異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから

水色の山葵

十五話 考察と日常



 俺のシステムのアップデートについて解ったことを記録しようと思う。
 まずメニュー画面の追加。
 緑色のHPゲージと青色のMPゲージが表示されるようになった。
 これは設定で常時視界の右上に表示できるようなので、その様に変更した。
 これで残り体力を見るのに一々ステータスを開く必要がなくなったわけだ。


 そして何よりも最大の変更点、基準値の十分の一化についてだ。
 これにより俺のスキルダメージ無効1000が最強になってしまったように思う。
 そもそもこの数値は最低基準が百の場合の数値で設定していたから、このような内容のスキルになったのだ。
 確か冒険者ギルドで見た、最強の魔法を保持した転生者が平均ステータス三千だった。
 この場合十分の一になる訳だから攻撃力は三百。
 正直お話にならない。
 俺と戦うには少なくとも千以上の攻撃能力が必要だ。
 最強を使えばその限りではないが、通常の場合Sランク冒険者であっても攻撃は通用しない。
 一種のバグのようなものだが、これは俺の最強だ。
 最高権限を持っているのは当然俺だし、ハッキングのような事は直に俺に接触しなければ不可能な作りになっている。
 アーカイブのシステムを一部使用しているとは言っても、俺からの一方通行だ。
 つまり水晶に触れていない状態では俺のスキルに細工する事は不可能。
 そもそも俺はこのシステムに多くのバグや抜け道を作っている。
 最低限のインフレは出来ないようになっていたが、小細工を積み重ねた結果は見ての通り、この世界の人間が一人五、六個しかもっていないスキルをこれでもかと獲得している。
 要するに今回の件も多少のインフレではあるが多少のラッキーぐらいに考えれるレベルだろう。


 更に今回の件でスキルポイントを大量に獲得した事でかなりの量がたまっている。
 何か良いスキルを取っておくか。
 フェンリルに対する霊化の件もあるし、多少は取っておくが千ポイントもあれば十分だろう。


 獲得するスキルは〈防御魔法〉〈殺気感知〉〈気配感知〉〈攻撃感知〉〈外敵感知〉〈体操作〉〈体技〉〈弓技〉〈硬化〉〈錬金〉〈岩石魔法〉〈氷結魔法〉〈自動治癒〉〈自動回復〉〈スタミナ回復速度倍化〉〈陰陽術〉〈見切り〉〈マナドレイン〉〈体力吸収〉〈ブレス〉、ここまでで千七百ポイントの消費だ。
 あとは六千五百ポイントあるので、今度は固有のスキルを習得して行こうと思う。
 これはアーカイブの知識からの情報に付属する物で俺の設定したスキルでは無いので今まで取っては来なかった。
 だが固有スキルに分類されているスキルの必要ポイントはどれも千以上だ。これだけ見ても優秀さが伺える。
 なので今回は有用そうな〈絶対危機回避〉と〈完封〉を習得した。
 絶対危機回避はその名の通り、何分かに一度だけ自動で危機を回避する。
 完封はかなり面白い効果で相手一人のスキルを一つだけ一時的に封印する事が出来る。
 転生者には一人一能力という勝手な先入観を女神が植え付けていたので、このスキルは対転生者ではかなり有効なスキルだと思う。
 まあ勿論俺の様に複合的な能力にした奴は別な話だ。


 さて、レティ達が押しかけてきて一週間ほど経ったのだが、今更冷静にスキルポイントの割り振りなんて考えていたのには理由が有る。
 勿論振る必要が無かったとか、構成を考えていたとかの細かい理由はあるのだが、最大の理由は俺の今の状況にある。
 俺は今、ある理由により一歩も動けないのだ。
 頼む二人とも早く起きてくれ!
 両隣で絡みついてきているレティとフィーナのせいで俺は動けない。
 確かに幸福な時間だが、それと同じように自由を奪わている不自由さもある。
 要するに暇なのだ、確かに最初は童貞なりに色々思うところはあった。
 だが、毎日続けば飽きがくるのも必然である。
 いや、魅力がないとかじゃなくて、スキル割り振るほど暇な時間になるという意味で。
 それで暇つぶしと称し、システムの考察やスキルポイントの使い方などを今頃思考しているのだ。
 因みにアリルは俺とは逆側の魔王の隣に寝ていたはずだが、俺が起きた時には既に姿は消えている。
 早起き悪魔のようだ。




 その後、転移で抜け出したのは十分ほど経った後だった。




 リビングに降りると、ノルとアリルの声が聞こえて来る。
 どうやら二人ともこの一週間でかなり仲良くなっているようだ。
 何故アリルやレティやフィーナが当然の様にノルが見えているのかは、正直謎だが女神と魔王とその副官と言われると納得もしてしまいそうだ。
 フィーナに関しては鑑定が測定不能だから調べようも無い。
 魔王は千年以上生きているからスキルが多すぎて把握していないし。
 アリルに関してはスキルが特殊過ぎて名前を見ただけじゃ効果が造像出来ない。
 謎多き奴らである。


「おはようノル、アリル」


「おはようございますご主人」


「おはようございますシル様」


 二人に挨拶してリビングを素通りし、朝食を作る。
 基本的にレティは性格上自分で作った料理は丸焼きのみ、フィーナは物を食する必要が無いので料理はしない。
 ノルは触れられないし、アリルに朝食を作らせるのも何となく悪い気がする。
 消去法で超調理のスキルを持つ、俺がこの家の料理担当である。


 ストレージから食材を出していく。
 今日の朝食はパン、スープ、サラダの三品だ。
 ジャムやバターは勿論常備、パンに関しては自家製である。
 小麦粉もアーカイブとウィキの知識から栽培してみた。
 強力粉、中力粉、薄力粉と俺のストレージには殆ど全ての現代料理を再現できるほどの量が蓄えられている。
 ストレージ内の時間は停止しているので暖かいご飯を入れて一ヶ月経ったとしても暖かいまま出て来る。
 食品が腐ったりする可能性も無いのだ。
 最近お世話になってる商人に行ったら直ぐに種や必要な物を用意してくれた。
 その商人は次期S級冒険者とパイプを持ちたいとか言っていたが、細かい事を俺が考える意味も無いだろう。
 好意には甘える。
 恩は出来るだけ返すけどな。


 そろそろ、二人が起きて来る時間だ、今日は久しぶりに冒険者ギルドにでも顔を出すかな。


 五人で手を合わせ「「「「「いただきます」」」」」をした。

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