オタクとロリ

マッチ棒

第28話〜人混み(コミケ一日目①)〜

ピピピピピピピピピッ!

いつもより少し早い時間に目覚ましが鳴る。

いよいよ夏の大イベント当日になった。

……とは言うものの、祭りは三日間にわたって開催されるため今日は初日というべきなのだが。

7時に花凛を起こして、朝飯を済ませ8時前には家を出た。

「ねぇ、慎の同僚ってどんな人なの?」

電車で池袋に向かっている間、花凛が聞いてきた。

「えーとなぁ、多分ロリコンだな。」

そう伝えると、花凛は「ふーん。じゃあ、わたしと話、合うかなぁ」と呟いた。

(……そういう事じゃ、ないんだけどなぁ)

それからあれこれ話していると、池袋駅に着いた。

「おう!鬼月。」

待ち合わせ場所に向かうと、すでに山口がいた。

「よう、山口。早かったなぁ」

「あぁ、早くお前の親戚の子に会いたかったからな」

山口は、キメ顔でそう言った。

花凛には、あらかじめ俺の親戚の子、という設定でこの三日間過ごしてもらうように言ってある。

まぁ、本当のことを言うといろいろ面倒だからな。

「そんじゃあ、行くか」

「おう!」

「はーい」

俺たち三人は、会場である東京ビッグサイトへと向かった。

……電車を乗り継ぐこと1時間。

「うわ…やっぱ、すげー人の数…」

俺たちは、東京ビッグサイトに着いた。

「ウヒョー、相変わらず人がすごいなぁ。」
「だなぁ。」

俺も山口も同じ感想だった。

(…なんか、年々外国人の数が増えている気がするんだが…)

世界最大の同人誌即売会というのもあって、日本はもちろんのこと、欧米や近隣の国からも沢山の人が来ている。

実は、途中の乗換駅・大崎駅ですでにすごい数の人だったのだが…いざ、会場に着くとその倍の数はいた。

それぞれ、西館・東館への列ができている。

俺たちは、東館の列に並んだ。

現在の時刻は、午前9時40分。祭り開始まであと、20分ほど。
気温は、夏というのもあって現在・28度。

「花凛、大丈夫か?辛かったら言ってな。」

「ううん。平気。それよりも、すごい人の数だね。」

「そうだな。でも、中に入ったらもっとすごいから覚悟しておけよ。」

「ゴクリッ…うん、わかった。」

(…やっぱり、初めてにはきつかったか?)

それから、待つこと20分。

「それでは、只今からコミックマーケット一日目を開始します。どうか、走らずにゆっくりとお進みください。」

夏の大イベントが、いよいよ始まった。

          

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