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嫌われ国王の魔剣幻想譚~虐げられた少年領主は戦場では史上最強の将軍だった…が、この度、王になりました~

真曽木トウル

【第7話 悪魔に魅入られた地 シーミア】(11)

(11)罠


   ◇ ◇ ◇



『――――〈強制解除コアクトゥス・リリース〉』


 青髪の少女に化けた悪魔は、ベルセルカの“純潔の加護”を一時的に解く魔法をかけた。

 これは、かなりの魔力の持ち主(の身体)でなければつかえない魔法だ。
 オリジナルイズル・トマホークの魔力の強さがあってこそ。

 この魔法で、先代のカバルス公爵もベルセルカの加護を解いたことがあったという。
 少女の身体の加護はとけ、この身体も自分たちの好きなようにできる、はずであった。


 悪魔の手から放たれた魔力はベルセルカの身体の上で弾かれた。


『!?』


 解除魔法にたいする防御魔法がかけられている?
 いったい誰がこんな魔法を?

 そう、青髪の少女が一瞬思った。その時。


〈〈“加護”効果に対する攻撃を感知〉〉


 どこからともなく響いた奇っ怪な音声とともに、ベルセルカの身体の上にほわりと、手のひらほどのおおきさの魔法陣が浮かび上がる。

 ベルセルカの右手がすうっと、上がる。
 決して彼女の意思ではなく、何者かに勝手に引き上げられたようなその手は、中指と親指をつけ、


〈〈―――――――〈断罪〉自動発動〉〉


ぱちんと、響く音を鳴らした。


(………なん、だ?)


 魔法陣は回りながら瞬く間におおきくなっていく。

 つい先ほどまでベルセルカに向けて威勢のいい罵倒を投げつけていた反乱軍の者たちが、怯え、後ずさる。

 そうして、……讃美歌を醜く歪めたような、人の声とも楽器とも判別つかない音楽が、その場に響き始めた。

 皆、思わず耳をふさぐ。
 だが、それは耳に入ってくる。
 聞いた者から苦しみはじめる。


 天井の高い地下空間。
 ベルセルカの奥に、黒光りする大きな門が姿を現した。
 明らかにこの世のものならぬ造型の門。
 それは悪魔にとっても、見覚えがあるものではなかった。

 ゆっくりと、それが開く。


〈〈サーザ村ベレド、強姦26回。うち、己の娘に対して19回〉〉


 また違う何者かの奇妙な音声。
 バタン、と門が開くと、ベレドと呼ばれた男が「ひ、ひいっ………」と声をあげた。

 門の向こうは混沌の黒い霧で、何も見えない。

 しかしそこからにゅるりと、タコのような蛇の尾のような腕が延びてくる。
 それはあっという間にベレドを絡めとり、ずるずると門のなかに引きずりこんでいく。


 黒いような、いろいろな色が混じっているようなもやの中に包まれ、ベレドは再度の悲鳴とともに、見えなくなった。


『 な ん だ 、 こ れ は ? 』


 青髪の悪魔は門に向けて爆裂魔法を撃った。
 しかしビクともしない。
 手を触れ、門を閉めようとした。しかし、動かない。

 そうこうしているうちに、ベレドの叫びが遠く聞こえた。

 ぱちぱちと、肉のぜる音。
 助けをもとめ、己の娘に赦しを請う悲鳴。


〈〈――――サーザ村フライズ、強姦311回〉〉

「し、失礼な!!
 ど、どれも僕の買った、奴隷相手だぞ!?
 犯罪じゃ、ない!!」


 そう言い放ったフライズだが、やはり謎の触手に引きずりこまれる。
 ベレドの声は、まだ続いている。
 そこに、フライズの悲鳴が加わった。
 そして、その身体をどうされているのか。恐ろしい音がまじり続ける。

〈〈――――イザラ村クロン、強姦12回、加えてこどもへの行為11回〉〉

〈〈――――イザラ村マリア、我が子への売春強要、35回〉〉


 名前を呼ばれては、ずるずる、ひとりずつ順番に門のなかに引き込まれていく者たち。

 恐ろしさのあまり、地下室から逃げ出すものが出た。
 しかし逃げられる者は少数だった。
 多くは留められたように身体が動かず、恐怖に染まりながら門のなかに引き込まれていく。

 逃げられた者たちの身体からは、悪魔の毛皮や尻尾が消え、人間に戻っていくのだ。


 ……やがて、最後のひとりの“断罪”を終えた門は、いまだに漏れ聞こえる、罪人たちの声をふさぐようにバタンと閉じ、そうして。
 消えた。


 地下室の中に残されたのは――――いまだ眠りにつくベルセルカと、青髪の女悪魔。

 クソ、とばかりにベルセルカのほほを打つ。

 打った手が、ぼおっ、と炎に包まれる。


「なんだかスッキリしたねぇ」


 ……いつの間にか、地下室のなかに、ユリウスが立っていた。


『 お ぬ し 、 さ き ほ ど 言 い か け た の は 、 こ の こ と か ? 』


 ユリウスは、バカにするというよりもやれやれという眼差しを向けた。


「レイともあろう人が、この子の弱点に手を打ってないわけないでしょ?」


『 だ か ら こ の 娘 に、防 御 魔 法 を か け て い た と?』

「それも、“純潔の加護”の“断罪”自動発動型。
 この、一見イイコなのに執念深くて残酷な感じ、レイっぽくていいね」

『 貴 様 !』

「ああ、助言の必要はないって言ってたから、これはひとりごとね。
 この自動発動が起きると、レイはその場所を探知できます」

『………!??』

「あとは〈転移〉で」――――――そうユリウスが言うか言わないか、の絶妙なタイミングだった。


 砦の地下室に、レイナート・バシレウスが〈転移〉してきたのは。


『こ … 国 王…!?』


   ◇ ◇ ◇

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