始まりは水曜日の15時過ぎ

緑川まい

水曜日の15時過ぎ(1)


水曜日の15時過ぎ、この時間になったら資料室を目指す。

オフィスの人たちが唯一まばらになっていなくなる時間。
私はお手洗いに行くフリをして、スマートフォンと財布を持って席を立つ。


資料室の前に来て、周囲を見回して誰もいないことを確認する。

そして、そのまま微かに扉を叩いてから、中に入った。
そこにはすでに先客が。

「お疲れさまです、蒼(あおい)さん」

「先に来てたんだね、野田(のだ)くん」

野田くんは、海外事業部のエースだ。
英語もペラペラだし、噂によると他にもいくつかの言語が話せるらしい。

彼のことは、英語ペラペラ、ということしか知らない。
それはかかってきた電話に出て英語で話してたから。

基本的にはひっきりなしに電話かかってくるらしい。

噂によると、電話してる姿しか見られていないからか、女性陣が話しかけられないようにわざと電話してるとかなんとか。

それも本人に確認してないからわからないけど。


水曜日の15時過ぎ、私はこの野田くんと30分を共に過ごすのが習慣になっている。


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