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Crazy Prince ハーレムの王子は鉄槌を下す

真曽木トウル

(9)トカゲの尾

   ◇ ◇ ◇


「……で。
 いったいなんで、りえるとさなこがついていて、善良な警官と殺しあいになるんだ?」


「いや、あのね? シュウ…
 相手の正体もわからなかったし、防衛戦の先鋒はあたしの役かと」


「あ、私は、気がついたら悲鳴が聴こえて呼ばれたから薙刀持って…」


「うん、おまえらが状況に流されたのはよくわかった」


 広くスタイリッシュながら細部が豪奢な応接間らしきスペースに、覇華は迎えられていた。


 大きなふかふかのソファに埋もれそうになりながら、りえる、さなことそれぞれ呼ばれた少女たちと、二人の少女に挟まれた例の少年との会話(痴話喧嘩?)を、覇華は若干毒気を抜かれた顔で聞きつづけている。


「えーと……結果的に私、無傷なのですよ。早く本題に入らせてもらえませんかね?」


「けど…」


シュウと呼ばれた少年は反論しかけて、しかしその先を言うのをやめ。


「……そうですよね。たぶんあのまま、うちの全員と当たったところで、あなたは痛くも痒くもなかったでしょうから」


 いやいやいや武器的にはもうちょっとで死んでてもおかしくなかったからね?
 という突っ込みを入れてもよかったが、


「いっやぁもぅ照れるなぁ、買いかぶりだよー(照)」


と笑ってみせた。正直に言い過ぎないよう警戒したい。
 シンプルな形ながら触るだけで上質とわかるふかふかのソファ。さて、と、覇華は足を組み換えた。


「本題に入ります。
 あなたの素性を教えて下さい。
 まずは氏名、年齢、職業について」


 カチリ、と固い音。
 財布から取り出したカードを、シュウがテーブルに置いた音だった。


 覇華は目を見開く。


(……中学生?)


 そのプラスチックらしい厚みのあるカードは、新宿区内の公立中学校の学生証だった。
 今より少し幼い顔写真とともに、


『神楽坂中学校  九鬼修弥 SYUYA KUKI』


と、入学年度と共に記載してある……。


「これで大体説明できるでしょうか」


 うなずきながら、覇華は脳内で少年の年齢を計算する。


「2年生…いえ、もう4月に入ったから3年生なのか。これが本名?」


「本名の定義を、戸籍に記されている名前とするならそうですね。この学生証自体は、普段は同時に配布された生徒手帳に入れています。生徒手帳もお見せしますか?」


「うん、とりあえずはこれで充分。
 拉致事件の被害者たちとの関係は?」


「いま来ますよ」


 え?と、シュウの指し示す方を見ると、いつのまにか盆に紅茶を載せた少女が立っていた。


「みこちゃん!」


 みこは、ビクッと肩を震わせたあと顔を背け、覇華と目をあわせないようにガタッ、ガタッ、と紅茶を乱暴に置いて、急いで部屋を出ていこうとする。
 が…


「コグレミコ」


と、…シュウがみこを呼び止める。


 みこのフルネーム。
 いつの間にか出来上がっていた逮捕者たちの調書に彼女の名前は、確か、木暮美湖と記してあったはず。


「客に出す茶の作法を、もう一度レイリに教われ」


「……!」


「返事は」


「はっ……はい!」


 ばたばたばたばたっ、とさらなる足音を立てて美湖は部屋を出ていき、さらにドアを閉めた向こうで派手にこけたような音を立てた。


 いったい、どういうことなのか。


「……どうして彼女がここにいるの?」


「木暮美湖が、祖父母との同居を拒んだからです」


「祖父母…?」


 調書にない情報に、覇華は眉を寄せる。


「確か、父方継母方とも、この一家とは、完全に縁が切れていたはずじゃ…?」


「それ以上の話は彼女の個人情報になるので、人払いをしましょう。
 りえる、さなこ。さっきの話の続きはあとでするとして、おまえたち二人は退席しよう」


 彼の言葉と同時に二人の娘は立ち上がり、覇華に向けて、


「大変、申し訳ございませんでした」


と、頭を深々と下げ、


「失礼いたします」と、続けて部屋を出ていった。覇華は大きく、ため息をつく。


「……色々訊きたいことが出てきたけど、とりあえず、木暮美湖の祖父母というのは?」


「離婚した母方の祖父母です」


 離婚した実母だって?
 覇華は耳を疑う。捜査本部では消息も掴んでいない。いや、求められもしていなかった。


「元々、木暮美湖の母親は裕福な地方の名家の出身でした。親に結婚相手を決められたことに反発して家を出、そして木暮の父親と出会ったんです。離婚後、実家に戻った際、今度は親が決めた結婚相手と大人しく結婚しました。一度結婚したことも子供がいることも隠し、二度と会いに行かないこと。それがそもそも実家に戻る条件だったそうです」


「………………!」


 非情な親子関係に衝撃を受けたが、それならばそれで、ひとつ、疑問がわいてくる。


「君は、その祖父母と彼女をつなぐ役目を、なぜ負ったの?」


「俺の仕事なので」


「仕事……?」


 仕事、が、シュウのすべきこと、ではなく、することによって対価を得ることを指すのだと、気づくのに時間がかかった。


「ここしばらく、人身売買の『検挙』が増えているなと思いませんでした?」


「それは…」


 それは、単純に人身売買が増えているせいだと思っていた。
 日本の売春の相場は急激に下がっている。
 しかし一方で、海外では確かに、女性の『需要』が発生している。
 それ故だとばかり思っていたが…。


「人身売買の『検挙』を容易にする方法は簡単です。なんだと思います。


「え? ……えっと……」


「それはですね」


 少年の、口の端にだけ笑みが浮かんだ。










「組織にその『部門』を切り捨てさせればいい」

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