チートクラスによる異世界攻略

水色の山葵

忍と吟



 この世界には魔法と呼ばれる人類特有の特殊能力が存在する。
 魔法には詠唱と呼ばれる現象を引き起こす為の言葉を発する必要がある。
 それによって魔力を安定させ望む状態で現象を引き起こす事が出来る。
 魔法には階位とかレベルみたいな完全な上下が存在する。


 ゲーム風に言うならば、
 レベル1の魔法は消費魔力が1~2で魔法を発動させるために単語1つが必要だ。
 レベル2は魔力消費3~4で単文1つと単語1つが必要だ。
 レベル3は5~6で重文1つと単文1つ。
 レベル4は7~8、詠唱は二つの単文と1つの単語。それに加えて自身を表す言葉が必要。
 レベル5、9~10。詠唱は自分、対象、魔法、意思の情報を表す文で構成される。
 レベル6は11~20で自分、対象、意思、覚悟、魔法の根源、それを消費魔力と同じだけ言葉にし、魔法を表す単語を発言する事で発動する。
 と言ったところか。








































 私は対峙する騎士を見つめる。見定める。
 銀色に輝き青い線が対照的に入った鎧。
 身を包む身体は大きいとは言い難いが、この世界では強さと直結しない。
 金色の髪、碧眼、歳は自分たちと同じくらいだろうか、整った顔立ちには戦いなんて物とは無縁だと思わせる。
 だが、奴の目は見覚えがある輝きを放っている。
 あれは知っている者の目だ、敗北を。私が毎日見ている目だ。


 だとしたら、奴には間違いなく英雄の才能が眠っている。
 そうだ。アレは吟と同じ物。


 私は、最初吟の事が嫌いだった。
 クラスメイト、唯それけの理由で仲良くなるなど馬鹿らしいと思っていた。
 だが、吟は違った。
 何かある度に声を掛けて来て、意見を聞いて、そして手助けしてくれる吟を私は嫌っていた。


 私の家は古くからある道場だった。
 特に剣術は素晴らしい物で、私も父から教わった剣を使い大きな大会で優勝した事もある。
 確か、その時も吟は私に素晴らしいと賛頌を送ってくれていたな。
 それに私は誇りを持っていた。私は強いのだと自覚していた。
 私は嫌いな時間があった。
 柔道や剣道なんかの授業の時、私と組んでくれるような知り合いは居なかったのだ。
 当然、男女の体育は別々なのだが、私達が通っていた学校は一クラスが15人程度の田舎だ。
 体育の際の男女の敷居は体育館に取り付けられたネット位な物だった。
 私が壁際でつまらなそうにしていると吟は何時も話しかけて来た。
 剣道に付き合ってくれた事もあったな、その時はコテンパンにやり過ぎて私が非難されそうになった所で吟が元気よく立ち上がり、場を収めてくれた。


 私だって自分が普通の高校生とはかけ離れた考えで生きている事を理解しているつもりだった。
 だから相容れないのは当然だと思っていた。


 ある日、私の道場に吟が入門した。
 理由を聞いて見れば、吟は我を押し通す事が出来るようになりたいと言っていた。
 彼は1年生ながら生徒会に入り書記をやっていた。
 その時のもう1人の書記も1年生だったらしく吟と彼女はクラスメイトだった。
 だが、気弱なもう1人の書記は自分の意見を生徒会に提出する事が出来なかった。
 代わりに吟はそれを自分の意見としてその時の生徒会長に提出した。
 会長はその案に大きな喜びを表し、採用した。
 だが、その企画が進行している最中にその案が彼の物ではないとバレてしまったらしい。
 彼は一躍皆の悪者だ。生徒会での立ち位置は悪くなった。
 当然吟と彼女は事情を話したが、聞き入れてはもらえなかった。
 吟はそれでも良かったと考えたようなのだが、もう1人の書記の女生徒は内気でひ弱で、企画の発案者に伸し掛かるしがらみとも呼べる重荷には耐えられなかった。
 結果、その女生徒は体調を崩した。


 吟の覚悟は本物だった。
 我を通す為の精神を身につけるのと同様に、その武術の腕もすさまじい速度で成長した。
 結局私に勝つ事は無く、道場を辞めて行ったが、あのまま続けていれば私は吟に追い抜かれなかった自信はない。
 だが忘れてはならない。それは敗北を知ったからこその強さだと。
 吟と話す事が必然的に増えた私は何時か人の輪の中に居る事が増えていた。
 私に仲間がいるのは彼の御かげなのだろう。


 私には勿体無いくらいの友人たちだ。
 だから、こんな戦いはここで終わらせる。


「【見える剣術ウィークダンス】」

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