女子高生探偵小南安奈事件簿
003
「どうおもう?瑞樹」
「そうね、吸血鬼の資料を集めているうちに何かに巻き込まれたという感じかしら?」
「思い浮かんだんだけれども、宇宙人の可能性はどうかしら?」
「え?」
「キャトルミューティレーションみたいな感じかもしれなくってよ」
「儀式に必要だという発想から急に飛んだわね。悪魔召喚の儀式はどこへ行ってしまったのかしら?」
「様々な可能性を考えているのよ」
安奈は廊下を歩いていた足を止めてくるりと瑞樹を振り返る。
「でもやっぱりあんな風に枯れ木のように体液を抜かれているのは不思議よね。方法もわからないわ。儀式に使うのだとしても方法が分からないのだから仕方がないわ」
「その方法がわかれば一番よねぇ。吸血鬼だったら簡単だけれど」
「そうだとしたら、長い間吸血鬼がこの学院にいるっていうことになるわね。それとも初等部に入って来たばかりの子を疑う気?」
「まさか!流石にそんなことはなくってよ」
安奈は大げさに目を大きく見開き、瑞樹の言葉にかぶりを振る。その様子に瑞樹も安心したように頷き、再び歩き出した。
もとより、吸血鬼は十字架や聖堂などに近寄れないと言われているのにもかかわらず、ミッション系のこの学院にいるというのが不思議なのだ。
そうなると、と安奈は癖なのか頬に手を当てて首をかしげる。
「あの死体、本当に枯れ木のように干からびていたわ。人間にあんなことできるものなのかしら?」
「人外の仕業だというの?」
「そう考えるのがしっくりくるわ。それとも何か方法があって?」
「ないことはないわけではないけれども…」
「まあ!どんな方法?」
「急速冷凍と急速加熱をすることよ。要は電子レンジの要領ね」
「なるほど。確かにこの学院には冷凍設備も解凍設備もあるわね。学食用に大型のものが」
「それを使えば人間枯れ木が出来るかもしれなくってよ」
「そうね、なるほど。そういうものもあるのね」
安奈は歩きながら食堂の方を眺める。そこにあるであろう、大型の冷凍庫と加熱器があるであろう場所を。
そうなれば人間にも犯行は可能だろう。その場合、やはり儀式の生贄に使った可能性も出てくる。
そもそも、まるで人が変わったようになった溝口詩世の行動にも不可解なところがあるのだ。顔つきまで変わってしまうとはどれほどの変化なのだろうか。
まずはその部分を解き明かしたほうがいいのかもしれないと安奈は瑞樹に提案する。
瑞樹もそれでよいと頷き、二人はひとまず溝口詩世が集めていた資料を取りに中等部文芸サークルに行くことにした。
中等部の文芸サークルでも、教室と同じようにキャーキャーと出迎えられたが、溝口詩世の話をすると、その声も止み、皆沈鬱な面持ちになった。
「溝口詩世さんが集めていたという資料を見せていただきたいのだけれども、よろしいかしら?」
「はい」
サークルの会長だという少女がまとめられたいくつかのファイルを安奈に手渡す。
「ありがとう。資料はこれですべてかしら?」
「文芸部の部室にあるのはそれだけです。あとは部屋に置いてある分に関してはわかりません。神宮寺さんなら知っているかもしれませんけれども」
「まあそうなの?では明日にでもまた改めて伺ってみるわね。神宮寺さんも文芸サークルの会員なのかしら?」
「いいえ、でもよく遊びに来てました。特にきまったサークルに所属はしていないようです」
「そうなの。ありがとう」
安奈達はそのまま資料を抱えて部室をでると、サロンに足を向けた。
サロンに到着すると早速と言わんばかりに安奈と瑞樹は資料を読んでいく。それはごく一般的な吸血鬼に関する資料で、特にめぼしいものはない。
「特に変わったところはないわね」
「そうね、一般的な吸血鬼の伝承に思えるわね。もっとも各地の物が集められているのは流石我が学院の生徒と言った感じだけれども」
「特にこのラミアのことが気になっていたみたいね。自室にはもっと詳細な資料があるかもしれなくってよ。明日神宮寺さんのところにもう一度行って資料を頂きましょう」
「そうね」
安奈は資料の中の一枚をひらひらと振るって見せる。
それには上半身は女性の姿をしているが、下半身には蛇の姿を持った美しい女性の姿が描かれていた。
「青年の血を好むとあるけれども、一説によれば少女の血を好むともあるみたいね。まあ、吸血鬼の伝説なんてそんなものよね。エルゼベエト・バートリなんてその典型だわ」
「そうね。ともあれ今日はこれ以上の進展はないでしょうし、私たちも部屋に戻りましょう?」
「そうね。そうしましょうか」
