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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(12)この世で最も醜悪な犯罪は

「ん?俺、要求先言いませんけど?」




 しれっとシュウは返す。




「ふうん?
 交渉には現ナマが必要でしょう。時間差で部下がお金を持ってくるか、交渉成立を待って、近くで待機しているか……おそらくどちらかよね。
 付近をあたれば、それらしい人が見つかるでしょう」


「彼らは金を渡しませんよ」


「は?」




「この世で最も醜悪な犯罪は、誘拐だと俺は思います。
 身代金目的の場合、人質を取り戻すために金を払ってしまうから、次の誘拐を生んでしまうという皮肉な連鎖がある」


「いったい、何を言って……?」


「だから俺の部下には言ってあるんです。
 相手が最初から身代金目的ならば、俺が人質になっても絶対に身代金を払うな、と。
 実際に俺が命の危機に瀕してやっぱり払えと言ってきても、絶対に、言うことを聞くな、と」




「…………!!」




 ………命よりも、自分の信念を貫くなんて。それも自分さえ信じずに、弱った自分の心変わりさえ許さずに。


 ………なんて覚悟だろう。




 心が震えた。美湖は思わず、シュウの手に手を伸ばして、ぎゅっと掴んでいた。




「あんたが言わないなら、その女の子
に、どうにかしゃべらせてもらうしかないわね。
 冷酷なあんたは女の子一人ぐらい死なせても、犯されても、何とも思わないかもしれないけど?」


「いいよ、シュウ。気にしないで。
 こんな奴の言うことなんか絶対聞かないで!」




 美湖が強く抵抗を示すと、少女が逆上したように眉をつり上げた。




「黙りなさいよ欠陥商品が!!
 いいわ。お望みどおり、女の覚悟を試してあげるわ。
 ちょっとお前たち、女の方を捕まえて、ひんむいて裸を本名つきでナマ配信してあげなさい。
 1分おきに1本ずつ足の指をツメてくのよ。
 男の方が白状するまで……」




 続く言葉は、廊下の方で起きた雷みたいに大きな……何かがぶつかり合う音によってさえぎられた。




「……なにごと?」


 怪訝そうに開いたドアの向こうの廊下に目をやる一果。


 が……その表情が一瞬で凍りついた。
 廊下にいた屈強な自慢の組員たちが、ものの数秒の間に怒号と悲鳴をあげて黒い疾風のようなものになぎ倒されていったからだ。


「なんだお前、女なんかに……」


 “姐さん”に咎められそうな台詞をうっかり吐いた室内の男は、次の瞬間断末魔のような声を発して前のめりに崩れ落ち。


 さらに残りのものたちも


「あがぁっ!!」


「ごわぁぁっ!!!」


と、Vシネのような音を口から漏らして壁や床に叩きつけられ。


 一果も、気がついた時には腹を押さえて突っ伏し、動けないほどの痛みにうごめいていた。


 目で捕捉しきれない速さと数の蹴りと投げをやってのけた黒い影は、とっ、と、地面に降り立つ。




「…………やられました」




 シュウはその相手を見やり、片手で顔を覆ってため息をつく。




「眠ったふりだったんですか、牧ノ瀬さん?」




 どや顔でも得意気な顔というわけではない、まったくこの困ったいたずら坊主は、という表情の女刑事。
 眠っていたはずの牧ノ瀬覇華が、そこにいた。




「缶コーヒーを買った気配も買う場所もなかったもの。存在が不自然なものは警戒して当然でしょう?
 ……九鬼くんへのお仕置きはあとにして、予定変更って感じだね」


 無表情な中にも悔しげなシュウとは対照的に、まるでなんでもないことのように、ついさっき自分がぶちのめした組員たちを見回して。


「至急、集められる人員集めてもらうね。そのあと手錠かけるの手伝って」


 スマートフォンで電話をかけようとする覇華。
 そのスマホに、シュウは手をかけて妨げた。


「あと20分ほどで俺の部下が着くので、新たに警官の皆さんを叩き起こすよりも、朝までそちらに見張らせた方が良いかと」


「なるほど!」


 覇華はスマホをしまい、服のなかから、ジャラジャラと手錠を取り出した。車から出るときに忍ばせてきたらしい。


 シュウと美湖にも渡すと、手早く、倒れているものたちに手錠をはめていく。




「でも、今回は先に九鬼くんちに連れていくのはナシね」


「…………」


 憮然とした顔で、シュウは覇華の言葉を受ける。


「待ってる間、3人の会話、外で聞いててさ。
 そこの……イチカちゃんだっけ?
 その子が言ったことじゃないけど。
 普段から助けようとしていたわけじゃなく。
 こういうことになっても子供本人を助けることより警察沙汰にならないことを気にする親戚たちっていうのが、正直どうなのって。
 子供たちを、例えば彼らに預けて幸せになれるのか、見極めないと」


 男の一人に手錠を後ろ手にかけながら、シュウが反論する。


「そういう親戚でも、彼らが金を払うと言ったから、俺が協力して今回ここを突き止められたわけですが?」


「警察沙汰になったらお金払わない人もいるって?
 抜け目のない君のことだから着手金はちゃんと頂いているんでしょう?」


「…………薬を盛ろうとしたことは謝ります。
 ですが……」


 シュウが言葉につまっている間に覇華はさっさと廊下に出ていったかと思うと、


「よし、手錠全員終わった」


と、ぱん、ぱんと手を払った。

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