始まりは水曜日の15時過ぎ

緑川まい

火曜日の12時過ぎ(15)


「はい。
ここ座ります?
それとも、隣のベンチにします?」

「紫央の近くがいい」


「どこでそんな言葉覚えるんだろうな、ほんと…。
はい、どうぞ」

「うん」


さっきも言ってたけど、本当に、不安はない。

取られるとか、浮気されるとか、一切心配していない。
だって、信じてる。


だけど、あぁいう光景見ちゃうと、モヤッとするからか余計に近くに行きたいって思いたくなる。

独占欲というかなんというか。
よく分からないけど。


「蒼さん、姉さんのこと知ってたんですね。
普通に反応遅れましたけど、驚きました」

「私も驚いたよ。
澪央とはね、ここでよく会ってたんだよ。
あの人も、食後10分の放浪癖あったから」


そう話しながら、手を繋ぐ。
本当はもっとくっつきたかったけど、誰か来たときに気付かれないように、ベンチの端と端に座った。

「え、そこ一緒だったんですか、俺。
昔から、姉さんのと行動が似てたんですけど…ここまでとは思っていませんでした」

「そうなんだ?
澪央のこと、すごく好きなんだよね。
なんでも相談出来たし、すごく頼ってたから…アメリカに行くって言ったときは寂しかったなぁ」


澪央は、会社に報告する前に教えてくれた。
悪いことでもなんでもないのに、ごめんね、私が寂しいって泣きながら。

思い出しても、少し寂しくなる。



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