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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

038

「そんなの詭弁だわ!だからって人を殺していいわけじゃないわ!」
「あれは事故だったんだ!あの薬をもっと広めようとした溝口君を神宮寺君が止めようとしたときに、当たり所が悪くて……。だから証拠を隠すためにああするしかなかったんだ」
「でも他の人は関係ないじゃない!」
「薬の効果は確認できた。あとは製品化されるのを待たなければいけない。それには生き証人は始末しなければいけないんだ」
「そんなっ……。先生、貴方、狂っているわ」
「安奈、そんな目で僕を見ないでくれ。君にそんな失望した目で見られると僕はどうしていいかわからなくなってしまう。それに、たしかに僕も手を貸したが、実際に殺しをやってのけたのはすべて神宮寺君だよ。僕は殺人幇助なだけだよ」
「そんなの関係ないわ!みんな死んで良い人などいるわけがないのだからっ」
「いや、彼女たちは死ぬべきだったんだよ。彼女たちは安奈に憧れつつも安奈を越えられると思い込んでいたんだ。ミスコンの時だって、安奈が出ないのは自分たちに負けるのが悔しいからだと、そう言っていた。許せなかった。僕は、君がこの世で一番美しいと知っているから」
「そんなことを今言われて、嬉しく思うはずがないでしょう」
「安奈、神宮寺は決して僕のことをしゃべらないよ。喋るぐらいなら死を選ぶように洗脳しているからね」
「だから彼女は自分の舌をかみ切ろうとしたのね」
「……もしかしてその手の包帯はそれを止めた時の物なのかい?なんて無駄なことを。君の体に傷がつくなんてあってはならないことだよ安奈」
「目の前で人が死ぬことに比べれば、こんな傷ぐらいどうってことないわ」
「違う!君は特別な存在なんだ。この薬、羽化の蕾がなくても完璧でいる存在なんだ」
「私は完璧じゃないわ。今だって怖くて瑞樹が居なかったら逃げ出しているところよ」
「……ああ、そうだね。君たちはお互いに支え合っているからね。でも気が付くはずだ。安奈、君は一人でも平気なのだということを。橘君がいなくとも君は一人で立つことができるのだということを!完璧な人にだけ許された景色を君は見る事が出来る」

 どこか恍惚とした表情になった高梨に安奈は怯え、瑞樹はそんな安奈の背中を支えた。安奈の方は震えていたが、逃げようとはしておらず、瑞樹の手の暖かさに支えられて高梨と対峙する。

「そんなもの、今はいらないわ。私は今のこの現状で満足しているの。それを余計なことをしないで頂戴!」
「そんなこと言っても僕にはわかる。僕も羽化の蕾を使って完璧な世界を見たひとりだからね」
「なんですって!」
「神宮寺君も使うと思っていたのに、彼女は使わなかった。理由を聞いたらそんなことで君の目に留まっても嬉しくないからだそうだよ。君は本当に愛されている。まさに女神だ」
「先生は、本当に人を殺したのね」
「殺したのは僕じゃない。でも、死体を片付ける手伝いはしたよ」
「殺すように命じたのは先生でしょう!」
「そうだね。でも実行犯は僕じゃない」
「それだけで十分です、高梨先生。安奈、もう警察の方に入ってもらいましょう、自供は十分に取れたわ」
「瑞樹……」

 瑞樹の言葉と共にサロンの扉が開き、わらわらと警察官が入ってきて高梨の身柄を拘束する。

「安奈!」
「……さようなら高梨先生。本当に愛していたわ」

 安奈は涙を流しながら真っ直ぐ高梨を見てそう言うと、瑞樹に付き添われてサロンを出ていった。

 数日後。
 学院初ともいえる醜聞をひた隠しにするため、生徒には緘口令が敷かれ、真実は闇の中に消えていった。
 ただ、いなくなった神宮寺が事件に関与しているのではないかという噂が広まったが、それは安奈と瑞樹が神宮寺の机に白い花束を供えたことにより、最後の犠牲者となったのだと噂が書き換えられることとなった。
 高梨は、実家の母親の容体が急変したために急きょ学院をやめたことになっており、学院には平穏な時間が流れるようになった。

「水瀬先輩、五十嵐先輩、北条さん、これからどうするのかしら?」
「さあ、ドラックの効果が切れるまではあのままなのだろうけれど、ドラックの効果が切れてもあのままを貫けるかはわからないわね。特に北条さん。今回の件、未だに納得していないのでしょう?自分は成功者だから効果が切れることなどないって言っているそうじゃない」
「五十嵐先輩と水瀬先輩は効果があるうちは楽しむとおっしゃってたから、効果が切れたら元の暮らしに戻るのだとは思うけれども、案外そういう人の方がそのままの暮らしをするのかもしれなくってよ」
「そうね」
「ねえ、安奈」
「なあに、瑞樹」
「先生の事よかったの?あのまま黙っていることだってできたのよ」
「そんなことできないわ。先生のことは愛していたけれども、犯罪に手を貸すことは許されないわ。知っていて黙っていることも、共犯と同じでしょう」
「そうね」
「でも意外だったわ。瑞樹が犯人を割り出したのにもかかわらず黙っていようというなんて」
「高梨先生だったからよ。安奈のことを思うと黙っていた方がよかったのかもって思って」
「かまわないわ。殺人者と付き合い続ける勇気は私にはないもの」

 そう言った安奈の頬に涙が一筋流れるのだった。

ーFINー

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