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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

013

 数日間、五人を観察していた安奈達であったが、特に変わった様子もなく、普通に日々を過ごしているようであった。
 ただ、気になったのが、妙に飲み物を飲んでいたり、妙にドカ食いしたり、そう言った奇妙な行動をとることぐらいだろうか。
 その割には痩せてきているように感じる。

「高梨先生の方には何か情報は入ってきてないの?」
「入ってきていると言えば入ってきている」
「まあ!どんな?」
「死んだ二人の検死の結果だけど、ドラックの反応があったらしい」
「ドラック……」
「詳しい種類まではいわないが、違法なものだよ」
「オカルトかと思っていたのにドラックが出てきてしまっては、どういうことなのかしら……」
「ドラックを使用したのだとすれば劇的な変化があったというのも納得がいくわね」
「それは確かにそうだけれども、瑞樹はドラックについてどう思う?」
「そうね、ラミアがドラックを使ってどうかするなんて言うのはなんだかそれこそ非現実的だわね。オカルトならオカルトに徹して欲しいところだわ」
「わぁお、手厳しい意見ね」
「まあ確かに、今の状態ではミステリーなのかオカルトなのかわからないな」
「先生まで酷いわ」
「まあまあ、でも生徒たちに変わったところは見られないよ。ちょっと飲食について異常な行動がみられるっていうことぐらいはね」
「その飲食だけれど、ドラックを使用していると考えれば納得がいく部分もあるわ」
「まあ……そうね」
「とにかく、ドラックが関わっている以上、これ以上君達が関わるのは余計よくないことだと思う。手を引くべきだよ」
「まあ、先生。私は余計に手を出すべきだと思うわ。だって我が校にドラックが持ち込まれたなんて前代未聞だもの。犯人を何としても捕まえなくちゃいけないわ」
「……やれやれ、強情だね」
「そうよ」
「けれど安奈、先生のおっしゃるように本当にドラックが関わっているのだとしたら、ラミアの説はどうなってしまうのかしらね?」
「うーん、ラミアを騙った誰かがドラックを使って生徒をたらしこんだとか、そういう可能性もあるわね。そうなるとオカルトではなくてミステリー、謎解きになるわ」
「それでこそミステリーサークルのでばんではなくって?」
「そうね。あーあ、ラミアだと思っていたのに残念だわ」
「オカルトも好きだものね、安奈は」
「オカルト研究会と悩んだのだけれども、オカルト研究会はもう在ったからミステリーサークルにしたのよ」
「僕のためにかい?」
「そうよ、先生」
「嬉しいな、君が僕のためにしてくれたことの、どれほどを、僕は返すことができるのだろうね」
「あら、愛を返してくだされば結構よ。真剣に愛してくださればそれでいいの」
「純粋だね。そんなところが好きだよ」
「先生」
「……コホン」

 見つめ合う安奈と高梨の間に瑞樹の手が入る。
 二人は瑞樹を見ると、瑞樹は呆れたような表情で二人を見ていた。

「私しかいないからって、二人とも自由がすぎてよ」
「ごめんなさい」
「すまないね」
「まったく。他所ではこのようなことをなさらないでね。安奈のお父様の耳にでも入ったらどうなるかわからないわ」
「そうね、気を付けるわ」
「小南のお父君はそんなに厳しいお人なのかい?」

 高梨は一度だけあった安奈の父親を思い浮かべるが、特にそんな厳しい人だとは思えなかった。

「ええ、お厳しい方よ。自分の思い通りにならないことには特に。なんでも自分思うままにしたいと思う方なの」
「安奈のお父様は、普段はお優しいのだけれども、怒ると怖いわね」
「つまり、教師風情と、大事な娘が付き合っていることなんて、認めないという事かな?」
「ええ、そうね。そういうことよ、先生」
「なるほど、厳しい現実ということだね」
「私と付き合うのを考え直してしまうかしら?」
「いいや、僕は障害があるとさらに燃え上がるタイプなんだよ」
「まあ!では障害が無くなったら私への愛はなくなってしまうのかしら?」
「そんなわけないじゃないか」
「そう、よかったわ」

 安奈はほっと息を吐き出してカップを手に取ると紅茶を一口飲んだ。ちょうどからになったので、自分でお代わりを注ぐと、もう一口飲んだ。

「そういえば、あれから不審なメールは来ているのかい?」
「いいえ、来ていないわ。あんな風に勝手に削除できるなんて不思議で仕方がないわ。まるで私の携帯が、ハッキングを受けているみたいで、気味が悪いわ」

 安奈はカップをテーブルに置くと両腕を手でさすって気味悪がった。

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