父方
第1話
私のお母さんは昔ちょっとしたことで入院していた。
そんなお母さんに元気を出して欲しくて、
私は毎日お弁当を作って持って行ってあげていた。
最初はおにぎり。
具はお母さんが好きな梅。
6歳の私の手では三角形にするのが難しくて丸いおにぎりだったけど
お母さんは美味しい美味しいって言いながら
食べてくれた。
その次の日は前日のおにぎりとスクランブルエッグ。私は卵焼きがいいと言ったのだが、料理を見てくれているおばあちゃんがこっちの方がいいと言うので仕方なく…
ケチャップも持って行ってあげたから
お母さんは大喜びだった。
その次の日は昨日できなかった卵焼きに挑戦。ほとんどおばあちゃんがやってくれたけど私は丁寧に弁当箱に詰め込んだから
期待通りとても美味しそうに食べてくれた。
それからもおにぎりと卵焼きだけのお弁当を作っては病院にいるお母さんの所へ持っていった。
そんな日々が当たり前になってきた頃、
お母さんの病状が悪化した。
というか今朝突如倒れたらしい。
詳しいことを知っているのは私と一緒にいるおばあちゃんだけなのにそのおばあちゃんは
お父さんと電話したりしていて忙しいみたいだから教えてくれなかった。
そして夜になって1本の電話がおうちの固定電話にかかってきた。
見知らぬ番号だがおばあちゃんが忙しそうだったので私が出た。
「山内さん、美穂さんの意識が戻りません。」
私は意識が戻らないという言葉の意味がわからなかったから電話の向こうの深刻そうな声に反して能天気に「はーい、わかりました」
と答えてしまった。
電話を終えると私はおばあちゃんの所へ
このことを報告しに行く。
「おばあちゃん、お母さんの
"イシキガモドラナイ"って言ってた。」
その時のおばあちゃんはすごく嬉しそうな顔をしていたからいいことなんだと思って私もおばあちゃんとハイタッチをしたりした。
それからお父さんが帰ってきておばあちゃんに話しかける、
「母さん、直ぐに車出すから乗って。」
おばあちゃんが私を車まで連れていく途中
お父さんが泣きながら電話しているのが見えた。
「美穂の…美穂の意識が…」
これを見て私は意識という言葉の意味がわからなくなってしまったのでおばあちゃんに聞いてみた。
「おばあちゃん、"イシキ"ってどういうこと?」
「美咲は知らなくていいんだよ。」
それから父の運転で病院に向かいお母さんの病室に入るとベッドに顔に白い布をかけられた人がいた。
私たちが着いてからすぐにもう1人のおばあちゃんが到着した。
「まあ…美穂……」
ベッドに寝ている静かで冷たい人が
私のお母さんであると知ってから私は気を失うくらい泣いたらしい。
それから数日、いつも面倒を見てくれていたおばあちゃんが家に来てくれなくなって
私は保育園にいつもより長く預けられていた。仕事を終え迎えに来てくれたお父さんとの帰り道のお父さんの言葉は未だに忘れられない。
「お母さんの体から毒が出てきたみたいなんだ。美咲が作ってくれたお弁当に入ってたんじゃないかってお医者さん入ってるんだけどどう?」
「わかんない」
それから6年経った今、
お母さんが入院してからよく面倒を見てくれていたおばあちゃんがテレビに出ていた。
飛び交うフラッシュの中、下を向いて顔を見せない老婆がパトカーに乗せられる。
その後ニュース番組で報道されたその老婆の供述はこうだった。
「息子は子供が産まれてから辛そうだった。息子の喜ぶ顔が見たかった。あと一人だったのに…」
今でもこの最後の一文を不気味にほくそ笑みながら話すあの老婆は
私の夢の中に登場して私を殺そうとする。
そんなお母さんに元気を出して欲しくて、
私は毎日お弁当を作って持って行ってあげていた。
最初はおにぎり。
具はお母さんが好きな梅。
6歳の私の手では三角形にするのが難しくて丸いおにぎりだったけど
お母さんは美味しい美味しいって言いながら
食べてくれた。
その次の日は前日のおにぎりとスクランブルエッグ。私は卵焼きがいいと言ったのだが、料理を見てくれているおばあちゃんがこっちの方がいいと言うので仕方なく…
ケチャップも持って行ってあげたから
お母さんは大喜びだった。
その次の日は昨日できなかった卵焼きに挑戦。ほとんどおばあちゃんがやってくれたけど私は丁寧に弁当箱に詰め込んだから
期待通りとても美味しそうに食べてくれた。
それからもおにぎりと卵焼きだけのお弁当を作っては病院にいるお母さんの所へ持っていった。
そんな日々が当たり前になってきた頃、
お母さんの病状が悪化した。
というか今朝突如倒れたらしい。
詳しいことを知っているのは私と一緒にいるおばあちゃんだけなのにそのおばあちゃんは
お父さんと電話したりしていて忙しいみたいだから教えてくれなかった。
そして夜になって1本の電話がおうちの固定電話にかかってきた。
見知らぬ番号だがおばあちゃんが忙しそうだったので私が出た。
「山内さん、美穂さんの意識が戻りません。」
私は意識が戻らないという言葉の意味がわからなかったから電話の向こうの深刻そうな声に反して能天気に「はーい、わかりました」
と答えてしまった。
電話を終えると私はおばあちゃんの所へ
このことを報告しに行く。
「おばあちゃん、お母さんの
"イシキガモドラナイ"って言ってた。」
その時のおばあちゃんはすごく嬉しそうな顔をしていたからいいことなんだと思って私もおばあちゃんとハイタッチをしたりした。
それからお父さんが帰ってきておばあちゃんに話しかける、
「母さん、直ぐに車出すから乗って。」
おばあちゃんが私を車まで連れていく途中
お父さんが泣きながら電話しているのが見えた。
「美穂の…美穂の意識が…」
これを見て私は意識という言葉の意味がわからなくなってしまったのでおばあちゃんに聞いてみた。
「おばあちゃん、"イシキ"ってどういうこと?」
「美咲は知らなくていいんだよ。」
それから父の運転で病院に向かいお母さんの病室に入るとベッドに顔に白い布をかけられた人がいた。
私たちが着いてからすぐにもう1人のおばあちゃんが到着した。
「まあ…美穂……」
ベッドに寝ている静かで冷たい人が
私のお母さんであると知ってから私は気を失うくらい泣いたらしい。
それから数日、いつも面倒を見てくれていたおばあちゃんが家に来てくれなくなって
私は保育園にいつもより長く預けられていた。仕事を終え迎えに来てくれたお父さんとの帰り道のお父さんの言葉は未だに忘れられない。
「お母さんの体から毒が出てきたみたいなんだ。美咲が作ってくれたお弁当に入ってたんじゃないかってお医者さん入ってるんだけどどう?」
「わかんない」
それから6年経った今、
お母さんが入院してからよく面倒を見てくれていたおばあちゃんがテレビに出ていた。
飛び交うフラッシュの中、下を向いて顔を見せない老婆がパトカーに乗せられる。
その後ニュース番組で報道されたその老婆の供述はこうだった。
「息子は子供が産まれてから辛そうだった。息子の喜ぶ顔が見たかった。あと一人だったのに…」
今でもこの最後の一文を不気味にほくそ笑みながら話すあの老婆は
私の夢の中に登場して私を殺そうとする。
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