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予備心装士の復讐譚 ~我が行くは修羅と恩讐の彼方なりて~

平御塩

第3章3話「奇妙な仲間」

一体、どういう事なのだろうか。


何故、皆月輝夜がここにいるのか。目の前に、彼女の姿を見た時、オレは自分の目を本気で疑ってしまった。


「え、輝夜……?どうして貴女が、ここにいるの?」


日那も、彼女がここに現れたことに驚いていた。そう言えば、彼女たちは友人同士だと言っていたな。


「どうしてって、決まっているでしょう。私、貴方たちとパーティーを組むことになったの。これから長い付き合いになると思うから、よろしくね」


「いやいや。そういう問題じゃないんだけど!何で、成績優秀者のアンタが、ここにいるんだよ!?」


皆月の言葉に、牛嶋はツッコミを入れた。


学園側が取り決めるパーティーの組み合わせは、生徒たちの全体のパワーバランスを考慮してある程度平等になるように行われる。人数制限は、5人までであり、それ以上のパーティー編成は認められていない。


しかし、峯藤先輩のようなパーティーリーダーは、学園側の振り分けを自ら辞退することで、自らスカウトすることが出来る。一つのパーティーを組むために必要な「コストポイント」と呼ばれる強さに応じたポイント制限を超えない程度なら、誰をスカウトしてもいい。


……いや、それにしても過剰戦力な気がするが。


「何って、峯藤先輩からスカウトされたからここに来たのよ。何かいけない事でもあったかしら?」


「オレがいることを知っていたとしてもか」


峯藤先輩からスカウトされたからとは言え、彼女も関東六家・皆月家の令嬢。それも成績優秀者だ。彼女ほどの実力があれば、自らパーティーを作って好きにスカウトすることだって出来るはずだ。そのはずなのに、何故同じ十二師家の峯藤先輩のスカウトを受けたのかが理解出来ない。


それに、彼女は入学式の時の実技試験の時でギリギリの所でオレに敗北した。自分を打ち負かした相手がパーティーの中にいるというのに、何故わかって来たのかが、度し難い。


「……まぁ、わかってはいたけど、やっぱりその顔を見ただけで射抜きたくもなるわね。少し前に、ひと騒ぎあったと聞いていたけど、元気そうで何よりだわ」


「つまらん御託を聞きたいわけじゃない。何故、ここに来たんだ?」


「さっきも言ったじゃない。私は、峯藤先輩からスカウトされたからここに来たの。隣、座らせてもらうわ」


「……」


そう言うと、彼女はオレの隣の椅子に座った。軽く警戒をしてみたものの、特別おかしなものは感じなかった。


「よし、これで全員揃ったな。では始めよう」


峯藤先輩はそう言うと、原科先輩と共に空いている椅子に座った。


「はい、先輩!質問です!」


「何かな、牛嶋君」


始まった瞬間、牛嶋が挙手して言った。


「どうして、皆月がここにいるのですか?」


オレと八重垣が思っていたことを質問した。


「確かに、わたしも気になります。どうして輝夜をスカウトしたのですか?」


八重垣も八重垣でどうして峯藤先輩が皆月をスカウトした理由を知りたいようだ。


「諸君の言っていることはごもっともだ。彼女は確かに、今年度の成績優秀者でその実力は既に証明されている。本来なら上級生じゃなくてもパーティーリーダーを務めることが出来るほどの実力を有しているはずなのに、何故私のスカウトを引き受けて、ここにいるのか?それを知りたいということだろう」


「まぁ疑問に思わないことが不思議だわよねぇ。アタシだって彼女をスカウトするって聞いた時は耳を疑ったのだもの。事前相談なしだったし」


原科先輩すら最初は知らなかったのか。


「メリットがあるとは思えないんだがな。それに、コストポイントだって超過しかねないんじゃないのか」


さっきも言った通り、パーティーを編成するには生徒一人ごとの強さを数値化した「コストポイント」がある。強さが偏らないよう平等にパーティーを編成する必要性から、実力差などのバランスなどを考慮して編成しなければならない。


コストポイントの目安は実力によって決まる。


AからEまでのランクで分けられ、数値化すると一番上の数字が10で下が2。オレの場合はBランクで8ポイントある。


皆月は成績優秀者であることからAランクなのは確定だ。10ポイントもあり、高ランクなため、仮にスカウト出来たとしてもパーティーに参加することは出来ない。


「その心配はいらない。コストポイントはちょうどだ」


「ちょうど?いや、そもそも峯藤先輩や原科先輩たちのランクはどうなんだ?」


オレは峯藤先輩や原科先輩のランクを知らない。更に言えば、八重垣と牛嶋のランクも知らない。


「私はAランク。原科はCランク。八重垣と牛嶋はDランクだ。皆月、ランクは?」


「Cランクよ」


「はぁ?Cランク?ありえないだろ」


原科先輩の力量を知らず侮っているというわけではないのだが、仮にも生徒会風紀委員であろう人間がCランクとは到底信じられない。屍霊魔術、霊媒魔術を修めている。仮にも、外部からの呪いに対して耐性があるオレを屍霊魔術による呪詛で縛ることが出来るのだ。Cランクの腕前だとは到底思えない。


