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女子高生探偵小南安奈事件簿

茄子

010

 お茶会が終わり、安奈と瑞樹はかたずけが終わると早速、高梨をサロンに呼び出した。
 職員会議も終わった時間だったため、高梨はすぐにサロンにやって来た。

「先生、お呼び出ししてごめんなさい」
「構わないよ。どうかしたのかい?」
「ええ、少し力を貸してほしいことが出来てしまったの」
「なにかな?」

 安奈と瑞樹は高梨にソファに座るように勧めた。瑞樹がいるからだろう、安奈と高梨は別々のソファに座っている。

「実は続いている怪死について今調べているのだけれども」
「そんな危険なことをしているのかい?止めた方がいいのではないかな」
「まあまずは話しを聞いてちょうだい。調べているのだけれども、五人、不審な人物が浮上したんです。けれども五人を全員監視するなんて二人では無理でしょう?だから先生にも協力して欲しいの」

 安奈の言葉に高梨は深くため息を吐き出して型口を開く。その表情は硬い。

「連日の職員会議でも問題になっているんだ。寮の門限が早くなったこともわかっているだろう?今回のことは子供がお遊びで調べるようなものではないんだ。警察に任せなさい」
「あら先生、私たちは警察が分かっていない部分を狙っているの。ずばりミステリーよ!今回の事件にはミステリーが関わっていると思っているの。具体的には吸血鬼ね」
「吸血鬼だって!」

 高梨は驚いたように目を見開き声を荒げた。

「ええそうよ、吸血鬼ラミアがこの学院に入り込んだのではないかと私たちは思っているの。先生、荒唐無稽な話かもしれないけれどもミステリーサークルの顧問をしている具ぐらいなのだから、少しは信じてくれるでしょう?」
「それは、確かに顧問はしているが、子飼の凄惨な事件を興味本位でオカルトとくっつけるのには感心しないな」
「興味本位ではなくってよ。私はちゃんと立場ある生徒としてこの事件の解明に取り組んでいるの」
「小南、君は確かにこの学院の経営者の娘で、事件が続けばこの学院の存続の危機でもあるから、この事件を早く解決したがるのはわかる。けれどもこういうことは大人に任せておけばいいんだ。子供が出る幕ではないんだよ」

 諭すように言う高梨に、安奈はキッと目を吊り上げる。

「私が子供ではないことは高梨先生がよくご存じでしょう!」
「小南!」
「いいのよ、瑞樹は知っているもの」
「そうだとしてもこんなところで」
「こんなところだから言うのではないの。防音の壁にドア、そして窓に囲まれたここだからこそ私と先生は秘密の愛を確かめ合うことができるのだもの」
「小南…、安奈とにかく落ち着いてくれ。僕が悪かった。子ども扱いしたことは謝るよ」
「だったらいいのよ」

 とりあえず子ども扱いされなくなったことで満足したのか、安奈は声を和らげた。

「とにかく、この後人が要注意人物なの。先生も何人かご存じなのではなくて?先生は今年の春から赴任なさったから、ご存じないかもしれないけれども、皆さん、春休みの前と後とで随分印象が変わった方々ばかりなの」
「印象が変わったと言うと?」
「まるで花が開花したように華やかになったそうなのよ。それに、この間のミスコンの時に全員を同時に見て思ったし今日のお茶会でも感じたのだけれども、皆さん雰囲気が似ているのよね、そうよね瑞樹」
「ええ、皆さんに共通する空気というようなものがあったように感じたわ」
「ふむ、学年もクラスもばらばらの女生徒たちに共通する空気か。確かに不思議なことだが、やはり僕としては君たちが危ない目に合うようなことは、してほしくはないな」
「大丈夫よ、先生。危ないと思ったらすぐにやめるわ。ね、瑞樹」
「ええ、そうね。先生、そこの手綱はちゃんと握っておきますのでご安心ください」
「……わかった。協力しよう。その生徒たちの情報を貰えるかい?」
「やった!そう言ってくれると思っていたのよ。資料はこれよ、この子たち。皆に共通していることは春休みに帰省していなかったということだけよ、今のところは、ね」

 安奈はまとめた五人のファイルを高梨に見せる。
 高梨は良く調べ上げていると褒めつつもファイルを読んで面識のある生徒の名前を挙げる。

「確かに華やかな子だと思ってはいたけれど、雰囲気がまるで変っていたとは思わなかったよ。僕は今年度から赴任してきたばかりだからね」
「今年度から赴任……。そうだわ!他にも今年度から入ってきたシスターや教師がいるわよね」
「そうね、何人かいらっしゃるわね」
「その中にラミアに通じている人がいるかもしれなくってよ」
「そうなると僕も怪しいっていうことになるんだけど、どうなるのかな」
「先生は違くってよ」
「その根拠はどこから来るのかな?付き合っているから?それすらカモフラージュかもしれないじゃないか」
「まあ!」

 安奈は驚いて目を見開く。

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