戦闘狂の迷宮攻略 〜早熟と模倣でお前のスキルは俺のもの〜

水色の山葵

階層守護者



 魔法の鞄
 角兎の角33個
 犬の牙24個
 熊の爪11個
 猪の牙17個
 回復薬45個
 使いかけの武器
 剣30個
 槍27個
 弓32個
 盾31個
 杖52個
 本48個
 大剣20個
 鎖鎌21個
 鉄球18個
 大斧22個
 兎のレアドロップー脱兎の槍1個
          アクセルのスキルスクロール1個
 犬のレアドロップー闇夜の短剣1個
          ステップのスキルスクロール1個
 蛇のレアドロップー蛇毒の大鎌1個
 猪のレアドロップー炎の大盾1個
 熊のレアドロップー剛腕の大剣1個
 ゴブリンのレアドロップー召喚魔法のスキルスクロール1個
             炎魔法のスキルスクロール1個
             風魔法のスキルスクロール1個
             スラッシュのスキルスクロール1個   
 ホブゴブリンのレアドロップー怪力の腕輪1個
               身体強化のスキルスクロール1個         
 サバイバルナイフ、弾無し拳銃、食飲料後少々、スタンガン、スマホ、ソーラー充電器、警察官の服、リュック。


 リュック一つ分の荷物としては結構詰めた方だと思う。しかし食料もここらが限界だ。どちらにしろそろそろ帰るしかなかった。


 このダンジョンの五階層以降はゴブリンしか現れなかった。しかし、ゴブリンの種類は多種に渡っていた。
 基本的に武装して現れる敵だが、その武装種類は剣、槍、弓、盾、杖、本の6種類。しかし7階層にはホブゴブリンというゴブリンを大人にしたような生物が現れる。それらはいずれも筋骨隆々の見た目をしておりパワーも人外のそれだ。
 そしてゴブリンでは扱えなかったような大味な武器を使ってくる。大剣、鎖鎌、鉄球、大斧といった破壊力の高い武器を好んで使っていた。


 そしてスキルスクロールの数々。ダンジョンの魔物が落とすレアドロップには二種類存在している。それは装備とスキルスクロールだ。同じ魔物でもレアドロップは二種類あるようだ。ゴブリンだけは多くのスキルを獲得しているため魔物の種類ではなく個体ごとに獲得しているスキルがレアドロップとして出現するのだと思う。


 8階層にはホブゴブリンと魔法使いホブゴブリンが現れた。杖を持ったゴブリンよりも規模も威力も高い魔法を使ってきた。しかしスキルスクロールは身体強化以外獲得できなかった。杖持ちも身体能力高かったから一番鍛えてるスキルが身体強化なんだろう。


 探索隊も休憩中なので僕も休憩兼整理を頭の中でしていた。勿論『僕は』だ。








 俺は僕ちゃんが呑気に休んでる間に休憩中の探索隊に近づく魔物の相手だ。休憩が足りませんでしたで死なれちゃ寝覚めが悪すぎる。


 そもそも打算が無いわけじゃない。『僕』の考えではもしもあの娘が9階層最奥のボスを倒してくれれば俺は何の危険もなくボスを素通りできる。
 まあ楽なのが嫌いな訳じゃないが、この方法が気に入ってるわけじゃねえ。


 なあ、もしもあいつがボスをやれなかったら俺が出て行ってもいいんだよな?
 ああ、勝てるのならな。
 は? 俺がいつ勝てないなんて言ったっつんだよ。勘違いすんな、俺は今までの相手とは格が違う相手だと言ったんだ。
 なら聞くが、確実に勝てるのか?
 いいや多く見積もっても50%ってところか。
 危険だ。
 そうかい。主人格はお前で決定権もお前にある。今は従っといてやるよ。


 そろそろ、探索隊が探索を再開するようだ。
 このペースで行けば今日中にボス部屋まで行くだろう。
 これ以上の階層の敵にその不思議パワーが通用するのか、お手並み拝見だ。


「理からはみ出たる異形の者よ、在るべき処、在るべき姿、理を読み解き成るべき形へ戻りたまえ」


 ホブゴブリンは消えなかった。しかし気分が悪そうに藻掻き苦しみ膝をついた。
 その隙をつき銃撃がホブゴブリンを襲う。


「嬢ちゃん大丈夫かい?」


 今までとは明らかに違う対象の反応に、部隊の隊長と思われる髭面の男は心配そうに声をかけた。


「大丈夫です。次は消します」


 そういって女は次のホブゴブリンに狙いを定めた。


「理からはみ出たる異形の者、怪力と剛腕を併せ持つ大鬼であり同時に知性ある獣なる存在、理を読み解きあるべき形へ戻りたまえ」


 二回目の詠唱でしはホブゴブリンは完全に消滅した。






 そういう事か。


 何か気がついのか?


 ああ、あの詠唱はあの詠唱通りの力なんだ。


 ああん? わかるように言ってくれ。


 つまり、理を読み解きあるべき姿へ戻す能力。一度目のホブゴブリンへの行使が失敗した原因は理を読み解けていなかったから。恐らくだが、ゴブリン程度の相手であれば理からはみ出た異形の者であるという情報さえあれば消滅させることができた。しかし、ホブゴブリンの場合は相手の格が高すぎてその程度の情報では分解することができなかったんだ。


 へー、俺には強いのか分からないんだが、お前はどう思ってるんだ?


 いや、あの娘の能力があればボスを突破する事は可能かもしれない程度には強力だと思うよ。どんな相手であれ相手の情報さえあればあの娘は消滅させることができる。一つだけ弱点があるが、それもダンジョン内では関係のない話だ。












 ついに探索隊は9階層最奥まで到達していた。
 隊長と巫女さんが大扉の中を覗く。扉の中までは距離がありすぎて見えないが、俺は知っている。そこに静かに佇むは人と同じ体格と赤い肌、そしてその生き物の象徴とでも呼べるような二本の角。
 そうだ、それは遥か昔に人が思い描いた正真正銘の異形の者。
 正しく鬼人と呼ぶに相応しい生き物だ。


「どうだあれも行けるか?」


「時間があれば何とか……」


 自身なさげにあの娘は呟く。しかし隊長はその娘の目ではなく口にした言葉を信じた。


「そうか、時間なら俺たちが稼ぐ。あいつを倒せば我が国は他国に対して有利に動くことができる!」


 期待に目を輝かせ、隊長は前進を選択した。

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