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嫌われ国王の魔剣幻想譚~虐げられた少年領主は戦場では史上最強の将軍だった…が、この度、王になりました~

真曽木トウル

【第8話 北の隣国 ノールト】(7)

(7)国境の情勢

   ◇ ◇ ◇


 帝国からの使節団が無事帰国の途についた直後、国王レイナートはネフェルを征北大将軍に任じ、即、ノールトとの国境に派遣した。


 ノールトとの国境は、下記の指揮官が受け持つことになった。


 ●征北大将軍 ネフェル・ローレンシウス
    ローレンシウス帝国皇女
    カバルス公爵麾下の騎士

 ●征北副将軍 イヅル・トマホーク
    カバルス軍総長

 ●征北副将軍 グラディオ・ディアマンテ
    カバルス軍剣闘騎兵隊隊長

 ●指揮官 サギタリア・アーチャー
    カバルス軍魔弓騎兵隊隊長


 今回初めて、グラッドとイヅル、2名の元奴隷が、副将軍職に就任することになった。
 当初枢密会議は難色を示したが、

「では代わりにどなたが戦場に出られますか?」

とレイナートが尋ねると、誰も答えられなかったのである。


 上記の4名が率いるカバルス軍・王国軍に、先日ラットゥス公爵を継承したばかりのカロン・セネクスが組織したラットゥス軍が加わる。
 半分エルフの血を引くカロンは精霊たちから情報を得ることができる。
 ただ、軍略においては、より詳しい世襲の騎士たちの経験を頼るそうである。

 王国の北東に位置するタウルス公爵領では、領主代行フェリクス・グールが中心になって構築したタウルス軍が、北西に位置するアペルではレイナートが直接組織したアペル軍が、それぞれ国境を警戒している。

 ノールトに対して、レグヌムの警戒は万全のように見えた。



「――――なぁイヅル」


 ……陣中で、工兵たちの指揮を執っていたネフェルを遠くから見ていたグラッドが、不意にものすごく真面目な顔をしてイヅルに話しかける。


「ちょっと聞いてくれないか?」

「どうした?」


 何か気を付けることがあっただろうか、と、グラッドの続く言葉を待つイヅル。



「……今日もうちの嫁が世界一美人なんだがどうしよう」


 ガクッ、と膝の力が一瞬抜ける。


「さすがにいつもは慣れてるんだが、こう、久しぶりに帰ってきて見ると
『あれ?なんか俺死んだ?目の前に天使がきてる?あ、違ったうちの嫁だった』
ってことが本当にしょっちゅうでなぁ」

「一回陛下に診てもらったらどうだろうか、頭を」

「聞け。
 こないだ産まれた3人めの子は女の子なんだがこれも本当に嫁ににて美人で天使でな」

「いや、おれも見てるんだが。
 おれの娘(※ホムンクルス)と一緒に世話をしてるんだが」


 いつものグラッドのベテランらしい落ち着きが皆無である。

 なるほど、新しいこどもに会えて浮かれっぱなしなのだな、と一応はくみとりつつも、本当に頭を診てもらってくればいいのになどと思うイヅルだった。
 が、また、ふとグラッドが真面目な顔になった。


「ん、今度はどうした?」

「ベルセルカ様。まだ謹慎中なのかよ」


 ああ、とイヅルはうなずいた。
 今度はそれは確かに気にするべき点だったからだ。


「普段だったらなぁ、あの方の空気を読まねぇ毒舌がガンガン飛んでるところだからなぁ。
 どうももの足りねぇっていうか……緊急事態っちゃ緊急事態なんだし、謹慎ってそんな大事なんかね」


 グラッドとしては、宣戦布告が今にも起きるであろうこの時期にベルセルカの謹慎が解かれないのが、不思議で仕方がないようだ。


「今後のためだろう?
 恣意的に『緊急事態だからOK』ということにして、きちんと処罰を受けないで終わってしまったら、ベルセルカ様がひいきされているということになってしまう」

「たとえば、若がこのまま、ベルセルカ様を前陣から退かせるつもりだったりとか……そんなことはねぇのかなぁ」

「ないな。そんなことはありえない」

「言い切るのな、おまえ。
 しかし、このままじゃ」


 彼もまた、過保護なため息をつきながら言う。


「……俺だって、若にゃ、好きな女と添い遂げてほしいんだよ。
 難しい立場だってのぁ重々わかってるさ」



   ◇ ◇ ◇



「――――ふん、そう来たか」


 一方、ノールト側テセウス。
 ベッドの上で、アペル、ラットゥス、タウルスの地図を見ながら報告を聞き、含み笑いをする。

 しかし、例によって、自分のそばから女たちは離さない。

 女たちも、何か少しでも逆らえば殺されるとおびえ、びくびくとテセウスの顔色をうかがっていた。


「――ど、どうなさいますか?」


 平伏する間諜。
 彼は本来間諜などする身分ではない。
 上級索敵魔法〈遠隔透視イクス・イルミナス・ロングス〉を使いこなす、ノールト王族のひとりであった。
 だが、テセウスに敗北し、なすすべなく、こきつかわれていた。



「――――国王は前線には出てこないくせに、南の帝国の皇女が、将軍として?
 女騎士ってやつか。好みじゃないんだよなぁ。男より弱いくせに、剣振り回す女なんて――――だが」


 テセウスは地図に、指を添える。


「南の帝国の威光を、こんなところで使っているとはなぁ。
 皇女様に万が一のことがあれば、南の帝国が黙っていない……そういう、陳腐な脅しだよな」

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