コレクター

比嘉 葵

コレクター

放課後、教室。昏い西日が差す中、私達は恋バナに興じる。向かいに座る少女は、肩まで届く艶ややかな黒髪、柔らかな目、スレンダーな体、控え目に言っても美人だった。色白な肌は西日に差され、朱く染まっている。少女はため息をつく。そのため息を吐く様ですら、・・・うーん、艶やかだなー。
「私って魅力ないのかな。全然、気づかれないの。」
私はそんな風に落ち込む少女を励ます。そんなことない、綺麗だし、一緒にいて楽しいし、魅力的だ、と。思い切って告白したら
上手くいかもよ、とも。
「本当に?じゃあ、思い切って告白してみようかな?」
不安そうな目で告げるため、私は無責任に大丈夫、大丈夫と太鼓判を押す。
外は夕闇から、夜へ、と差し掛かっていた。
「でも、大丈夫かな?」
何が?と私は返事した。
「えー、だって・・・、私はその人のこと知りたくて知りたくて、その人の色んなもの集めてるのに、向こうは全然そんな雰囲気ないんだもの。」
色んなもの?ってなんだろう。思うのと同時に尋ねる。
「例えばね、飲んだあとのストローとかね、その子の味がするの。甘くて、でも少し酸っぱくて、いちごみたいな味。それにね、制服からは、お日様のみたいな安心する臭いがするの。それから、それからね・・・」
へ、へぇー。その人って、どんな人なの。
「うーんとね、とてもきれな金髪でー、腰まであるの。すごいんだよー、サラサラしてていい匂いがするの。目は青いんだけど、キラキラしててルビーみたいだし、唇は小さくてプルプルなの。耳もちっちゃくてね、そうそう、その子とても身長が小さいの。145cmくらいかなー。高校生なのに、小動物みたいでね・・・」
語っていく姿はどこかで見覚えがある。いつも見ている姿だ。
えっ、それって・・・・。私は思わず尋ねる。
「「そうよ、あなたよアヤネ」」
増える、増える。少女は、私を囲む。笑みを溢し、嬉しそうに。
「「「「もう、あなたを逃さないわ」」」」
さらに、増える。私の肩、顔、お腹に手をかけ、両耳にそれぞれ囁く。
「「「「「待ってて。必ず捕まえてあげる。その耳も声も、目も、足も、手も。全て私のものだわ。」」」」」




夢から覚めると天井が見えた。私の部屋だ。ベッドを降りると、見えるものがある。
机、ローテーブル、本棚、そして、クローゼット。クローゼットの中には、私の集めたコレクションが入っているゴミ袋がある。
ストロー、制服、体操着、下着、ベッドのシーツ、彼女の読んでいた本、リップ・・・。
これらは、私のものではない。
ああやって、詰め込んでおけばとてもいい匂いがするのだ。
ふいに、後ろから抱きつかれる。目の前には艶やかな黒髪が流れる。彼女だ。
「捕まえたわ、アヤネ」
「わたしこそ、」
振り返り、私は告げる。
「捕まえたわ」

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