃんがいってた」


「病気とか、怪我とかしてない?」


「だいじょうぶだよ。
 さびしかったけど、ここにきてからおともだちいるし、イチカおねえちゃんもやさしくしてくれたから」


「……優しく?」


「うん。イヤなこともあったけど。
 いうことをちゃんときいていたらおねえちゃんがかえってくるよってイチカおねえちゃんがいってくれたから。
 みんなも、イチカおねえちゃんがきてからここ、たのしくなったんだって」


「………………」


 居場所がない子供たちの、居場所になっているーーーー


 子供たちを、一人たりとも引き渡すわけにはいかないーーーー


 一果の言葉がよみがえり。
 一言では言えない思いが体の中をぐるぐると駆け回る。


 だけど、あいつは莉乃に酷いことをした。
 それだけは、絶対絶対、死んでも許さない。




   ◇ ◇ ◇




 何かの物音で、美湖はふと、目を覚ました。


 子供たちの安全を確認したあと、六角一果と六角組の元構成員たちについては、駆けつけたシュウの部下に任せて、シュウと美湖は一旦校長室のソファで仮眠をとっていた。


 膝の上には、みんなのいる部屋に戻るより姉と一緒にいたかった莉乃が、すうすうと眠っている。


 友達がいる、と言っていたが、それでも家族も誰一人いない場所での集団生活はこたえたのだろう。
 先ほども、眠れなくて起き出してしまったのだと言っていた。


「あ、ごめん、起こしちゃった?」


 声をかけたのは、牧ノ瀬覇華だった。


 物音は、3人の様子を確認しに、覇華がドアを開けた音だったらしい。


 窓の外が、うすぼんやり明るい。もう朝も近いのだろう……。


 同じソファのうえで眠り込んでいるシュウを起こさないよう、声をきづかって。


「……ごめんなさい」


 美湖は言った。


「ん、どうかした?」


「色々生意気言って、ごめんなさい。牧ノ瀬さんは、寝ないでがんばってくれてるのに」


「うん。仕事だからね」


「……莉乃を見つけてくれて、ありがとう」


 頭を下げる美湖。


「シュウくんに相談して、できたら莉乃や他のきょうだいも一緒に住めるように……なったらいいな」


「シュウくんに相談……?」


「え」少し不穏な覇華の声に、美湖は顔を上げる。


「……事前に説明もなく、自分の利益のために、美湖ちゃんをあんな危ない場に同席させたんだよね?
 それでもまだ、九鬼くんを信じられるのか、純粋に聞きたいんだけど」


 よく眠っているシュウ。


 覇華の口調にはどこか、シュウが起きていればいいのに、という苛立ちがにじんでいるのが感じられる。


 そんな覇華に対しても、シュウに何てことを、みたいな反発は感じなかった。


 牧ノ瀬覇華は、別にシュウに敵対したいんじゃない……。間違っていると考えて、正したいだけだ。ただ、美湖にとっては違うというだけ。


 美湖は覇華に微笑んでみせた。


「信頼してますよ、あたし。シュウくんのこと、誰より」


「そう?」


 覇華は怪訝そうな顔をするけれど。
 確かにシュウは、口では冷酷なことを言い、危険にも巻き込むけれど。


 シュウは確かに、最短で莉乃を取り戻してくれたし。


 一果が六角組の元組員たちをけしかけようとしたその瞬間、確かにシュウの体はとっさに美湖をかばった。


 それだけでも、充分だと思えたから。


   ◇ ◇ ◇

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