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未来をやり直します

茄子

3学年12月

 12月半ばにあるパーティー、それは冬期休暇前の建国記念日を祝うものになります。学生だけで行われる夜会のようなもので、ダンスパーティーのようなものですが、立食パ-ティーも兼ねております。要するに建国記念日に乗じたお祭り騒ぎでございますわ。
 本来ならば大人は教師だけのこの会場で私を糾弾していただきたかったのですが、予定が変わりました。
 お祭りは学院の大講堂で行われまして先々月から実行委員会が準備を行ってくださっております。
 私は王太子妃になるものとしての執務や公務がありましたので実行委員にはなりませんでしたが、友人の皆様は実行委員になっていらっしゃいました。
 おかげで、予定が変わった糾弾イベントも事前に組み込んでいただけることが出来たのでございます。
 けれども、そのイベント前の開幕のダンスでアルベリヒ様はやらかしてくださいました。ファーストダンスを私とではなく、フランシーヌ様の手を取ったのでございます。
 そしてそのまま3曲連続で踊ったお2人は、見つめ合ったままダンスホールから離れ二人で談笑を始めたのです。そう、私をダンスに誘うことなく、二人で談笑を始めたのです。
 これは、私が糾弾する条件として十分なものと言えるでしょう。私はこの場で恥をかかされたようなものなのでございますからね。
 あんまりな行動に、思わず手にしていた扇子を力の限り握り締め、ミシリと音が鳴ったことで我に返ることが出来ました。
 周囲の方々もあまりの行動にあきれたり、私に同情の視線を向けたりなさっております。
 けれども今はまだ我慢の時でございます。イベントの進行を邪魔してはいけないのですから、私の出番まで耐えなければなりません。けれども、このような仕打ちはあんまりなのではないでしょうか。
 ここ最近、お2人の仲が親密になっていることは感じておりましたが、こんなにも正妃になるべきと今は認識されている私をないがしろにするということは、隣国をないがしろにすることと同じだという事を理解しているのでしょうか?
 ああ、この場にスチュアート兄様やセオドア兄様がいらっしゃらなくてよかったですわ。いらっしゃったら今ごろアルベリヒ様の首と体が離れてしまっていたことでしょう。
 婚約者がいるのにその方以外とファーストダンスを踊ることはできませんので、私はダンスホールに出ることもできず、壁の花となって友人や他の学生とおしゃべりに興じるしかありません。
 広い会場の天井には神と天使の絵が描かれ、シャンデリアの輝きが光を反射して美しく輝いております。
 男子生徒は燕尾服で身を包み、女生徒は華やかなドレスを着て美しく舞い踊っているのです。
 そんな様子を眺めながら、私は今日のために誂えた悪役令嬢らしい、真っ赤なドレスを着てこの場に参上いたしました。
 ベルベッドの生地には絹糸でスズランの刺繍が施されております。クリノリンスタイルのドレスではなく、隣国で主流のエンパイアスタイルのドレスを着てきているのは、私の覚悟故でございますし、ロングトレーンには隣国の王家紋章が刺繍されており、私が隣国の王位継承者の資格を持っているということを示しております。
 つまり、私は今この国の大公辺境伯令嬢としてではなく、隣国の帝の姪姫としているのだと周囲に知らしめているのです。
 それなのにこのような扱いを受けているということは、王太子自らが隣国をないがしろにしていると言っているようなものととらえられてしまいます。
 そして時間がたっていよいよ私の出番がやってまいりました。
 私はダンスホールの中央に立ち、大きな声でアルベリヒ様とフランシーヌ様の名を呼び、この場に来るように呼び出します。
 音楽が止み、人々のざわめきだけが耳に響く中、二人は私の前にやってまいりました。

「お呼び出し致しましたのはほかでもございません。私は今この場で皆様を証人として、アルベリヒ様との婚約を破棄させていただきたく存じます!」

 私の宣言に、アルベリヒ様は目を大きく開かれ驚きのあまり口を開けて私を見つめていらっしゃいます。
 予定通り私の後ろには友人4人がいらっしゃいますので心強いですわね。

