女子高生探偵小南安奈事件簿
002
安奈が軽く調べ上げたところによると、溝口詩世は中等部の三年生で文芸部に所属していたらしい。
目立つような子ではなく,どちらかと言えば大人しい陰に隠れるような子だったらしい。
つい最近までは、だ。
そんな彼女がここ数週間まるで蕾の花が開いたかのように急に華やかになったというのだ。
まるで人が変わってしまったように。
周囲の友人は驚いて彼女にどうしたのかと質問を当然投げかけたらしいのだが、彼女は「人生観が変わったの」とだけ言ったらしい。
安奈はここに何かがあるのだと思い、さらに調査を進めていくことにした。
そのころになると、サロンの片づけを終えた瑞樹も合流し、二人で捜査を開始することになった。
「人生観が変わったって相当よね、瑞樹はどう思う?」
「そうね、ちょうど長期休みが終わったばかりだし、春休みの間に何かあったと考えるのが普通かしら。そうなると、ご実家で何かあったのではないの?そうであったなら私たちにはお手上げよ」
「あら、彼女今回の春休みはご実家に帰らずに学院に残っていたそうなのよ」
「まあそうなの?」
「ええ、だから起きたとしたらきっと学院の中でなんだわ」
「そうね、そうなってしまうわね」
「まあ、瑞樹は学院の中で何かが起きるのはいやなの?」
「それはそうよ。私は平和主義者なんですもの」
「そう?まあいいわ。とにかくもう少し聞き込みをしましょう」
「わかったわ」
安奈と瑞樹は中等部の溝口詩世のクラスを訪ねることにした。
学院の有名人、憧れの先輩がやってきたということでざわめく教室の中で、安奈と瑞樹は花が飾られた机を見て十字を切る。
キャーキャーとはしゃぐ女学生の中に一人、沈痛な面持ちを湛えた子を発見し、安奈と瑞樹は近づいていく。
「ごきげんよう。少しお話をお伺いしてもよろしいかしら?」
「話しって?」
「溝口詩世さんのことについてなのだけれども、貴女はご友人かしら?」
「……はい」
口の重い少女たちに、安奈は柔和な笑みを向けて、心をほぐすように優しく声をかけていく。
「今回の事、本当にお悔やみ申し上げるわ。私も同じ学院の同志として悲しいと思っているの。だからこそ、今回の事件の真実を明かしたいと思っているのよ。良ければ溝口詩世さんについてお話をお伺いすることは出来るかしら?」
「私たちが話すようなことなんてないです。警察にすべて話しましたし」
「そう……でも何か思い出すことはなくって?最近になって溝口詩世さんは随分と人が変わったようになってしまったと聞いたわ。そこに心当たりはない?」
「刑事さんにも聞かれましたけれど、特にありません」
その言葉に安奈は手を頬にあてて首をかしげる。
「春休みが終わった時にはもう人が変わったようになっていたのでしょう?何か話は聞いていないのかしら」
「人生観が変わったとしか聞いてないんです」
「人生観が変わったというのは大変な何かが起きたと思うのだけれども、一緒に春休みに残っていた方はいらっしゃらないのかしら?」
「私が一緒に残ってましたけど、ある日突然華やかになったんです。それまでは今までと一緒だったのに…」
「貴女、お名前は?」
「神宮寺由愛です」
「そう、神宮寺さん。ある日突然華やかになったというのは、お化粧をしたり髪型を変えたりということなのかしら?」
「いいえ、そういうのではなく、雰囲気がまるで変ってしまったんです。本当に花が開いたっていう感じで、顔つきも変わったような感じで…」
「顔つきまで?それは随分な事ね」
「そうなんです。だから驚いちゃって。警察の方にも言ったんですけど、信じてはもらえませんでした」
「それは、そうでしょうね。でも私は信じるわ。だってこんなことが起きてしまったぐらいですもの。何が起きても不思議じゃないわ」
「先輩……」
「安奈の言う通りね。あんなまるで吸血鬼に襲われたみたいな死に方なんて尋常じゃないもの」
その言葉に神宮寺は怯えたように震え、目は挙動不審な心を表すかのようにあちらこちらを彷徨わせている。
「まあ、なにか思い当たる節でもあるのかしら?」
「そうなの?」
「いえ、ただ文芸部の次回の小説の資料として吸血鬼の資料を集めていたっていうだけです」
「そう?本当にそれだけかしら?」
「はい」
「そうなの」
安奈は考え込む様に再び頬に手を当てると、今度は瑞樹が神宮寺の机にそっと手を置いて優し気に笑みを向ける。
「その資料というものを見せていただくことは可能かしら?」
「え、あ……はい」
「ありがとう。後ほど取りに伺いますわ」
「はい…」
今日はもう聞きだせることがないと判断して、安奈と瑞樹は教室から出ていく。その後ろ姿を神宮寺が暗い瞳で眺めていたことを二人は気が付かなかった。
