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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

014

 確かに自分の携帯電話が、ハッキングを受けているなんてなったら気味が悪いだろうが、実際にそんなことができるのだろうか、と安奈は気味悪がりながらも首をひねる。
 それこそ、そう言った専門的な知識を持って人物でもない限り、無理なのではないだろうか。
 あいにくこの学院に、そのような技術を持った人がいるとは、聞いたことがない。
 新しく赴任してきたシスターたちの中にそんな技術を持った人物がいるかもしれないが、今のところそんな話も聞いていない。
 正直言ってメールの件に関しては本当に意味が分からないのだ。
 安奈だけではなく瑞樹の目の前で自動で削除されてしまったメール。まるでタイミングを見計らっていたかのようなそれに、疑問しか浮かばない。

「ドラックが原因で人が変わってしまったようになったのだとしたら、今でも販売しているもしくは、渡している人との接触があってもおかしくはないわよね。それなのにそう言った様子がないのは何故なのかしら?」
「最初に大量に渡されているとかではなくて?」
「その可能性は確かにあるわね。今はまだ残量があるというところなのかしら?」
「警察が押収した物の中にドラックがあったという話は聞いていないよ」
「まあ、そうなの?じゃあ、いったいどうやって手に入れているのかしら?」
「何か合図のようなものがあって、秘密裏にそのやりとりが成されているのかもしれなくってよ。私たちだってずっと見張っていられるわけではないのだもの」
「それもそうね。いっそ人数を絞って見張ったほうがいいのかもしれないわね」
「水瀬幸恵先輩と北条志麻さんなんてどうかしら?二人とも私が接触した雰囲気では、随分と同じような境遇の人に対しての感情が、強く出そうなタイプだったわ」
「ではその二人に絞って様子を見ることにしましょう。先生は水瀬先輩の方を見ていただけますか?私たちは北条さんを監視することにしますので」
「わかった。出来るだけ監視することにしよう」
「それにしてもドラックが出てくるとは意外だったわ」
「そうね、この学院にドラックだなんて似合わないものね」
「それもあるけれどもね、瑞樹。私はやっぱりラミアの説を押していきたい気持ちがあるのよ」
「吸血鬼を?」
「ええ、永遠の美と若さを願って生贄を捧げるだなんていかにもじゃなくって?」
「それこそオカルトの領域になってしまうわね。ミステリーとはいいがたくってよ」
「まあ、そうなのだけれどもね」

 安奈は肩を竦めると再びカップを持ち上げて紅茶を飲んだ。
 サロンにいる三人はその時思いもよらなかったのだ。
 翌朝、三人目の犠牲者が出ることを。

 その犠牲者が出たのは同じように安奈達が聖堂の朝の掃除に向かった時だった。
 同じように聖堂に助けを求めるような格好で、枯れ木のような姿になった生徒。
 安奈達はすぐさま警察と校長に連絡をすると、彼らが到着する前に死体を検証する。
 流石に三度目ともなると慣れてきてしまったのだろうか、抵抗感はあまりない。
 近づいてみるとわずかにすえた匂いがするのが分かる。
 枯れ木のようになっている手足は、水分が全く感じられることなく、触ったら折れてしまいそうに思える。
 しかし、実際に触ってみるとその表面は意外と弾力性があり、多少の事では折れないことが分かる。
 目は空洞のようになっているが、じっと見つめてみればすっかり小さくなってしまった眼球が確かにそこに存在していた。
 爪は割れ、干からびているが、その下にある皮膚には弾力はありそうだと安奈は考えた。
 血を吸われたのならば、眼球まで小さくなっているのはおかしいのではないだろうか?と瑞樹は言う。

「血液ではなくて体液を摂取しているのかしら?ドラックだけでこうなってしまうのはおかしいわよね。第三の何かがあるはずだわ」
「そうね。けれどもそろそろ時間切れよ。刑事の方々がご到着のようよ」
「今回は早いわね」
「流石に三回目ともなると、早くなってしまうのではなくって?」

 そんなものなのか、と安奈は納得し、警察に発見した時の状況などを話してその場を後にした。
 そんな安奈達の行動を、離れた位置から神宮寺がじぃっと眺めていたことなど全く気が付かずに。

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