「理由はお判りになりますでしょう、私をこのようにないがしろにされていらっしゃるのですから、婚約破棄を申し出る権利が私にはございます。国王陛下にもこの度のことはお伝えしております。最後まで私の心が変わらないのであれば承認するとおっしゃっていただいております。私は何度もお2人に申し上げてまいりました。身の程を弁え、マナーをお守りくださいと。なのにお2人は全く行動を改めることなく、今もこうしてわたくしに恥をかかせていらっしゃいます。私は今日この場で最後の覚悟を決めました。繰り返し申し上げますが婚約を破棄させていただきます!」
「ふざけるな!そんなことが許されると思っているのか!」
「国王陛下にご承認頂いると申し上げました」
「俺の正妃になるためにお前はいろいろしていたし文句も言ってきたんだろう!」
「いいえ、私は与えられた責務を全うしていただけでございます」
「フランシーヌに嫌がらせを繰り返していたのは彼女を排除しようとしていたからだろう!」
「ええ、身の程を弁えない愚か者など王族に不要と思っておりました。けれども一切直らないご様子にほとほとあきれ果ててしまいました。アルベリヒ様もアルベリヒ様です。側妃にしたいがために婚約の無効まで行わせて、そのことでどれだけの人が傷ついたかお分かりになりますか?メルセデス様は心の底からフランシーヌ様を愛していらっしゃいますのに、それをアルベリヒ様は奪ってしまわれたのですわ」
「自分が浮気をしているからと言って俺たちを責めるの気なんだろう!」
「セオドア兄様の事でしょうか?それでしたらこの件に関係はございませんわ。あえて申し上げるのでしたら、このような扱いを受けていると兄様や隣国のお爺様達が知ったらお怒りになってこの国に攻め入って来るであろうということでございますわね。お分かりになりませんか?私はこの国の国民であると同時に、隣国の帝位継承権を持つ帝の姪姫でもありますのよ」
「そんなの詭弁だ!自分を正当化しようとしているだけだろう!浮気をごまかすために婚約破棄など言っているだけだ!俺は認めない!」
「いいえ、婚約破棄をしていただきます。この学院の皆様が承認でございます。私がこの数か月どれほどないがしろにされてきたか、何度抗議や実力行使を舌かをご存知です。そして、私がフランシーヌ様にされた暴力行為も、また皆様ご存知のことでございます」
「暴力ですって?それなら私のほうが受けてるわ!」
「暴力と無礼討ちを混同しないでいただけますか?私は貴女に何度も侮辱されたからこそ無礼討ちをしていただけにございます。それに、私は頬をぶった程度で翌日には腫れも引く程度の物でございましたでしょう?けれどもフランシーヌ様は私に対して数日腫れが引かないほどの暴力を振るわれました。必要なら医師の診断書をお見せいたしましょうか?」
「そんなの貴女ならいくらでも偽造できるんじゃないですか?意味ないじゃないですか!」
「では証人はいかがでしょうか?泥や雨水まみれの私の姿や、ドレスの破かれた姿、頬の腫れた姿は多くの生徒が目撃しております」
「そ、それなら私だって」
「ですから、翌日には引いていた程度の怪我だったのでございましょう?汚れたドレスもあったかとは思いますが、私と比べれば大したものではございません」
「それでも暴力に変わりはないだろう!」
「ではアルベリヒ様、暴力というのならフランシーヌ様の行ったことも暴力とお認めになるということでございますわね」
「そ、それは…」
「アルベリヒ様、私のは正当防衛です!」
「そうだ。先に手を出したのはセラフィーナだろう」
「無礼討ちと何度言えばいいのですか?上位の貴族が下位の貴族や、平民に対して行うことの許された行為でございます。責められるいわれはございません」
「階級が上だからって暴力をふるう理由にはなりません!」
「では下位貴族の貴女が私に暴力をふるったのも責められて当然でございましょうね」
「だから正当防衛だって言ってるじゃないですか」
「フランシーヌ様の方から手を出されたこともございましたわよね」
「それは…侮辱されたからっひどいことを言われたから、かっとなって」
「上位の者に暴力をふるって只で済むと思っていらっしゃるのでしょうか?」
「私は、正妃様にだって認められたアルベリヒ様の側妃です!愛されている存在なんですから立場は対等なはずです」
「対等?おふざけになられないでいただけますかしら?正妃になるべき私と、正妃様の後ろ盾を得たからと言ってまだ子爵令嬢でしかない貴女とでは立場はまるで違いますのよ」
「婚約破棄などしたら俺は王太子の座を落とされることになる!冗談じゃない!俺は王太子となるべくして生まれて来たんだ!」
「王太子としてしか見られないことが嫌だった、自分だけを見てくれるフランシーヌ様に惹かれたとおっしゃったのに、王太子の座にしがみつく姿はみっともないとはご自身で思われませんの?」
「なんだと?無礼だぞ!」
「無礼はどちらです。私はセラフィーナ=リュンヌ=アルタ=アリスメンディ。隣国の帝位継承権を所有する女にございます!今此処には、隣国の姫としても存在しているということはこのドレスを見て気が付かないのでございますか?この婚約破棄は、もう決定事項なのでございますよ。これ以上私を愚弄するというのであれば、私は隣国の姫として、この国に宣戦布告をしても良いのでございます!」

