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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

036

 神宮寺は口ごもると、キッと安奈を睨みつける。

「そうだって言ってるじゃないですか!なんなんですか?これは私に対する尋問か何かなんですか?私のことを馬鹿にしているんですか?」
「まあ、そんなことはなくってよ。落ち着いて神宮寺さん」
「落ち着いてなんていられません!小南先輩にこんな風に疑われるなんて私、信じられません!」
「神宮寺さん?」
「私は、詩世のことで小南先輩にできる限り協力してるつもりです。それなのにどうしてこんな風に疑われなくっちゃいけないんですか!」

 全く聞く耳を持たないと言わんばかりの神宮寺に、安奈も瑞樹も困ってしまい、目を合わせてしまう。

「疑っているわけではないのよ神宮寺さん」
「本当ですか?」
「ええ、本当よ」
「そうですか、なら……」
「私は貴女が犯人だと断定しているもの」
「え!」
「だって、貴女の話だけ妙な部分があるのよ。他の人は怯えていないのにもかかわらず、溝口さんだけ、神宮寺さんに話したから殺されると、怯えていたと言っていたそうじゃない。他の方々は私に話しても殺されると怯えてはいないわ」
「そんなの知りません」
「溝口さんだけ何か違うのかしら?」
「だから知りませんって」
「朽木さんがこの部屋に入るのを見た人がいるのよ」
「っ!」
「さあ、どう言い逃れをするつもりなの?」

 安奈は強めの口調で言うと、神宮寺は言葉に詰まり、がくりと崩れ落ちる。

「だって、だって仕方がないんです。詩世がドラックのことを皆に言うっていうから。こんな素晴らしい物なら皆にも知らせなくちゃいけないなんていうから、だから殺すしかなかったんです」
「他の方はどうして殺してしまったの?」
「詩世の死を誤魔化すためと、ドラックの証拠を消すためです。ここでドラックの実験を行っていたなんてなったら、私の居場所がなくなってしまうもの」
「全員殺すつもりだったのね?」
「はい」
「貴女一人で?」
「それは……、そうです」
「嘘ね」
「っ!どうして」
「いくら何でも貴女一人で生徒を冷凍させたり電子レンジに運んだりすることは出来ないからよ。必ず協力者がいるわ。私はその協力者を知りたいの。ねえ、神宮寺さん。教えてちょうだい」
「……あはは、なんだ。なんだ、私の事だけしかわかってないんですね。そうか……じゃあ、黙秘します」
「え?」
「ふふふ、小南先輩でもわからないことがあるんですね。あはは」

 神宮寺は壊れたように笑うと、安奈を見てカパリと口を開けると、べろりと舌を出して。

「だめっ!」

 安奈は咄嗟に神宮寺の口の中に手を突っ込んだ。そうでもしなければ神宮寺は舌をかみ切っていただろう。
 安奈の手は傷ついてしまったが、神宮寺の自殺だけは阻止することは出来た。

「人を殺してはいけないとイエス様は仰っているわ。それは自分のことも含まれているのよ。これ以上人を殺してはいけないわ」
「安奈っ」

 瑞樹が手近にあったタオルを丸めて神宮寺の口の中に入れると、安奈は手を引く。
 くっきりと歯型が付いている安奈の手の甲は血がにじんでいる。
 神宮寺は瑞樹に暴れようとしてい顔を押さえつけられている。その際当たった神宮寺の机の引き出しが開き、そこから花の蕾がボロボロと落ちていく。
 これがドラックなのだろう。
 安奈はずっと通話状態にしていたスマホに話しかける。

「長谷川警部、ドラックを発見しました。押収に来てください」
『了解した』

 神宮寺が信じられないものを見る目で安奈を見る。

「そう、ずっとこの話を警察の方に流していたのよ。だってそうでもなければ貴女を捕えることなんてできないでしょう?」

 安奈は悲しそうに言うと、暴れる神宮寺の頬をそっと撫でる。

「貴女をこんな目に合わせたのはいったい誰なのか言ってちょうだい。それに、貴女が言わなくても警察の方が調べればわかってしまうことなのよ。だったら早く言ってしまったほうが楽になるのではなくて?」

 安奈の言葉に神宮寺はブルブルと首を振る。共犯者のことはあくまでもいう気はないらしい。
 やってきた長谷川たちに神宮寺を引き渡して、安奈達は神宮寺の部屋を調べ始める。ドラックこそ警察が押収してしまったが、ノートなどはまだそのまま残っている。

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