女子高生探偵小南安奈事件簿
031
「北条さん……。わかったわ、けれどせめてお部屋だけは刑事さんと一緒ではダメかしら?念のためという言葉があるでしょう?」
「……橘先輩がそこまでいうのでしたら」
「そう、ありがとう」
何とか北条の説得に成功し、話題は次に移っていく。
「そういえば、ミスコンの時に見た痣はあれからどうなりました?」
「痣?そう言えばそんなこと言われたような気がするわね。えっと、どこだったかしら?」
水瀬が首をかしげる。
「私は確か腰のあたりだったわね。あの後から特に変わりはないわね、濃くも薄くもなっていないわ」
五十嵐が答えると今度は視線が北条に集まった。
「えっと、首元でしたよね。ちょっと見てもらえますか?」
そういって襟を緩めると、北条は瑞樹に首筋を見せる。
瑞樹が確認したところ、前回見た時と変化はないとのことだった。
ただ、火傷でもない湿疹でもない赤い痣は何が原因でついたものなのだろうか。
「元々のドラックの使用者には同じような症状は出るんですか?」
「いや、出ていないな。これも亜種独特の症状かもしれん。亡くなった死体にも痣の跡が残っていてな、そこはまるで何かに咬まれたかのように二つの穴が開いているんだ」
「まあ、そうなのですか」
「ところで、警察の方々は私たちがドラックを食したことをご存じなのに何もしないのですか?」
水瀬が不思議そうに尋ねると、長谷川は苦笑を浮かべた。
「ドラックを所持しているわけでもないし、現行犯でもないとなかなか立件は難しいんだよ」
「まあ、そうなのですか」
「自己申告といってもな、このドラックは外見こそ変われども血中に残る期間が短くてな、もう血液検査をしたところで証拠が出るものでもないんだ」
「そうなのですね、運がいいのか悪いのか……」
「血中に証拠が残りにくいドラックなのに、学院の外ではどうやって検挙なさっているのですか?」
「それこそ現行犯逮捕だな。もしくは食してから三日以内だったら血液検査でも反応が出る」
「三日…随分短いんですね」
「三日たつと劇的に人格が変わるっていうものなんだ」
「……先輩方もそうなのですか?」
「そうね、たしかそのぐらいで人生観が変わったように思ったと思うわ」
「私もです」
「私もそうね、食して三日過ぎたあたりから肌艶がよくなってきて、人生って素晴らしいものなのだと感じるようになってきたわ」
水瀬、北条、そして五十嵐がそう答えると、やはり学院の外で出回っているドラックの亜種なのだと安奈達は考えた。
だが、と安奈はふと逆転の発想を思いつく。
もしかしたら、学院内で配られたものが本命で、学院の外の物が亜種もしくは劣化品なのだとしたらどうだろうか。
安奈は早速そのことを長谷川に話すと、長谷川は興味深そうに安奈の話に耳を傾けた。
学院の外で劣化版の実験をして、いよいよ本命の実験をこの学院で行っているのだとしたら、犯人もしくは犯人たちはよほどの計画を練ってこの学院に入り込んでいるはずである。
安奈は少し興奮したように頬を赤らめて、長谷川に持論を話すと、反応を待った。
「確かに、配られた量を考えると、巷で出回っている物の方が劣化版と考えるのは悪くない線だと思うな。だがこの学院が選ばれた理由はなんだ?外界からシャットダウンされているとはいえ、携帯は通じるし、情報だっていくらでも手に入るだろう」
「けれどもこちらからの情報はなかなか送られることはありませんのよ」
「ほう?」
「この学院は徹底した情報セキュリティが敷かれておりますの。この学院内のサーバーを介した情報は徹底的に精査されて外に送り出されます。今外の世界で、この学院で起きていることが話題になっていないのは、そのせいです」
「ふむ、なるほどな」
長谷川も初めて聞いたのだろう。だが聞いてみれば納得といったところだ。生徒の誰かがSNSなどで情報を全くあげていないのを警察でも不思議に思っていたのだ。
その答えが徹底した情報管理にあったというのだから驚きだ。
もちろん、火消しに動いている保護者たちの力もあるのだろう。
「逆に、そんなこの学院にどうやってラミアが入り込んだのかが問題ね」
「ラミアはもともとこの学院に居たというのはどうかしら?」
「水瀬先輩、そう言いますと?」
「ラミアはもともとこの学院にいて、活動を開始したのがつい最近、春休みの終り頃だったというのはどう?」
「それこそ、どうやって入り込んで今まで潜伏していたのか気になるところですね」