 この発言に、固唾をのんで見守っていた皆様がザワリと声を上げられました。戦争となれば貴族であっても無傷ではすみませんので当然でございますね。
 しかも亜人や妖しい術を使う人間との戦争ですので、この国に勝ち目はあまりないものと思われます。

「戦争か婚約破棄か、答えは明白でいらっしゃいますでしょう?王太子でいらっしゃるのならば、国を守るために動くのは当然でございますものね」
「………こ、婚約破棄を……俺は認めない!」

 今度こそ、大きな声で皆様が悲鳴のような声を上げられました。
 王太子が国よりも自分の地位を取ったのでございます。当然この時点で王太子として失格だと言いますのに、何を考えているのでしょうか?

「では、非常に残念ですが……私は帝の姪姫としてこの国に宣戦布告を」
「まって!」
「なんでしょうか、フランシーヌ様」
「ねえアルベリヒ様、考え直しましょう?私がいるんですからセラフィーナ様はいらないじゃないですか。私が正妃として公務も頑張りますし公私ともにアルベリヒ様を支えますから、ね?戦争なんてみんなが傷つくことをしちゃだめですよ」
「私との婚約がなくなれば、王太子ではなくなりますけれど?ただの家臣としてその妻となることになりますわね」
「そんなことはありません。アルベリヒ様以上に王太子に相応しい人はいませんから、婚約がなくなったって王太子であり続けます。私はその隣で正妃となるんです」
「フランシーヌ」
「大丈夫ですよアルベリヒ様。私が付いています。婚約破棄をしましょう」
「……わかった。婚約破棄を認めよう」

 その言葉に、私はにっこりと笑みを浮かべて扇子をパシリと手に当てて鳴らします。その合図とともに会場の扉が開き、騎士がなだれ込んできて2人を拘束しました。

「なっなに!?」
「無礼者!俺を誰だと思ってる!離せ!」

 お2人はわけのわからないまま拘束されて暴れていますが、騎士の力に敵わず拘束を解くことはできないようです。

「残念だがそれは出来ない」

 そう言って入っていらっしゃったのがセオドア兄様と国王陛下でいらっしゃいます。お2人は会場の度とに待機していただいてもらっておりました。
 この婚約破棄の証人と、万が一の宣戦布告の証人としてなるべく、このお2人の登場が必要でございますものね。

「この婚約の重要性はお前に何度も話したはずなのに、セラフィーナ姫をないがしろにし責め立て愚弄するような行いをしたお前を王太子の座につかせ続けるわけにはいかない。また、このままでは戦争の火種になる可能性もあるお前を拘束し、王族の罪人が閉じこめられる宮に監禁することとなった。喜べ、そちらの娘も一緒に暮らすことは許してやる。結婚も認めてやろう、子供が生まれればその子供は外に出してやる」
「父上っなにをいっているのですか!」
「監禁ってなによ!私はっ」
「お待ちください!」

 ここでメルセデス様が前に出てフランシーヌ様をかばうように国王陛下との間に立たれます。これも実は演出のパターンの一つなのです。

「フランシーヌは確かに愚かかもしれません。けれども、彼女は純粋なのです。アルベリヒ様に甘い言葉を囁かれ、惑わされていただけなのです!彼女が罪を受けるというのなら、どうか私にも罪をお与えください。フランシーヌを止められなかったのは私の責任でもあるのです!」
「其方は被害者であろう」
「いいえ!私はフランシーヌを引き留めることが出来なかった。ですから!」
「……よかろう。ではアルベリヒの宮とは別の宮で二人を監禁することとする」
「メルセデスなんで?」
「俺はフランシーヌを愛しているんだ。今も昔もずっと愛してる。婚約をもっと早くにしておけばよかったと何度も後悔してたんだ。フランシーヌが監禁されるというのなら、俺も一緒に監禁されるよ」
「メルセデスっ…ごめんなさい、私っ私は……アルベリヒ様の言葉に惑わされて…ああっ私も愛してるわ、メルセデスっ」

