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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

035

「それよりもこれがどうかしたんですか?」
「そう、これなのだけれども、第四の死体の時だけ実は違うものが描かれていたそうなの」
「……そうなんですか」
「不思議よね、どうして第四の遺体の下だけ違うものが描かれていたのかしら。こういうオカルトチックなものは必ず決まりごとを守るもののはずでしょう?」
「その魔女と吸血鬼の連携がうまくいかなかったんじゃないですか?」
「これだけ大掛かりな殺人をしていたそんな小さな連係ミスなんてありえるかしら?」
「あり得るんじゃないんですか?人間なんですから」
「……まあ、貴女、犯人は吸血鬼だと信じていると言っていたのに、人間が行ったとそうおっしゃるの?」
「……それは」
「まあ、いいわ。それよりもやはり注目すべきは死体よね。人間の大部分が水分で出来ているとはいえ、乾燥した人間を運ぶのは一人には難しいことだと思うわ。そこでも共謀説をやはり私は押したいの」
「……そうなんですか」
「もっとも、大人一人ならこんなこと簡単にやってのけてしまうのかもしれないけれども、私たちのように生徒がやるにはあまりにも苦労がかかってしまうものね」

 そこまでいって安奈は「そう言えば」と口にする。

「そう言えば、神宮寺さんは枯れ木のようになった死体を見たことがあるのよね」
「はい、詩世の死体を見ました」
「でもおかしいのよ。神宮寺さんが現場に到着したのは警察の方々がお見えになってからでしょう?その時にはもう死体は運ばれてしまっていたはずなのよ。……ねえ、神宮寺さん。貴女はどこで死体を見たのかしら?」
「……記憶違いかもしれません。警察が来る前だったかも」
「まあ、そうなの?」
「はい」
「そう、そうならいいのよ。勘違いは誰にもでもあるものね」
「それで、先輩は何しにここに来たんですか?」
「それはもちろん経過報告よ。だって神宮寺さんは言ってしまえば最初からこの事件にかかわっているじゃない。知る権利があると思って」
「そうですか、ありがとうございます」
「なにか質問はあるかしら?今なら何でも答えて差し上げてよ」
「いいえ、特にはないです。でも、ラミアって本当に二人いるんですか?」
「私はそう思っていてよ」
「そうなんですか」

 神宮寺はいつになく口が重く、安奈達に対して警戒したような雰囲気を醸し出している。

「神宮寺さん、今日はなんだかいつもと雰囲気が違うように感じるのだけれども、どうかしたのかしら?」
「なんでもありません。少し寝不足なので……」
「そうなの。それはお邪魔してしまったわね」
「いいえ、先輩のお気遣いはありがたいですので」
「そう言っていただけると嬉しいわ」

 安奈はそういうと神宮寺の頬に手を伸ばしてからそっと抱きしめる。

「不安でしょうけれども大丈夫よ。もうすぐ事件は解決するもの」
「そうでしょうか」
「ええ、だってもう犯人はわかっているんだもの」
「え!」

 神宮寺は安奈の腕の中で飛び上がりそうなほどの驚きを見せる。
 無理もないだろう。犯人が分かっていると言われたのだから。しかし、安奈の腕の中の神宮寺はカタカタと怯えるように震えている。

「怯えなくてもよくってよ神宮寺さん。貴女に悪いようにはしないから」
「先輩……」

 安奈は神宮寺を離すと微笑みを向け、安心させるように肩を撫でる。
 神宮寺は縋るように安奈を見つめているが、その目の奥には暗い光が宿っているのを、安奈は見逃さなかった。
 安奈は猫なで声で神宮寺の名前を呼ぶと、もう一度確認するわね、と言う。

「溝口さんの死体を見たのは、警察が来る前だったのね?」
「はい」
「おかしいわね」
「え?」
「死体を発見したのは私たちで、警察やシスターが来るまでずっと見張っていたのだけれども、他の生徒が近づいているのを見た覚えはないのよ」
「……それは、木の影から見ていたから」
「どうして気の影から見ていたのかしたら?」
「なんだか物々しい雰囲気だったので」
「そうなの?まあ確かにそうかもしれないわね」

 けれどもそれでもおかしいと安奈は、猫なで声で神宮寺に語り続ける。

「瑞樹が周辺を見ているはずなのよ。瑞樹に限って見落としたなんてことがあるとは思えないの。ねえ、本当に貴方は溝口さんの死体を見たのかしら?それは私たちが発見した後で間違いはないのかしら?」
「……」
「ねえ神宮寺さん、本当に、私たちよりも後に、死体を見たのかしら?」
「それは……」

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