目立つような子ではなく,どちらかと言えば大人しい陰に隠れるような子だったらしい。
つい最近までは、だ。
そんな彼女がここ数週間まるで蕾の花が開いたかのように急に華やかになったというのだ。
まるで人が変わってしまったように。
周囲の友人は驚いて彼女にどうしたのかと質問を当然投げかけたらしいのだが、彼女は「人生観が変わったの」とだけ言ったらしい。
安奈はここに何かがあるのだと思い、さらに調査を進めていくことにした。
そのころになると、サロンの片づけを終えた瑞樹も合流し、二人で捜査を開始することになった。
「人生観が変わったって相当よね、瑞樹はどう思う?」
「そうね、ちょうど長期休みが終わったばかりだし、春休みの間に何かあったと考えるのが普通かしら。そうなると、ご実家で何かあったのではないの?そうであったなら私たちにはお手上げよ」
「あら、彼女今回の春休みはご実家に帰らずに学院に残っていたそうなのよ」
「まあそうなの?」
「ええ、だから起きたとしたらきっと学院の中でなんだわ」
「そうね、そうなってしまうわね」
「まあ、瑞樹は学院の中で何かが起きるのはいやなの?」
「それはそうよ。私は平和主義者なんですもの」
「そう?まあいいわ。とにかくもう少し聞き込みをしましょう」
「わかったわ」
安奈と瑞樹は中等部の溝口詩世のクラスを訪ねることにした。
学院の有名人、憧れの先輩がやってきたということでざわめく教室の中で、安奈と瑞樹は花が飾られた机を見て十字を切る。
キャーキャーとはしゃぐ女学生の中に一人、沈痛な面持ちを湛えた子を発見し、安奈と瑞樹は近づいていく。
「ごきげんよう。少しお話をお伺いしてもよろしいかしら?」
「話しって?」
「溝口詩世さんのことについてなのだけれども、貴女はご友人かしら?」
「……はい」
口の重い少女たちに、安奈は柔和な笑みを向けて、心をほぐすように優しく声をかけていく。
「今回の事、本当にお悔やみ申し上げるわ。私も同じ学院の同志として悲しいと思っているの。だからこそ、今回の事件の真実を明かしたいと思っているのよ。良ければ溝口詩世さんについてお話をお伺いすることは出来るかしら?」
「私たちが話すようなことなんてないです。警察にすべて話しましたし」
「そう……でも何か思い出すことはなくって?最近になって溝口詩世さんは随分と人が変わったようになってしまったと聞いたわ。そこに心当たりはない?」
「刑事さんにも聞かれましたけれど、特にありません」
その言葉に安奈は手を頬にあてて首をかしげる。
「春休みが終わった時にはもう人が変わったようになっていたのでしょう?何か話は聞いていないのかしら」
「人生観が変わったとしか聞いてないんです」
「人生観が変わったというのは大変な何かが起きたと思うのだけれども、一緒に春休みに残っていた方はいらっしゃらないのかしら?」
「私が一緒に残ってましたけど、ある日突然華やかになったんです。それまでは今までと一緒だったのに…」
「貴女、お名前は?」
「神宮寺由愛です」
「そう、神宮寺さん。ある日突然華やかになったというのは、お化粧をしたり髪型を変えたりということなのかしら?」
「いいえ、そういうのではなく、雰囲気がまるで変ってしまったんです。本当に花が開いたっていう感じで、顔つきも変わったような感じで…」
「顔つきまで?それは随分な事ね」
「そうなんです。だから驚いちゃって。警察の方にも言ったんですけど、信じてはもらえませんでした」
「それは、そうでしょうね。でも私は信じるわ。だってこんなことが起きてしまったぐらいですもの。何が起きても不思議じゃないわ」
「先輩……」
「安奈の言う通りね。あんなまるで吸血鬼に襲われたみたいな死に方なんて尋常じゃないもの」
その言葉に神宮寺は怯えたように震え、目は挙動不審な心を表すかのようにあちらこちらを彷徨わせている。
「まあ、なにか思い当たる節でもあるのかしら?」
「そうなの?」
「いえ、ただ文芸部の次回の小説の資料として吸血鬼の資料を集めていたっていうだけです」
「そう?本当にそれだけかしら?」
「はい」
「そうなの」
安奈は考え込む様に再び頬に手を当てると、今度は瑞樹が神宮寺の机にそっと手を置いて優し気に笑みを向ける。
「その資料というものを見せていただくことは可能かしら?」
「え、あ……はい」
「ありがとう。後ほど取りに伺いますわ」
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コメント
門脇 賴
神宮寺さんは何かを知っているんですね。何か怖そう!