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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(12)14歳

「ずいぶん話がわかりますね?」


「だけど、君が業者を『解体』したことで救った黒幕を、他の線から私たちが捕まえても、文句は言わないでね?」


「……了解しました。
 むしろ今までの警察のお偉い皆様は、そこのところ消極的でいらっしゃったので、助かります」


「なるほど。
 君としても、捕まってくれた方がいいわけだ」


 どこまでも食えない子、と思いつつ、何気ない疑問を覇華は口にした。


「ひとつ聞いて良い?
 どうしてこれを仕事に選んだの?」


「聞いてどうするんです?」


「気になっただけ。
 もしかして……こんなにたくさんの女の子たちと一緒に住んでいることと、何か関係があるの?」


「それは…………」


 中学生だというのが本当なら、彼は相当頭が良いのだろうが、同時に人生経験自体はだいぶ少ないということだ。
 場慣れした大人ならばどうとでも言いのけられただろう覇華の問いに、明らかに迷った挙げ句。


「……報酬の取りはぐれが少ないというだけですよ」


と、答えになっていないような答えを返した。


「じゃあ、この家に住むたくさんの女の子たちは?」


「単なるルームシェアで、俺以外がたまたま女しかいないんです。
 仕事の関係で木暮美湖のように預かることもあるので」


「それはわかったけど」


 次の言葉を発するかやや迷いながら、覇華は下唇を舐める。


「あの女の子たちが、ここにいるのは……自分の意思で?」


「……俺が彼女らをマインドコントロールしているとでも?」


「さすがにそこまでは考えてないけど…
 確かに客観的に見て君の容姿は魅力的だけど、それだけでたった一人の中学生と同棲する気になる女の子が、こんなにたくさんいるのかなぁ、と思って」


「随分な誘導ですね。
 それで俺がイエスと答えれば、何人か青少年保護育成条例で引っ張るんですか?」


「そんなケチなことしないけど」


 一般的に言う『青少年保護育成条例』と言えば、最近は、実在の青少年よりも非実在青少年の保護(?)で名前を売っている。


 ここしばらくの東京都の指定図書は6割BL作品、ほぼ大半が女性向けなのだそう。
 このあいだ成人誌をおかないと決めたコンビニチェーンや書店チェーンがあったが、指定を受けた本もまた、店頭から消えることになる。


 ただ、覇華が気にしているのは、生身の女の子の話。


「なんて言ったらいいんだろう……ごめんね、杞憂きゆうだったら本当にいいなって話。
 セクハラや性犯罪にはグレーゾーンも多くて、被害者が、受けている最中には被害だと気づかなかったり、これは被害じゃないと思い込もうとしているものが、結構あるんだよね。
 まぁ、『加害者』の事後の対応のまずさで問題になるケースも多いんだけど」


「それはわかります。
 ちゃんと一言謝れば告訴までいかなかっただろうに、という男は多いですね。
 グレーゾーンがあることも俺は認識していますし、男の鈍感さについても。
 その上で、この家において性加害などはないというのは、自信をもって言い切れます」


「……言い切れるんだ」


 あっさり納得してくれて助かった。というか、同性に対してまで、ずいぶんな辛口だ。
 話す内容といい、本当に中学生なの?


「あとね。
 ……君自身は被害者ではないの?」


「え?」


「性被害って本当は男女問わないもので、特に『加害者』が女性なら、よけいに悪気がないことも多いだろうし、それこそ被害者も被害だと気づけないんじゃないかな、って」


 警察官の観点、シュウの14歳という年齢を鑑みて、ごく当たり前の可能性を覇華は口にしたつもりだった。
 だが。


「………………~~」


 シュウは顔を背け、しばしうつむき、何か思案しているのかと思いきや、口元がぷるぷると震え始め、


「…………ぷっ、…………は、あはははははっ」


 こらえかねたように笑いだし始める。


「あははははは、俺が中学生だからですか?
 この、こんな状況下の、女ばっか大量に周りに侍らせてる男、捕まえて、普通、はははははははははは」


「私、そんな笑うようなこと、言ったかなぁ」


「はは、あ、ごめん、なさい。
 あまりにも、予想外、だったので。
 なんだか、ずいぶんひさしぶりに笑いました」


 謝っているくせに、それからも笑いを止めるまでにクスクスクスともう一段階。
 この少年の笑いのツボがわからない。
 けれど、ひとしきり笑い終えると、少年は妙にすっきりした顔をしていた。


「そうですね。
 もう、邪魔はしないという御言葉は頂いているのに、話をこじらせるところでした。
 さっきも言ったんですけど、元々、牧ノ瀬さんがここを突き止めるのは想定内だったので、いらっしゃったら、うちの女たちには会わせないで、俺一人でお話をしようと思っていたんです。
 それが、予想外に早い上に、うちの女たちが応戦してしまって」


「元々、彼女たちのことは隠すつもりだった?」


「ええ。
 確かに、彼女たちのうちいくらかは、俺に好意を持ってはいます。
 ですが、ここは別に、ハーレムにでもしようと思って作ったわけじゃない」


 すっ、と真顔になるシュウ。


「男の俺にさえ、被害者である可能性を捨てずにあたる、牧ノ瀬警視の真摯さを信頼してお話しします。
 俺以外の男を、ここには入れられないんです」






 “俺以外の男をここには入れられない”




 それは、少なくとも彼がここの主であり、さらに、この少年と女性たちとの同居が、非常にナイーブなバランスで成り立っているということだ。


「…ちなみに、同居している女性の総数は?」


「それはシークレットで」


「みんな、働いているの?」


「ご想像にお任せします」


 覇華はふと感じていた。
 この『ハーレム(?)』は、男にとっての楽園などではまったくなく、彼にとっての重荷でしかないのではないか、と。


「……ねぇ、九鬼くん」


「はい」


「職務に反しない限り邪魔をしないと言ったさっきの言葉に、もうひとつ、条件をつけさせてもらってもいい?」


「……条件?」


「時々…私に、ここを見に来させて」


 覇華の意図を理解しかねたのか、シュウが首をかしげた。


「別に、全員に会わなくても構わない。
 顔を見せてくれる人が何人かいれば、それでいい」


「俺の留守時を避けて、43階のみであれば問題ありませんが…」


 拍子抜けするほどあっさりと通る条件。
 しかし、気になる言葉が混じっていた。


「43階、だけって?」


「ああ、ここから上の3フロア、全部俺のうちなので」


「……………………………………へー」


 いや、あなたマンガの金持ちですか?
 それについさっきルームシェアだといいながら、自分が家賃を払っていることを露呈してしまっていますが?


 そもそもこのマンション。
 これより下の階では1フロアがいくつかの部屋にわかれて、そのひとつひとつが道場が余裕で開けるような大きさで、月50万だの70万だのする部屋で。
 最上階含む3フロア分の家賃、一体いくらになるのか、庶民の覇華には想像もつかない。


「……わかった。
 43階だけでいいし、最悪、りえるさんかさなこさんだけでもいいよ。九鬼くんが不在なら引き返す」


「わかりました。
 こちらも、業者解体の関係でこちらに連れてきた女性のその後は極力お知らせするように致します」


 どうやら、人身売買の被害者を心配してのことだと勘違いしてくれたようでホッとして、この場を辞する旨伝え、覇華は席を立った。


 確かに、元々、ここに来たのは木暮美湖を心配してのことだけど……
 こんなにも知恵が回り、こんなにも鼻持ちならない中学生を…どうして“ほっとけない”と思ってしまったのか、自分でもうまく言葉にできなかった。


   ◇ ◇ ◇

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