「まあ、そこは疑問に思われてもしょうがないわね。実は、あの後の実技試験の時に学園側に呼び出されちゃって。あの時、私が貴方に対して必殺技をやったでしょう?」


「ああ」


あの凄まじい大質量兵器みたいな「矢」の事か。あれは、もし食らっていたら死んでいたかもしれなかったし、色々とヤバかった。こっちも封印の限定解除を渋ったせいで神経とか色々とズタズタになったりしたからな。それぐらい、彼女との戦いは歯ごたえがあったわけだが。


天体魔術で何とか「矢」を破壊したが、その後の状況はよく知らない。その時に何かあったのだろうか?


「実は、あれがまずかったのよ。結界装置を破壊しただけではなく、闘技場破壊未遂をしたということで、本当はBランクになるはずだったんだけど、減点されてCランクにされたの」


「色々とツッコミ所しかなくて意味がわからないのだが」


彼女の言っていることが事実なら、オレ自身もランクが落とされてもおかしくない気がするのだが。正直、オレの頭の方が混乱してくるのだが。


「えっとね……、その……。あれよ。だから、あれがまずかったの」


「『矢』を使ったことが?」


何故か口ごもる皆月。……もう既に想像はついているが、逆にどう言ってやったらいいのかわからんので、とりあえず聞いてみた。


「そう。あれを使ったのがまずくて、後で『実技試験で闘技場ごと木端微塵にするつもりか!』なんて言われたのよ。それで、減点を食らっちゃって」


「言いたいことはよくわかった。うん」


いや、正直納得していないが、納得するしかない。


確かにあの時の「矢」は、明らかにオレが天体魔術で迎撃をしなかったら、オレどころか闘技場が全て吹っ飛んでしまうほどの威力だった。


そう言えば、迎撃をした時、周囲の結界にヒビが入るような音がしたのだが、もしかしてあまりの魔力密度に結界そのものが耐えられなかったのか?


「つまり、輝夜がやりすぎてみんなを巻き込んで吹き飛ばしかねなかったから、Cランクになったって事?」


八重垣が言った。


「そ、そういう事よ。仕方ないじゃない。だって、あれだけ一方的なやられ方をするなんて、私のプライドが許さないんだもの。それに、実技試験なんだから、私がどれだけ全力を出そうと勝手じゃない!」


「……まあ、それには同意見だな」


「うわぁ、ご愁傷様ですとしか言いようがねえ」


まぁ、実技試験だし、生徒の実力を見極める事が趣旨なのだから、彼女が全力を出す分には構わないし、オレもそれはそれでいいと思う。


可能性だが、彼女はもしかすると出力の調整が下手だからああなったのではないかと考えている。細かな魔力の制御は魔術士にとって必須なので、


だが、彼女じゃなかったら、オレは隠して上手くあしらったりしていた所だ。雑魚相手に本気を出す必要性も意味もないし、精々中の上ぐらいの実力を示せればいい。当初の目的はなるべく目立たないようにするためでもあったからな。仮に崇村の性を名乗っていても、悪目立ちをするつもりはなかったし。


そもそも殺し合いに手加減なんてふざけた話だ。戦う者として、それ以上の侮辱はない。工藤の時は全力を出さなかったのは、殺し合いの理由としてはチープだし、何よりもヤツの逆恨みに付き合うこと自体が下らなすぎて殺し合う理由にもならない。オレの戦いに、大義もなにもないが。


「あんたが、オレが思っていた以上にちょっとアレだって言うことはよくわかったよ」


「ケンカを売っているつもりなのかしら?その頭を矢でぶっ刺すわよ」


「冗談だ。それで?何故、峯藤先輩のスカウトを受けた?」


本題に入る。彼女が、何故峯藤先輩のスカウトを受けてここに来たのか。


確かにCランクであるとは言え、彼女が簡単に頭を下げてスカウトを受けるとはとても思えない。仮に選択肢がなかったとしても、自分を打ち負かした相手と一緒となるとは、彼女にとって屈辱的な事なのではないかと思った。


関東六家に名を連ねる皆月家の令嬢である彼女にとって、自身に敗北を与えた相手と組むということ自体がありえない。これは、あの実技試験で彼女と戦った時に感じた所感だ。


戦い方に高潔さがあった。誇りがあった。


オレがいるこのパーティーと組むことは、それを捨てるのと同義なんじゃないか。


「そんなのは私の勝手だわ。私は、私の意思でスカウトを受けたの。別に皆月家がどうとか、そんなものはどこにもないわ。初めからそのつもりであるなら、どこでも不意打ちをかけるなんてこともありえるわよ」


「嘘だな。お前はそのような手段を取る人間じゃない」


敵対する相手には一切の容赦のなさを持つとは言え、彼女は誇りを持って戦いに挑む女だ。不意打ちをかけるような事はしないだろう。


狙撃という名の不意打ちがある弓矢を得物とするとは言え、それが弓使いとしての役目だ。それを不意打ちとは言わず、真っ当な方法である以上、マニュアルの通りに彼女は狙撃を実行する。彼女は、そのような人間だ。