「……橘先輩がそこまでいうのでしたら」
「そう、ありがとう」
何とか北条の説得に成功し、話題は次に移っていく。
「そういえば、ミスコンの時に見た痣はあれからどうなりました?」
「痣?そう言えばそんなこと言われたような気がするわね。えっと、どこだったかしら?」
水瀬が首をかしげる。
「私は確か腰のあたりだったわね。あの後から特に変わりはないわね、濃くも薄くもなっていないわ」
五十嵐が答えると今度は視線が北条に集まった。
「えっと、首元でしたよね。ちょっと見てもらえますか?」
そういって襟を緩めると、北条は瑞樹に首筋を見せる。
瑞樹が確認したところ、前回見た時と変化はないとのことだった。
ただ、火傷でもない湿疹でもない赤い痣は何が原因でついたものなのだろうか。
「元々のドラックの使用者には同じような症状は出るんですか?」
「いや、出ていないな。これも亜種独特の症状かもしれん。亡くなった死体にも痣の跡が残っていてな、そこはまるで何かに咬まれたかのように二つの穴が開いているんだ」
「まあ、そうなのですか」
「ところで、警察の方々は私たちがドラックを食したことをご存じなのに何もしないのですか?」
水瀬が不思議そうに尋ねると、長谷川は苦笑を浮かべた。
「ドラックを所持しているわけでもないし、現行犯でもないとなかなか立件は難しいんだよ」
「まあ、そうなのですか」
「自己申告といってもな、このドラックは外見こそ変われども血中に残る期間が短くてな、もう血液検査をしたところで証拠が出るものでもないんだ」
「そうなのですね、運がいいのか悪いのか……」
「血中に証拠が残りにくいドラックなのに、学院の外ではどうやって検挙なさっているのですか?」
「それこそ現行犯逮捕だな。もしくは食してから三日以内だったら血液検査でも反応が出る」
「三日…随分短いんですね」
「三日たつと劇的に人格が変わるっていうものなんだ」
「……先輩方もそうなのですか?」
「そうね、たしかそのぐらいで人生観が変わったように思ったと思うわ」
「私もです」
「私もそうね、食して三日過ぎたあたりから肌艶がよくなってきて、人生って素晴らしいものなのだと感じるようになってきたわ」
水瀬、北条、そして五十嵐がそう答えると、やはり学院の外で出回っているドラックの亜種なのだと安奈達は考えた。
だが、と安奈はふと逆転の発想を思いつく。
もしかしたら、学院内で配られたものが本命で、学院の外の物が亜種もしくは劣化品なのだとしたらどうだろうか。
安奈は早速そのことを長谷川に話すと、長谷川は興味深そうに安奈の話に耳を傾けた。
学院の外で劣化版の実験をして、いよいよ本命の実験をこの学院で行っているのだとしたら、犯人もしくは犯人たちはよほどの計画を練ってこの学院に入り込んでいるはずである。
安奈は少し興奮したように頬を赤らめて、長谷川に持論を話すと、反応を待った。
「確かに、配られた量を考えると、巷で出回っている物の方が劣化版と考えるのは悪くない線だと思うな。だがこの学院が選ばれた理由はなんだ?外界からシャットダウンされているとはいえ、携帯は通じるし、情報だっていくらでも手に入るだろう」
「けれどもこちらからの情報はなかなか送られることはありませんのよ」
「ほう?」
「この学院は徹底した情報セキュリティが敷かれておりますの。この学院内のサーバーを介した情報は徹底的に精査されて外に送り出されます。今外の世界で、この学院で起きていることが話題になっていないのは、そのせいです」
「ふむ、なるほどな」
長谷川も初めて聞いたのだろう。だが聞いてみれば納得といったところだ。生徒の誰かがSNSなどで情報を全くあげていないのを警察でも不思議に思っていたのだ。
その答えが徹底した情報管理にあったというのだから驚きだ。
もちろん、火消しに動いている保護者たちの力もあるのだろう。
「逆に、そんなこの学院にどうやってラミアが入り込んだのかが問題ね」
「ラミアはもともとこの学院に居たというのはどうかしら?」
「水瀬先輩、そう言いますと?」
「ラミアはもともとこの学院にいて、活動を開始したのがつい最近、春休みの終り頃だったというのはどう?」
「それこそ、どうやって入り込んで今まで潜伏していたのか気になるところですね」
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