Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す
(10)淡々と容赦ない希望
◇ ◇ ◇
「……なんか、値段がおかしくない?」
「そうか? 内容的に見てかなり良心的な値段設定の店だと思うが」
「いや、相場がわからないんだけど…」
……メニューを持つ手がガクブルしている。
英語なのかフランス語なのかイタリア語なのかで書かれている料理名が、読めないのはいいとしよう。
値段として書いてある数字の桁がおかしい。
0を1個ずつ減らしたくなるのだが。
「……捕まらないよね??」
「お前の発想は面白いな」
「いや……」
いや、日本語の料理名も添えて書いてはある。だけどその日本語も、解説もわからない。魚なの?野菜なの?肉なの?
「……えっと。
……シュウのと、一緒でもいい?」
「気になるものは教えてやる。
わからないなりに選んでみろ。
嫌いなものとかアレルギーのあるものは、注文のときに伝えられるから」
「う、うん……」
なんとか注文を終えて、運ばれてきた料理は、見た目もとても綺麗で。
よくわからないけど、よくわからないなりに、どれも美味しかった。
ここは、一見して、セレブ向けと見えるホテルの高層階のレストラン。
きちんとした格好の店員も、こちらのレベルを見抜いて見下してくるのではと思いきや、わからないことを聞いてもすごく親切に教えてくれる。
ナイフやフォークも、料理ごとに持ってきて置いてくれるから、迷わないし。
窓の外の景色がとても綺麗だ…。
「ああ、そう言えば。
早那子がお前の呼び名を思い付いたんだと」
「……そもそも、私、このあとあだ名が必要なほど、あの家にいるの?」
「お前は出ていきたいのか?」
「出ていった方がありがたいんじゃないの?」
「なんでそう思う?」
「あたし、みんなに嫌われてるから」
「みんなというのは全員の意味か?
早那子が入ってるのか?」
「入っ……てないと思うけど!
でも、なんにもできないし……
自分が悪くても謝れないし」
「そこはわかってるのなら謝れよ」
「できないもん!」
「嘘つき」
シュウは淡々と容赦なく畳み掛けた。
「できるのを、自分で知ってるだろう?」
「そんな……なに勝手に!!」
「くだらないことだと自分で思ってるんだろう。くだらないことなら向き合えよ」
「いっ、意味がわかんないんだけど…」
動揺が思わず声に出てしまう。
シュウが鼻で軽く笑った。
バカにされたのか、何かおかしかったのか。
「自分のことを嫌いなのも、自分が情けないと思うのも、理想が何かを知ってるからだ。慣れれば、覚えれば、できる。お前はできるようになる人間だ」
「…………本当に?」
今まで親にも誰にも『だからお前はダメなんだ』としか言われなかった。『バカだからなにもできない』とか、『バカだから何の役にも立たない』とか。
本当に?
希望を持っていいの?
あたしは、あたしに希望を持っていいの?
「――――まぁ、コーヒー飲み終わったら出ようか」
「うん……」
話はそのまま、さくりとおわり。美味しかった食事もおわり。シュウがカードで会計を済ませて、そのまま、二人はレストランを出た。
「そういえば、運転手さんは?」
「このホテルの別の店で腹ごしらえしとくように言って、多少渡しておいた。
さっきメールをしたから、もう正面に車回して待ってんじゃないか」
「そっか…」
またグイッと、ありえるの手首を掴んで、ふかふかの絨毯の上、エレベーターまで連れていく。
エレベーターの中で、シュウの横顔を盗み見る。
整った鼻筋と顎のライン。
中1のくせして、ありえるよりも手が大きい。冷たい手。
どこから出てるかわからない大金に、物怖じしない態度、高級店を知ってること。
不可解な謎だらけ。だけど。
「……あのさ」
「ん?」
「今日は、ありがと」
楽しかった。美味しかった。
心がほぐれた。
シュウの優しさ、だ。これは。
きづくのもお礼言うのも、遅い、自分。
「美味しかったよ。ありがとう」
シュウが何か言いかけたとき、エレベーターのドアが開いた。
広いロビーの向こう、ガラス張りの玄関の外に、見覚えのあるクルマがもう来ている。
ありえるの足が、やや、早足になりかけたその時。
「見つけたぞ、このクソあま…」
怒声とともに、ロビーから駆け寄ってきた男がいた。
(……!!)
海神組でありえるを輪姦した男の一人だ。
内ポケットに差し入れた手。ちらりと、銃のようなものが見えた。
もう、一人、いや二人。
シュウとありえるを取り囲むように、それぞれ、内ポケットやバッグの中に手を差し入れている。
(…………こんなところで……!!)
シュウを巻き込んでしまった。
どうしよう。
それに、シュウに、ヤクザに追われていることを知られてしまった……!!