 簡単ですわね。つり橋効果というものでしょうか?
 けれど、これで予定通りにアルベリヒ様お一人の監禁という結末にたどり着くことが出来ました。
 フランシーヌ様とメルセデス様も監禁されますが、数年もすれば恩赦を与えられて出ることが可能になるでしょう。そうすれば、否かに平民としてでも二人でひっそりと暮らすとメルセデス様はおっしゃっておりましたわね。

「裏切ったな!フランシーヌ!俺を愛しているといったくせにお前も俺を見捨てるのか!ふざけるな!俺が王太子だ!俺が国王になるんだ!すべてを手に入れるのは俺だ!」

 暴れるアルベリヒ様をそのまま騎士の方々が連れていかれるのを見送って、メルセデス様とフランシーヌ様は自分の足で騎士に連れられて会場を出ていかれました。
 そして国王陛下が今回のことが決められたイベントで会ったことを告げ、改めて建国記念日を祝うパーティーを再開するように宣言し、会場には再び音楽が鳴り響きました。
 友人たちが率先してダンスを始め、一組、また一組とダンスに興じる方々やお話しに戻る方がが出てきました。

「国王陛下、建国記念日のパーティーは王宮でも行われておりますのに、今回はありがとうございました」
「なに、このぐらいはかまわないさ。儂はそなたの顔に弱いのだからな」
「お母様に似ているからですか?」
「ああ。しかしそろそろ戻らないと怒られてしまうな。パーティーを楽しむのだぞ」

 そう言って王宮に戻っていった国王陛下を見送って、残ったセオドア兄様を見上げます。

「終わりましたわね」
「終わったな」

 数年かけてこの日を待っておりました。私がお母様から本当の意味で解放されるこの瞬間。ですから、ここからは私が失った未来を生きる番でございますわ。
 そう、私はこれからを手に入れるのです。

「セオドア兄様」
「なにかな?」
「私は花人の亜人。魅了の力を持っておりますわ、セオドア兄様もその力で私を愛していると錯覚しているのではないのでしょうか?お母様はずっとお父様に片思いをしているとおっしゃっておりました。あんなに相思相愛に見えていたお2人なのに、お母様は片思いだとおっしゃっていたのです。ですから、私もそうなるのではないかと思えてならないのです。セオドア兄様、私の魅了の効果で私を愛していると錯覚しているとしたら、どうなさいますか?」
「そんなのどうでもいいな」
「え?」
「魅了されていようがなんだろうが、俺はセラフィーナを愛している。……ところで、そんなことを言うってことは、俺を愛してくれてるってことでいいのかな?」
「燃えるような恋ではありませんわ。身を焦がすような愛ではありませんわ。けれども、私はセオドア兄様を愛しているのだと思っておりますわ。家族愛なのだとずっと思っておりましたけれど、きっといつの間にか私はセオドア兄様を愛していたのでしょうね」
「それでいいよ。燃え上ったり身を焦がしたら、いつか燃え尽きてしまうから、春の暖かな日差しのようなゆっくりとした時間を2人で穏やかに過ごす愛でいいじゃないか」

 セオドア兄様はそういうと私の手を取ってダンスホールに向かっていきます。自然と人の波が割れ、ホールの中央に私たちは立ち、腰に手を添えられダンスを始めます。
 他の誰よりも気の合う相手とのダンスは心地よく、何曲でも踊っていたい気分になります。
 そのまま3曲続けて踊り、私たちは皆様に拍手で祝福されました。
 そして私たちは皆さまが気を利かせてくださったのか、誰もいないテラスに2人っきりで出て、青々とした空を見上げます。

「お母様の呪縛はこれで終わったのでございますわね。お父様やお爺様、伯父様はまだ囚われているのでしょうけど、私はもうお母様の呪縛から逃れることが出来ました。前回の未来は自害という結末になってしまいましたが、今回はこうして自由を手に入れましたわ」
「自由かな?」

