悪役令嬢になる前に

こうじ

未練も何もございません

「な、何を言ってるんだっ!?」
 私の絶縁宣言にお父様は慌てた。
「お母様が亡くなって間もないのにいきなり新しい母親と妹と言われても受け入れる事なんて出来ません。私のお母様はエリス・フォートゲリスただ1人です」
 私はキッパリと言い切った。
「だから、邪魔者はいなくなりますからどうぞ暮らしてください」
「この家を出ていく、と言うのかっ!?」
「そのつもりですが? ご心配なく住む場所には宛がありますし1人で生きていける様に家事炊事洗濯は出来ますので」
 コレは見栄とかそう言うのではなくお母様が『公爵家でも1人である程度は出来る様に』と言う指導の元教え込まれたのだ。
 お母様の実家は元々は裕福な家ではなく質素倹約をモットーにしていた。
 結婚後も無駄な贅沢はしなかったのだがお父様からしたら『つまらない』と思ったんだろう、だから愛人を作って更に娘まで出来たんだろう。
「では荷物を纏めて来ますので、今までお世話になりました」
 私は頭を下げて部屋を出ていった。
 自室に戻ると私は直ぐに服やら小物やら必要な物を鞄に詰め込んだ。
 派手な服は着ないしアクセサリーも必要ない。
 必要最低限な物を入れて私は部屋を出た。
「お嬢様、どちらに行かれるのですか?」
「私、この家を出ていく事にしたから」
 メイドに声をかけられて私は事情を説明した。
 メイドは顔面蒼白になっていた。
「引き止められる可能性があるからこのまま出ていくわね。後の事はよろしく」
「······わかりました。後の事はお任せください」
 メイドは涙ぐみながら私の手を握ってくれた。
 こうして15年間住み慣れた家を私は出ていった。
 未練なんてこれっぽっちも無い。 

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