万事休す。
ありえるは目を閉じた。
「……なんか、値段がおかしくない?」
「そうか? 内容的に見てかなり良心的な値段設定の店だと思うが」
「いや、相場がわからないんだけど…」
……メニューを持つ手がガクブルしている。
英語なのかフランス語なのかイタリア語なのかで書かれている料理名が、読めないのはいいとしよう。
値段として書いてある数字の桁がおかしい。
0を1個ずつ減らしたくなるのだが。
「……捕まらないよね??」
「お前の発想は面白いな」
「いや……」
いや、日本語の料理名も添えて書いてはある。だけどその日本語も、解説もわからない。魚なの?野菜なの?肉なの?
「……えっと。
……シュウのと、一緒でもいい?」
「気になるものは教えてやる。
わからないなりに選んでみろ。
嫌いなものとかアレルギーのあるものは、注文のときに伝えられるから」
「う、うん……」
なんとか注文を終えて、運ばれてきた料理は、見た目もとても綺麗で。
よくわからないけど、よくわからないなりに、どれも美味しかった。
ここは、一見して、セレブ向けと見えるホテルの高層階のレストラン。
きちんとした格好の店員も、こちらのレベルを見抜いて見下してくるのではと思いきや、わからないことを聞いてもすごく親切に教えてくれる。
ナイフやフォークも、料理ごとに持ってきて置いてくれるから、迷わないし。
窓の外の景色がとても綺麗だ…。
「ああ、そう言えば。
早那子がお前の呼び名を思い付いたんだと」
「……そもそも、私、このあとあだ名が必要なほど、あの家にいるの?」
「お前は出ていきたいのか?」
「出ていった方がありがたいんじゃないの?」
「なんでそう思う?」
「あたし、みんなに嫌われてるから」
「みんなというのは全員の意味か?
早那子が入ってるのか?」
「入っ……てないと思うけど!
でも、なんにもできないし……
自分が悪くても謝れないし」
「そこはわかってるのなら謝れよ」
「できないもん!」
「嘘つき」
シュウは淡々と容赦なく畳み掛けた。
「できるのを、自分で知ってるだろう?」
「そんな……なに勝手に!!」
「くだらないことだと自分で思ってるんだろう。くだらないことなら向き合えよ」
「いっ、意味がわかんないんだけど…」
動揺が思わず声に出てしまう。
シュウが鼻で軽く笑った。
バカにされたのか、何かおかしかったのか。
「自分のことを嫌いなのも、自分が情けないと思うのも、理想が何かを知ってるからだ。慣れれば、覚えれば、できる。お前はできるようになる人間だ」
「…………本当に?」
今まで親にも誰にも『だからお前はダメなんだ』としか言われなかった。『バカだからなにもできない』とか、『バカだから何の役にも立たない』とか。
本当に?
希望を持っていいの?
あたしは、あたしに希望を持っていいの?
「――――まぁ、コーヒー飲み終わったら出ようか」
「うん……」
話はそのまま、さくりとおわり。美味しかった食事もおわり。シュウがカードで会計を済ませて、そのまま、二人はレストランを出た。
「そういえば、運転手さんは?」
「このホテルの別の店で腹ごしらえしとくように言って、多少渡しておいた。
さっきメールをしたから、もう正面に車回して待ってんじゃないか」
「そっか…」
またグイッと、ありえるの手首を掴んで、ふかふかの絨毯の上、エレベーターまで連れていく。
エレベーターの中で、シュウの横顔を盗み見る。
整った鼻筋と顎のライン。
中1のくせして、ありえるよりも手が大きい。冷たい手。
どこから出てるかわからない大金に、物怖じしない態度、高級店を知ってること。
不可解な謎だらけ。だけど。
「……あのさ」
「ん?」
「今日は、ありがと」
楽しかった。美味しかった。
心がほぐれた。
シュウの優しさ、だ。これは。
きづくのもお礼言うのも、遅い、自分。
「美味しかったよ。ありがとう」
シュウが何か言いかけたとき、エレベーターのドアが開いた。
広いロビーの向こう、ガラス張りの玄関の外に、見覚えのあるクルマがもう来ている。
ありえるの足が、やや、早足になりかけたその時。
「見つけたぞ、このクソあま…」
怒声とともに、ロビーから駆け寄ってきた男がいた。
(……!!)
海神組でありえるを輪姦した男の一人だ。
内ポケットに差し入れた手。ちらりと、銃のようなものが見えた。
もう、一人、いや二人。
シュウとありえるを取り囲むように、それぞれ、内ポケットやバッグの中に手を差し入れている。
(…………こんなところで……!!)
シュウを巻き込んでしまった。
どうしよう。
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万事休す。
ありえるは目を閉じた。
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