 そう言われて、セオドア兄様に背中から抱きしめられて、耳元に口づけをされてしまいました。

「俺は蜘蛛人だぞ。愛しい獲物は捕らえて離さない」
「ふふふ、そうですわね」
「信じてないのか?」
「いいえ。セオドア兄様、私はこう思っているのです。陽の差し込む温室で、植物と本に囲まれて、ベッドの上で日がな一日本を読んでセオドア兄様をお待ちするのですわ。それこそ、花人らしい愛され方だとおもいませんか?」
「なるほど。大きな花かごを用意しよう、そこに閉じこめて、俺だけのために咲き誇る花になってくれ」
「そうですわね。それはきっと素敵ですわ」

 うっとりと目を閉じれば、顎を持たれて顔を飲む気を変えられて、今度は唇に口づけられました。軽いリップ音を立てて何度か口づけされ、解放されたところで目を開ければ、少し照れた様子のセオドア兄様の顔が目に入って、私は思わず笑ってしまいました。

「笑うなよ」
「だって、セオドア兄様のそんな顔初めて見ましたもの。私にとってセオドア兄様は頼りがいのある完璧なお方ですのよ」
「そうなるように頑張ってたんだよ。これからは情けない俺を見ることになるだろうけど、愛想をつかすかな?」
「わかりませんわね」
「そこで愛想をつかすわけはないと言わないあたりがセラフィーナらしいな。……学院を卒業したら一緒に国に帰って結婚しよう。俺たちは亜人だから長い時間を一緒に過ごそう。喧嘩もするかもしれないし、心が離れそうになることもあるかもしれない。でも、俺は絶対にセラフィーナを手放さない」
「私も、逃がしませんわ。そんなことになったら私の毒で殺してしまうかもしれませんわよ」

 クスクスと笑い合い二人で手を取り合って会場に戻れば、のぞき見していた友人たちと目が合って思わずみんなで大笑いしてしまいました。
 無礼講の席ならではの事ですが、普段でしたらはしたないと言われてしまいますわね。

 あしたから始まる冬期休暇の間、私は婚約破棄の正式な手続きをした後に隣国に一度赴き、セオドア兄様との婚約を結ぶことになります。
 きっとお爺様と伯父様は驚かれるでしょうけれど、結婚は盟約にないと言ってしまえばきっと納得してくださいますわ。だって私のことをかわいがってくださっていますもの。
 この国の婚約と違って、隣国の婚約は番の誓約となっておりますので一度誓約を結んでしまえば違える際は命を持って贖うという重いものになっております。
 けれどもそれで構いませんわ。だって私はセオドア兄様を手放す気は一切ないのですもの。

「おめでとうございますセラフィーナ様。望みが叶ったこととても喜ばしく思っております。それで私もお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「どのようなことでしょうか?ライサ様」
「隣国に行かれる際に、侍女としてでもいいのでお供させていただけませんでしょうか?」
「え!?」
「えっ!ずるいです!私もそうしたいってお願いしようとしてましたのに!」
「イザベル様はまだ学院生活が残っておりますでしょう」
「ぶぅ」
「私とフェリーチェ様は婚約者もおりますのでお供することが出来ませんから羨ましいですわね」
「ええ、本当に」
「その、よろしいのですか?隣国に行けば簡単にこちらの国には戻れませんのよ?」
「構いませんわ。もとより研究者にでもなろうと思っておりましたし、亜人という種族に興味も出てきたところですのでちょうどよいですわ。それに、侍女としてもそれなりにセラフィーナ様の補佐が出来ると思いますわ」
「それは確かに、ライサ様がいらっしゃると私としてはとても助かりますけれども」
「では末永くよろしくお願いいたします」
「私もっ私も学院を卒業したら隣国に行きますから侍女にしてください!」
「イザベル様、貴女は長女でいらっしゃいますでしょう?お家の方はどうなさいますの?」
「妹もいますし私よりもずっと人気なんですよ。私は婚約者はいませんし、セラフィーナ様にお仕えできるなら知らない土地だってかまいません!」

 必死な様子のイザベル様の様子に私たちはまた笑って、そしてパーティーを楽しんでその日を終えることが出来たのです。

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