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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

026

 そうして、聞き取りを終えて寮の門限までまだ時間があった安奈達は、第四の事件現場に向かった。
 そこにはまだ規制が敷かれており、近づくことが出来なかったが、見た様子では何か変わったものはなかった。
 規制のテープがなければ、何もなかったと思えるほどに、いつも通りの場所だった。

「まだ規制は解かれていなかったわね」
「仕方ないわね」
「それにしても、今回も枯れ木のようになっていたのでしょう?一体どうやって犯人はそんな死体を作り上げているのかしら?」
「やはり、電子レンジ方法なのではないかしら?」
「うーん、確かにその設備はうちの学院にはあるけれども、そう簡単に動かせるものではないはずよ」
「それはそうでもないみたいなの」
「ええ!それは本当なの?瑞樹」
「そうなのよ。私も先生方に確認して驚いたのだけれども、料理部や研究で使ったりするサークルや研究会なんかもあるから、意外と自由に使われているそうなの」
「そんな!危なくはないのかしら」
「そこはよく注意しているとおっしゃっていたわ」

 衝撃の事実に安奈は、学院の設備管理のずさんさに開いた口が塞がらない状態になってしまった。
 確かに、研究会などで使うだろうが、教師などの立ち合いがあって当然なのではないだろうか。

「けれども鍵はちゃんとされているのでしょう?」
「されているけれども、見てきたらピッキングされてもおかしくないような鍵だったわ。私たちの寮の部屋の鍵の方がよほどしっかりしているのではないかしら?」
「そんなっ!」

 安奈はあまりのことに頭を抱えてしまう。確かに生徒が日常的に使う設備ではないので、管理が後回しになってしまっているのかもしれないが、それにしてもあんまりなのではないだろうか。
 これは父に進言したほうがいいかもしれないと、安奈が思っていると、警察の関係者なのだろう、スーツを着た男の人が安奈達に近づいてきた。
 年は四十代前半ぐらいで、白髪が見える髪は短く刈りあげられており、刑事特有なのか、眼光は鋭く安奈達を見据えていた。

「お嬢さんたち、ここで何をしているんだい?」
「友人の死を悼んでいます。昨晩亡くなった朽木さんは友人でしたから」
「そうかい……」

 安奈が悲しそうに目を伏せると、刑事も気まずそうに目を泳がせる。

「花を手向けたいのですけれども、この規制はいつ解除されるのでしょうか?」
「何もなければ明後日には解除されるだろう」
「まあ!明後日まで……そんなに時間がかかってしまうのですか?」
「ああ、解剖の結果を待ってのことだからな」
「解剖……」
「ああ、お嬢さんたちには刺激が強いかもしれないな」
「いいえ、大丈夫です。他の三人も解剖に回されたと聞いていますし」
「誰から聞いたんだい?」
「誰、というか噂になっていますから。この連続殺人事件については、学生の中でもいろいろ物議されていますから」
「お嬢さんたちもその中の一人ってことかい?」
「そうですね。友人を失ってしまいましたし、ぜひともこの事件を解決してみたいと思っています」
「事件の解決は警察の仕事だ。お嬢さん名前は何というんだい?」
「私は小南安奈、こちらは橘瑞樹です。刑事さんは?」
「失礼した。俺は長谷川純也はせがわじゅんや警部だ」
「まあ、警部さんでいらっしゃったんですね」
「見えないかい?」
「いえ、警部さんがお一人でこんなところにいらっしゃるなんて意外だったものですから」

 安奈は周囲を見渡すが、長谷川以外の人物は見当たらないことを指摘した。
 すると長谷川は「いいところに気が付いたな」と言って、安奈達を規制線の中に入るように言ってきいた。

「生徒の目で確かめて欲しいことがあるんだ」
「よろしいのですか?」
「いいんだよ、こういうのは臨機応変ってやつだ」

 長谷川に言われて、安奈達は規制テープの内側に入った。
 入ったからと言って何かが変わるわけではないはずなのに、なんだか妙にそわそわしてしまい、安奈と瑞樹はともに自身の両腕をさすっていた。

「見て欲しいのはここだ。ここに死体があったんだが……」
「特に変わったものはないように思いますが?」
「私も、特に変わったところはないと思います」
「そうか、やっぱり変わったところはないか」

 長谷川は何か納得したように頷くと、安奈達に今度は規制テープの外に出るように言う。
 わけのわからないまま、規制テープの外側に出た安奈達に、長谷川は同じようにテープの外側に出て来て、説明するように口を開いた。

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