ダンジョンを造ろう

田中隆司

ダンジョンマスター

 頬を何かに舐められる感覚で目が覚めた。
 気がつくと周りは明るくなっていて、目の前にいるシロがはっきりと見える。
 何の気なしにシロの頭を撫でて起き上がる。
 まだ頭痛がするけれど、気にするほどのものではない。
 それより今はしなければいけないことがある。
 私はダンジョンマスターになったらしい。
 実感はわかないけれど理解はできた。
 どうやら光っていた球体がダンジョンの心臓部……つまりダンジョンコアらしい。
 そしてこれと私の──ついでにシロの──魔力が同期している。
 ダンジョンコアは魔力の溜まり場で結晶化するほどの魔力が凝縮されて生まれた存在らしい。
 これは一種の生命体らしく、自分が安全に大きくなるために知能の高い生き物を呼び出し、自分の魔力を与えより多くの魔力を集めさせる。
 呼び出された生き物──つまり私とシロ──はダンジョンコアから一定以上はなれると死ぬ。
 もちろんダンジョンコアが壊れても死ぬ。
 そしてダンジョンコアは貴重なもので人間はおろか野性動物から魔物まで奪いに来る。
 そして肝心なことがもうひとつ。
 ダンジョンコアは外と繋がってなければいけない。
 そしてその繋がりは広ければ広いほど、多ければ多いほどいい。
 これはダンジョンコアが空気中の魔力を吸わないと生きていけないから。
 地中に魔力があるにはあるけどほとんど吸収できないらしい。呼吸みたいなものだと思えばいい。
 今私たちがいるのは地中にある空洞。
 ここにある魔力は全てコアが吸収したあとだから酸素が無いに等しい。
 しかしダンジョンコアに知能と呼べるものはない。
 しかし何故か知識は豊富に持っているらしい。
 魔力の中にある記憶らしいけどそこら辺はあまりわからなかった。
 とりあえずの急務は外に繋がる穴を掘ることだ。

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