チートクラスによる異世界攻略
それぞれの能力
会議が終わり、俺達はまた王に向き直る。
「これが俺達の総意だ。3ヶ月はこの国に居させてもらうよ」
「つまり受けられるだけの加護を受け、その後の約束すらもしないと?」
王は怒りを隠さず問いただす。
「ああ。この国は世界とそういう内容で契約したんだ。まさか、破るつもりじゃないんだろ?」
今、優位性を持つのは俺達だ。
強制的に連れて来られた身として、要求は尽きる事無く湧いて来る。
皆だって家族や友人を捨ててこの世界に呼ばれたんだ。
この国にだって事情があったんだろうけど、少なくとも俺が最低限だと思う譲渡は無条件にもらい受ける。
「俺達は向こうの世界にあらゆる物を置いてきた。いや、連れてこられたんだ強制的に。あんた等だって俺達に恨まれたい訳じゃ無いんだろ?」
「当然です。英雄の皆様には私たちができうる限りの持て成しを受け取って頂く所存です」
王では無く姫が答えた。
王が軽々しく他人を持ち上げる事は避けるべきなのだろう。
そして、この姫と王は相当意思の疎通ができている。
「では、俺達が提示する条件は取り敢えず2つ。国内での自由と必要な物資の提供」
「承りました」
「後は、なんかそっちからある?」
「一先ず皆様方には部屋をご用意したしましょう」
「あ、1人部屋はなんかあった時やばいから4人部屋を4部屋頼む」
「承知しました。では詳しいこの世界の情報は後日お話いたしましょう」
「いや、それは出来る限り早く知りたいから今からでいい。俺と詩羽で聞くから後の奴は部屋で色々と準備しててくれ」
『りょうかーい』
「それでいいか? 姫さん」
「いかがなさいますか、王」
「ああ、彼の言っている方向で話を進めて構わない」
「畏まりました」
そう言うと使用人達が皆を連れて行った。
俺は後ろから忠人に声を掛ける。
「頼んだぞ!」
「解ってるよ!」
さて、こっからどんな話が飛び出すか期待を込めて聞いてみるか。
「吟。手が震えてる」
詩羽が小声で喋りかけて来る。
それくらい自分で解ってるさ。
だけど、見栄を張らない訳に行かないだろ。
「詩羽、これは武者震いと言ってだな」
「私に。いえ、私達には嘘はつかなくていいよ」
「……ああ……そうだな。ビビってるよ。正直マジで怖い」
「だよね」
そう言うと、詩羽は俺の手を握って来る。
「【心に触れる暖かさ】」
その言葉に疑問を持つよりも早く、回答が身に降りかかる。
何か暖かい物に包まれているような、悪影響な感情が全て取り払われたかのような。
心臓に直接届く温もりを感じた。
「これが。詩羽の異能……」
「そう。弱そうでしょ?」
「いいや。最高だ」
「何言ってるの!」
茶番はここまで。
実際助かったぜ詩羽。
「じゃあ教えてくれ。この世界の事を」
「そんじゃあ会議始めっぞ」
吟と詩羽を残して王座を立ち去った俺達は使用人たちの案内の元、1つの部屋に全員集合していた。
ここからの進行は俺、仮村忠人が受け持つ流れになっている。
吟が居ない時は大体こうなるのだ。
「じゃあ能力の確認だ。言ってもいい奴は教えてくれ」
「じゃあまず僕から」
最初に口を開いたのは何時も無口な龍哉だった。
確か他者の能力を見る能力だったよな?
「僕の能力は【現実を見通す眼】と……」
「少し待て」
龍哉が能力を言おうとすると鉄がそれを止めた。
「どうした?」
気になって聞いて見るが答えは帰ってこない。
代わりに行動で示してくれた。
「糸羽、いくら、頼む」
「了解っと。まずは【張りぼての空想】でテント的な何かを召喚」
何かを空中に描く動作をした、いくらちゃん。
書き終わると同時に組み立てられたテントが出て来た。
「な、これは何に使うのだ」
「まあまあ、忍ちゃん。こっからは糸羽ちゃんの出番なの」
「解りました。【技は覚えさせる物】。これで鉄君の【全てを守れる盾】をテントに付与します」
「まあこれで簡易的な絶対遮断空間の出来あがりって事だね。鉄の【全てを守れる盾】は能力による覗きも無効化出来ると思うんだよね」
「凄いな」
「ここまで考えていたのか」
「もっと褒めてくれてもいいんだよ忍ちゃん」
「調子に乗らない」
「ちぇー」
コントもひと段落したところで、皆に呼びかける。
「じゃあ皆テントに入ってくれるか?」
俺が言う前から皆入り始めていたので、最後に俺が入って全員入る事が出来た。
「うわ、てか狭すぎ」
テントは13人で入るにはかなり小さかった。
つめこみ状態である。
「これは不可抗力のチャンスでござるな!」
「だよね!? 僕もちょうどそう思ってたんだよ」
「やはり光とは気が合うでござるな!」
「僕もそう思う」
「お前ら端決定な!」
全く、エロガキ2人は困るぜ。
よし、これで俺が女子の隣だ。
「じゃあ龍哉続けてくれ」
「うん。僕の能力は……」
みんなの能力を聞き終わったので再確認しておこうと思う。
皆能力を隠すような事は無かった。
仮村 忠人
【何でも入る箱】
【便利さは小ささ】
篠崎 鳶
【空を飛びたい】
【一撃の極み】
唯 正人
【目が苦しい剣】
【瞬の最速】
怯彩 龍哉
【現実を見通す眼】
【見えざる現実】
挾間 鉄
【全てを護れる盾】
【剣になる物】
飛 紫
【吸い寄せる瞳】
【仮想の羽】
真壁 光
【玩具が欲しい】
【隠れ身】
涼島 沙耶
【攻守攻防の祈り】
【傷を吸う掌】
斉賀 雅音
【無に帰す被弾】
【掻き消える傷】
潮風 糸羽
【泥酔した拳】
【技は覚えさせる物】
一宮 忍
【見える剣術】
【超えられない境界線】
清羽 いくら
【張りぼての空想】
【見えない場所を見る眼】
戸馳 百花
【完璧な先手獲得】
【完全なもう一発】
小波 吟
【限界消失】
賢視 詩羽
【全快の治療薬】
【心に触れる暖かさ】
吟と詩羽には予め確認をとっていた。
「なあ、なんで吟だけ1つなんだ?」
多分、皆が思ってであろう疑問を百花が問いかけた。
あまり我慢強くない、百花らしいっちゃらしい。
「それが良く分からないんだよね。まあ多分二択、僕の能力を弾いたか、そもそも能力を一つしか持ってないか」
それに龍哉が答える。
「それって、やっぱりあのせいかな?」
雅音がそんな事を呟く。
普段元気な彼女からは創造も付かない程、重い声だ。
「そうかもしんねえな」
俺は投げやりに答えた。
「吟に悪いと思わないの?」
「もし、あの事が原因だとしても吟はそれを俺達が心配する事を一番嫌がると思うな」
「そう……かな」
重くなった空気を壊したのは、いくらちゃんだった。
やっぱりこういう時は頼りになる副会長様だぜ。
「ねえ、それより僕の能力で吟が見えたよ。なんの話してるか共有しようか?」
「そうだな。皆今からは自由行動でいいぞ。聞きたい奴だけいくらちゃんの所に集まって来れ」
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