そういって二人はサロンを出て寮へ帰るのであった。
「そうね、吸血鬼の資料を集めているうちに何かに巻き込まれたという感じかしら?」
「思い浮かんだんだけれども、宇宙人の可能性はどうかしら?」
「え?」
「キャトルミューティレーションみたいな感じかもしれなくってよ」
「儀式に必要だという発想から急に飛んだわね。悪魔召喚の儀式はどこへ行ってしまったのかしら?」
「様々な可能性を考えているのよ」
安奈は廊下を歩いていた足を止めてくるりと瑞樹を振り返る。
「でもやっぱりあんな風に枯れ木のように体液を抜かれているのは不思議よね。方法もわからないわ。儀式に使うのだとしても方法が分からないのだから仕方がないわ」
「その方法がわかれば一番よねぇ。吸血鬼だったら簡単だけれど」
「そうだとしたら、長い間吸血鬼がこの学院にいるっていうことになるわね。それとも初等部に入って来たばかりの子を疑う気?」
「まさか!流石にそんなことはなくってよ」
安奈は大げさに目を大きく見開き、瑞樹の言葉にかぶりを振る。その様子に瑞樹も安心したように頷き、再び歩き出した。
もとより、吸血鬼は十字架や聖堂などに近寄れないと言われているのにもかかわらず、ミッション系のこの学院にいるというのが不思議なのだ。
そうなると、と安奈は癖なのか頬に手を当てて首をかしげる。
「あの死体、本当に枯れ木のように干からびていたわ。人間にあんなことできるものなのかしら?」
「人外の仕業だというの?」
「そう考えるのがしっくりくるわ。それとも何か方法があって?」
「ないことはないわけではないけれども…」
「まあ!どんな方法?」
「急速冷凍と急速加熱をすることよ。要は電子レンジの要領ね」
「なるほど。確かにこの学院には冷凍設備も解凍設備もあるわね。学食用に大型のものが」
「それを使えば人間枯れ木が出来るかもしれなくってよ」
「そうね、なるほど。そういうものもあるのね」
安奈は歩きながら食堂の方を眺める。そこにあるであろう、大型の冷凍庫と加熱器があるであろう場所を。
そうなれば人間にも犯行は可能だろう。その場合、やはり儀式の生贄に使った可能性も出てくる。
そもそも、まるで人が変わったようになった溝口詩世の行動にも不可解なところがあるのだ。顔つきまで変わってしまうとはどれほどの変化なのだろうか。
まずはその部分を解き明かしたほうがいいのかもしれないと安奈は瑞樹に提案する。
瑞樹もそれでよいと頷き、二人はひとまず溝口詩世が集めていた資料を取りに中等部文芸サークルに行くことにした。
中等部の文芸サークルでも、教室と同じようにキャーキャーと出迎えられたが、溝口詩世の話をすると、その声も止み、皆沈鬱な面持ちになった。
「溝口詩世さんが集めていたという資料を見せていただきたいのだけれども、よろしいかしら?」
「はい」
サークルの会長だという少女がまとめられたいくつかのファイルを安奈に手渡す。
「ありがとう。資料はこれですべてかしら?」
「文芸部の部室にあるのはそれだけです。あとは部屋に置いてある分に関してはわかりません。神宮寺さんなら知っているかもしれませんけれども」
「まあそうなの?では明日にでもまた改めて伺ってみるわね。神宮寺さんも文芸サークルの会員なのかしら?」
「いいえ、でもよく遊びに来てました。特にきまったサークルに所属はしていないようです」
「そうなの。ありがとう」
安奈達はそのまま資料を抱えて部室をでると、サロンに足を向けた。
サロンに到着すると早速と言わんばかりに安奈と瑞樹は資料を読んでいく。それはごく一般的な吸血鬼に関する資料で、特にめぼしいものはない。
「特に変わったところはないわね」
「そうね、一般的な吸血鬼の伝承に思えるわね。もっとも各地の物が集められているのは流石我が学院の生徒と言った感じだけれども」
「特にこのラミアのことが気になっていたみたいね。自室にはもっと詳細な資料があるかもしれなくってよ。明日神宮寺さんのところにもう一度行って資料を頂きましょう」
「そうね」
安奈は資料の中の一枚をひらひらと振るって見せる。
それには上半身は女性の姿をしているが、下半身には蛇の姿を持った美しい女性の姿が描かれていた。
「青年の血を好むとあるけれども、一説によれば少女の血を好むともあるみたいね。まあ、吸血鬼の伝説なんてそんなものよね。エルゼベエト・バートリなんてその典型だわ」
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