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嫌われ国王の魔剣幻想譚~虐げられた少年領主は戦場では史上最強の将軍だった…が、この度、王になりました~

真曽木トウル

【第2話 北東の牧畜地帯タウルス】(7)

(7)この女騎士の“加護”が強すぎる


   ◇ ◇ ◇


(………殺さないように、って、やっぱりけっこう大変ですねぇ)


 ベルセルカは内心そう呟きながら、向かってくる男の腹を横蹴りで串刺し、その上で剣で叩き伏せる。

 手入れを欠かさない切れ味鋭い剣なので、魔法でコーティングして切れ味を極度におさえ、殴打武器とする。剣は殴る武器としても優秀だ。

 次に来た男は鳩尾を剣先で突く。しかし、次の男は魔法を解除しながら手足を切り裂くと、驚きの声をあげた。
 切れる剣として警戒すればいいのか?
 殴打武器として警戒すればいいのか?
 混乱し戸惑う男たちを、次々ベルセルカは叩き伏せ、仕留めていく。

 屋内なので剣と魔法と格闘で小回りが利く戦闘を心掛けている。戦闘魔術が使えるわけでもない多少体格がいいだけの男たちは翻弄されるばかりだ。

 
 ………周囲にいた男たちを片付けたところで、ベルセルカはふと、何人かの男たちがいなくなっていることに気が付いた。


「あれれ、どこに逃げたんですか?
 <雪車(トラヘア)>!!」


 ベルセルカは、銀の紋章がついた革のブーツに、魔法をかけた。
 足をくるむように、横向きのほうき星型の光が沸き起こる。
 その光ごと、雪車(そり)が斜面を下るように、建物の中を、廊下を、階段を、高速で走っていく。


「……いないなー。うーん。もう外に逃げ出しちゃったんですかね?」


 屋敷の正門から後方までずいぶんな距離がある。
 今さらながら、街のど真ん中にこんな大きな屋敷を作られて、街の人間が困りはしないのだろうかと思う。
 渡り廊下から屋敷の外に出て、立ち止まり。
 辺りを見回した。
 木々。何かの物入らしい、小屋。

 まるで建物の外も迷路みたい、とベルセルカが考えた、その時。

 後ろに気配を感じたと思ったら、屈強な男の腕が、ベルセルカの首に回っていた。

 それを機に、わらわらと、隠れていたらしい男たちが現れる。
 その数、八人。


「…………捕まえたぜ、このクソ女」
「お。待ち伏せですか?
 少しは頭が回るようで安心しました!」
「コイツ!!」
「!!!っ」


 ひとりの男が、ベルセルカの顎をつかんで揺さぶってくる。


「追手はお前ひとりか。よくも派手に屋敷をぶっ壊してくれたな!!」

「まぁ、あの強欲女は色々やらかしていたからな。これで潮時、この娘を売り飛ばしてその金で逃げようぜ」

「顔はかなりの上玉だし、まぁ体はよろいを脱がしてみないとわからんが、そこそこ高くは売れそうだぜ。女騎士さんよぉ」


 ゲスな笑いを浮かべながら、ひとりの男が、甲冑の上からベルセルカの胸を触ろうとした……その時。

 ボドッ……

 鈍い音をたてて、腕が、落ちた。
 肘のあたりから、焦げて焼け落ちたような切り口で落ち、切れ目には炎がくすぶっている。


「はぁ……?」


 腕の持ち主も、まわりの男たちも、何が起きたのかわからず、顔を見合わせた。
 次の瞬間。


「いっ――――っでええええええ!??!?」


 腕が落っこちた男が、血の噴き出る切断面を振り回しながら、痛みにのたうち苦しみ始めた。


「い、いだだだだだっ!!!」


 ベルセルカの首を絞めていた男も、急に痛みを感じだしたように彼女から離れ、倒れる。
 そのからだの前面……ベルセルカにぴったりとくっついていたであろう部分が、全面的に燃えていた。
 いや、くすぶる炎と炭にまみれ、すでに肉や骨が崩れ焦げ、だらだらととめどなくあちこちから、血が吹き出ているのだ。


「な、な、なんなんだよ、この女は……!?」

「――魔法か!? 魔法なのかよ!?」


 まわりの男たちも、腰が抜けたのか、その場にへたりこんでいく。


「魔法ではありませんよ?」


 ベルセルカは、体の前面が燃えくずれた男の前にしゃがみこんで、大きな目で彼の顔を覗き込む。


「驚かせてしまってごめんなさい。
 私、とある“加護”をいただいていまして」


 顔に垂れた、ルビーのように赤い髪を軽く耳にかける。
 そのしぐさは、あくまで美しく。
 容姿と微笑みだけなら、まるで美の化身か理想の聖女のようなのに。


「先に私が解除魔法をつかわないと、首と腕と膝下を除いた私の体の部位に許可なく触れた方は、そこから燃えて崩れてしまうんです。
 自衛能力が常時自動発動する、“純潔じゅんけつ加護かご”です。
 すごいでしょー?」


「「「「「「「「…………なんだよ、それぇぇっっ!?」」」」」」」」


 その場の全員、心のそこから突っ込んだ。
 そんなでたらめな力が与えられてたまるものか。
 そんなものが、神の加護であってたまるものか。
 腹のそこからそう言いたかったはずだ。
 しかし、ベルセルカは、立ち上がりながら言葉をつづけた。


「ついでに、“加護”の力はまだあるんです。それはですね、もしも私の目に映る範囲に――」


 長い指を、今にも鳴らしそうなかたちにつくり。
 力を入れかけた瞬間、ふと、大きな緑の瞳が、何かを思い出したように動いた。


「いっけない☆ そう言えば、今日は殺しちゃダメなんでした!」

「「「「「「「「……………」」」」」」」」


 ならず者たちの力が抜けた、その時。


「中級武具魔法、<短剣プギオ>」


 ベルセルカが両腕を交差した途端、空中に発生した無数の短剣が、男たちの体めがけて落ち「――――!!!!」彼らを地面に縫いつけた。


「じゃ、私、戻りますね!
 レイナート様に治療してもらえるまで、みなさん、がんばって生存していてくださーい!」


 すでに瀕死に追いやられた男たちは、それぞれ意識を手放した。

   ◇ ◇ ◇

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