「……バカ真面目に言うわね。スカウトを自分の意思で受けたのは本当よ。元々、峯藤先輩のスカウトを受けるつもりはなかったことも本当。受ける必要がないもの」


「ほう。受けるつもりはなかった、か」


そうだろうな。今年度の成績優秀者である彼女の腕なら、自らパーティーを組むことだって出来るはずだ。


成績優秀者なら、その特権で学級関係なくコストポイントを超えない範囲でスカウトすることが可能である。始めに皆月ほどの実力なら自らパーティーを作って好きにスカウトすることが出来るというのは、こういう事なのである。


「最初は断ったわ。だけど、事情が変わったの」


「どんな事情だ?」


最初は断ったのに、結局スカウトを受けたのは一体どういう事情なのだろうか。


「貴方よ。崇村柊也」


すると、彼女はオレを指さして言った。


「……は?オレ?」


ポカンと、オレは口を開いた。ぶっちゃけ意味がわからない。


実技試験以降、特別に彼女と関わりがあったわけでもないし、彼女が峯藤先輩にスカウトされていたことを知ったのは、今この時だし、何も思い当る節がない。


「貴方は、実技試験で私を負かしたわ。ええ。生涯、正攻法で私を打ち負かしたのは、貴方で二人目よ。それまで私は負けたことがなかった」


「そうなのか。いや、単純にお前が自分より強い相手に挑まなかっただけじゃないのか?」


彼女ほどの腕を持つ人間なら、勝負を挑む相手はいくらでもいると思うが。或いは彼女が自分より強い相手を探して戦ったことがないから負けたことがないのではないか?


「……貴方、人から怒りを買いやすいって言われたことないのかしら?」


「?」


そうか?嘘を言ったつもりはないのだが。


「まぁ、いいわ。一言言わせてもらうと、その機会がなかっただけ。私はその機会を手に入れるために実力を自分の力で身につけた。挑んできた相手を、徹底的に潰したわ。これからもそうするつもりだった」


……


この言葉にはちょっと引っかかるものがある。皆月家の令嬢という立場でありながら、その機会がなかったのか?普通なら皆月家の関係者たちを相手にしてもいいはずだ。あの戦い方も実戦経験のある人間の戦い方だったし、全くの素人とは思えない。


「だけど、実技試験で貴方が私を負かしたことで、私の目標は決まったわ」


そう言うと、彼女はオレをキッと睨むように見てくる。


「崇村柊也。私は、貴方を競争相手に認定するわ!このパーティー内で、貴方より優れた実力を持つ心装士であることを証明するためにね!」


「な――――――――――」


その言葉に、オレはどう反応したらいいのかわからなかった。


「ほう……。来て早々、ライバル認定をされるとは。崇村君も大変だな」


「んもぉー!いつの間に進展していたの、アナタたち!まさに青春!青春だわ!」


「ちょっと何言っているかわからない」


マジで。


「……わーお。これは大胆だなー」


「つまり、どういうことなのかな。輝夜?」


牛嶋は軽くドン引きしているし、八重垣もあははと薄く笑いながら困惑している。


「……要するに、私は貴方を好敵手兼仲間として競い合う関係になるという事よ。リベンジマッチするだけじゃ面白くないわ。だから、卒業までの成績を競い合い、私が貴方より上の実力を持つことを証明すること。それが、貴方へのリベンジ。それが、私がスカウトを引き受けた要因よ」


「えっと……」


「拒否権はないわ。そこら辺は峯藤先輩も了承しているものの。そうですよね?」


「ああ。一応、パーティーリーダーとして、そういう理由で参加を認めた。異論はないだろう?」


おい、ちょっと待て。オレの意見は?あまりにもとんとん拍子に話が進みすぎている気がするんだが。異論も何も出ていないのだが。


「はぁ……。まぁ、オレの足を引っ張るとかそういう邪魔をしないのならいい。好きにしてくれ」


反論してもしょうがなさそうだと感じ、投げやり気味に言った。正直疲れるからな。色々な意味で。


「だが、オレを好敵手とするなら、それなりに実力をつけろ。卒業までには、オレは既にお前の手が及ばない場所にいるかもしれないぞ?」


その時が来るかは、わからないけど。


好敵手、か。そのようなものに巡り合ったことは、一度もなかったけれど。


「そう言っていられるのも今の内よ。私、案外しつこいわよ?」


手を差し出される


小細工の何もない、純粋な握手を求める意思表示だった。


「ああ。そのしつこさで、追い越せるなら追い越してみろ」


オレはすっと、自然に握手を交わした。


……なんだろうか。この気持ちは。


悪くは、ない。少なくとも、不快では、ない。


だけど、もし。もしも、オレにその時が来たのなら――――――――――。


「よろしく頼むわ。崇村柊也」


その時に、オレをのは、彼女なのかもしれない。



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