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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

033

 ともあれ、水瀬達の部屋の件や他にいくつか気になって居た件を話を得た安奈達は解散し、それぞれの寮室に戻っていった。
 こんなことが起きているため、休日とはいえ学院の外に出ることを禁止されているのだ。やることと言えば、学院内にある飲食店で時間をつぶすか、サロンで時間をつぶすか、寮室で時間をつぶすしかない。
 なんとなくサロンに残る気にならなかった安奈は、片づけを終えると瑞樹と共に寮室に戻ったのだ。

「ねえ、どう思う?」
「なんの事かしら?」
「高梨先生の事よ。実際のところ瑞樹は高梨先生が怪しいと思うのかしら?」
「私は……安奈が信じている高梨先生を信じているもの、信じているとしか言えないわね」
「そうよね。高梨先生は今回の件に何も関係がないに決まっているわよね」
「どうしたというの?なにか不安になるようなことでもあった?」
「さっき、長谷川警部に対応した高梨先生の態度があまりにも、自然すぎて私には逆に不自然に感じてしまったの」
「と、いうと?」
「私との時もあんな感じに嘘をついているんじゃないかって思ってしまって……」
「安奈……そんなことを考えてはだめよ」
「でもっ」
「高梨先生は大丈夫よ。安奈が愛している人だもの、信じてあげなくちゃいけないわ」
「……そうね、瑞樹の言うとおりだわ。少し事件のことにのめり込みすぎてしまっているみたい、何か別のことで頭をリフレッシュさせた方がいいかもしれないわね」
「そうね、たまにはサロン以外でお茶をするのもいいのではなくて?」
「いいわね!今から言っても開いているところはどこかしら?」
「結構なお店が開いていると思うわよ」
「瑞樹のおすすめはどこ?」
「学食よ」
「ええ!」
「学食が一番安定しているもの。他の出店舗よりもよっぽどね」
「まあ確かに一流のものがそろってはいるけれども、学食なら毎日お昼の時に行っているじゃないの」
「ティータイムに行くのも乙な物よ。それに貴女、土曜日はサロンに居っぱなしなのだから、こんな日ぐらいは学食に顔を出してあげなさいな」
「瑞樹がそう言うのならそうするけれども」

 安奈はまだ納得がいかないのか、少しだけ不満そうに座っていたベッドから立ち上がると、ロングカーディガンを纏って瑞樹と共に外に出た。
 学食には少なくない生徒が居たが、席が埋まっているということもなく、安奈達はすぐに席を確保することが出来た。
 学食と言っても自分で食事をとりに行くのではなく、ウエイターが注文を取りに来るシステムになっている。
 このウエイターたちもこの学院に住み込みで働いている人々なのだ。時には長期休みの間の学生のお小遣い稼ぎの場にもなっている。
 安奈と瑞樹はともに季節のタルトを頼むと、先に運ばれてきた紅茶に口を付けた。
 サロンの物とは違い、水出しのアイスティの為作り置きがあるのだろう、すぐに出てきた。
 安奈は学食を行きかう生徒を見ながら、ふと、これだけの学生がいるのにもかかわらず、なぜ彼女たちが選ばれたのかを考える。
 瑞樹がいうには安奈に強く憧れているという彼女たちだが、それだけが理由ではないはずだ。
 例えば食べ物。学食で提供されるものであるのならば安全と思って、何の警戒もなく自分たちのように口にしているのならば、何かを混入させてしまう事は容易にできるのではないだろうか。
 そうしてその効果で連れ出した生徒を実験台にしているという可能性はないだろうか。

「そうか」
「どうかしたのかしら?」
「わかったかもしれないわ」
「え?」

 春休みの期間、学食以外の飲食店はすべて閉鎖されており、学食で生徒は飲食をする以外にない。例外としては料理部の家庭科室で作ったり、ミステリーサークルのサロンに備え付けてあるキッチンで作ったものぐらいだろう。
 ドラックの使用者が共通して食べたものがあったのだとしたら、それが最初の催眠術のきっかけになっているのかもしれない。
 安奈はそう考えるとすぐさま水瀬達三人に、ラミアとあった日に食べたものが何だったのかを思い出してもらうように連絡をした。
 随分と日にちが立っているが、学食のメニューなど早々変わるものでもないので、思ったよりも早く回答が返って来た。

「やっぱり」
「何かわかったのね」
「ええ、少なくともどうやって犠牲者は選ばれたのかは」

 安奈は興奮したように言うと、運ばれてきたタルトをぺろりと平らげ、長谷川にメールを打った。

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