始まりは水曜日の15時過ぎ

緑川まい

水曜日の15時過ぎ(7)


「どこにあったかなー…この前見かけたんだけど…「あの」えっ?」

独り言を言いながら資料を探していると、聞こえるはずのない声。

え、誰かいた?
驚いて振り返るとそこにはこっちの部署でも有名な、英語ペラペラエリート野田くん。

驚いた…。
噂通り、身長が高くてスラッとしてる。
というか、顔ちっさ。

「えっと?」

何も言わない彼を不思議に思い言葉を促す。

すると、
「あの、大変申し上げにくいんですけど、外の窓からあなたが丸見えで、かつ、下着が丸見えです」

その言葉を聞き一気に羞恥が。
急いでスカートを引っ張り、カーディガンを腰に巻くために脚立から降りようとする。

…のが、間違いだった。

「わっ、」

「えっ、」


足を滑らせ、脚立ごと倒れる感覚。
まずい、顔面からいく?お腹強打?

ただただ恐怖が襲い、目を閉じた。




…あれ、あったかい?

恐る恐る目を開けると、野田くんのドアップ。
どうやら抱き留めてくれたらしい。

「柔らかっ、」

「え?」

「いや、なんでもないです、すみません」

「いや、こちらこそすみません…ありがとうございます」


顔を逸らしながら謝った彼は、やはりどこか気まずそうだった。



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