異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから

水色の山葵

九話 プレゼントを思考する



 ノルが言うには自分が貰うなら花束とかがいいとの事。
 ミーナは甘未とか奢るのがいいらしい。
 いや別に好みを聞いたわけじゃ無かったんだけどな。
 まずは『世界一の花』っと検索。


『この惑星に存在する植物分類・花においてSSS++のランクの物は2種類。様々な鉱物の花びらを咲かせる〈鉱石輪〉。蜜を一舐めするだけで身体を正常な状態に戻す〈不命の花〉が存在します。どちらも極地にしか分布が無く、採取難易度は極めて高いです』


 どっちにするかな。
 よし、決めた。


「ノル、ちょっと出かける」


「はい……早く帰ってきてくださいね」


「何言ってんだ。お前を1人にするわけねーだろ。手え握れ」


「え? 解りました。ありがとうございます」


 そっと手を握ってきた。
 基本的にノルは物に触る事が出来ないが、霊感スキルを所持している俺は別だ。
 さて、職業を変えると弱体化するから今日は無理そうだな。
 スキルポイントも全部振っちまおう。
 難易度が高すぎたらすぐ帰る方向で。
 『〈不命の花〉が多く咲く場所に転移してくれ』と入力する。


『畏まりました』


 景色が変わる。
 空は暗い。
 海岸沿いに転移したようだ。
 確かにそれらしい花が足元に点々と生えている。
 鑑定してみると確かにそれだった。


「取り敢えず、ライト!」


「ご主人、魔法が使えるのですか?」


「ああ、俺は基本的に何でもできるぞ」


「すごいです!」


「そうだろ? でも今はそれよりも……」


「魔物、ですか?」


「ああ、そうらしい」


 さっきから危機察知がうるさすぎる。
 ヒュドラ以上の警戒だ。
 備えるしかねーよな。


「マジックアップ、フィジカルアップ、リフレクト、プロテクト、マジックプロテクト、ヘルファイヤウェアー、アジリティアップ」


 ストレージから武装を全て装備状態で展開する。
 接近戦は危険。
 範囲魔法で決める。
 敵の数は五匹。
 種類は人型、サルか?
 種族名はハイパーモンキー。
 レベル百を軽く超えてやがる。
 ステータスの平均は一万五千。
 スキルは個体ごとに平均三つ。
 ハイジャンプを全員が所持。
 動きが読みにくい。
 状況判断は大丈夫、冷静だ。
 胆力スキルのおかげだよな。
 助かるぜ。


「アクアドラゴン・ストーム!! ダブル!!」


 水流魔法と暴風魔法の複合魔法スキルと多重魔法スキルの同時発動。
 並行思考も機能している。
 身体強化魔法のマジックアップで魔法の威力は50%アップ。
 水龍の竜巻だ。
 取り敢えず、大幅にHP削られとけ。
 相手の残りの体力は三割ほど。
 このまま押し切る!


「ヘルファイヤエンチャント。風属性付与。 いっけっ!!」


 神速の弓はサルの眉間をとらえる。
 脳に損傷を受けたサルは即死だろうけど、さらに黒炎でもやし尽くされる。
 灰になった。
 間をあけず他二匹にも矢を放つ。
 ステータスは各上だろうけど、手数が圧倒的に違う。
 魔法詠唱しながら弓撃ってくる相手と戦った事はねえだろ。


『称号〈強サル討伐者〉を獲得』
『スキル〈ハイジャンプ〉を獲得』


 今の一戦でかなりレベルアップしたみたいだ。
 流石にステータスが一万五千な事はある。
 あのサルレベル百超えてたしな。
 どうなってんだこの場所、さっさと採取しちまおう。


「ご主人、また魔物です!!」


「解ってる」


「上空から周りを見張っていますね」


「ああ頼む」


 確かノルには浮遊スキルがあったな。
 でも足はあるな。
 まあ、俺には関係ない。
 調べるとしてもノルが望んだ時でいい。
 今は魔物か。
 いい経験値稼ぎをさせてもらおう。


 今度の魔物は種族名ハイパーエイプ。
 平均ステータスは二万。
 クソが、あのサルがここで一番強い訳じゃないのか。
 それよりサルより速え。
 ハイジャンプを小刻みに使ってやがんのか。


「なら、グランドウォール!!」


 一気に加速したゴリラは厚い壁にぶち当たる。
 自分のスピードでダメージを食らいやがれ脳筋。
 怯んだ隙に弓を打ち込む。
 ダメだ刺さらねえ。
 ヘルファイヤエンチャントがあるからノーダメージではないが、効率的なダメージソースにはならん。
 それなら、魔法だ。


「ヘルファイヤバレット!」


 小刻みにしかダメージを刻めねえなら連射速度を上げるだけだ。
 後ずさるゴリラに黒炎の弾丸を打ち込み続ける。
 が、やはり決め手に欠けるな。
 確かにこのままいけばHPは削り切れるだろうが、ゴリラが何もしない保証もなければ後ろから敵が襲ってこねえ理由もない。
 さっさと決めて、花を採取して転移する。
 多重詠唱の最大の五重詠唱、それを暗黒魔法で使う。


「ファイブ・デットリー・シン」


 お前の犯した罪の分だけ。
 満腹になった分だけ、怒り狂った回数だけ、怠けた時間だけ、発情しただけ、嫉妬した回数の罪を今、償え。
 その魔法はその分だけお前の脳を破壊する。
 HPは残ってる。
 死んでないのか、なかなかやるな。
 だが、五つの状態異常を食らってる状態で動けるのか?
 無理だよな、今楽にしてやるよ。


「エンジェルブレス」


 ゴリラはこと切れたようだ。
 あっぶねえ。
 こんなとこに長居は無用だ。
 霊体を攻撃できるようなスキルを持った奴が現れないうちにさっさと帰ろう。



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