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未来をやり直します

茄子

3学年8月

 暑い日が続く中、驚くべきことが国王陛下から伝えられました。それは私とアルベリヒ様との結婚を早めるということでございます。
 次の休み、冬期休暇の間に結婚式を執り行うというのです。そもそも、学院と卒業してすぐの結婚の予定でしたので多少早まっただけではございますが、この早まった理由が側妃を迎えるためというのですから笑うしかございません。
 フランシーヌ様とメルセデス様との婚約は、承認されておりましたが、無効ということになったのだそうです。つまり、婚約していた事実すらなかったという形で、側妃として召し上げるつもりなのでございましょう。
 王太子の結婚式ではありますが他国の方々を呼ぶ予定もなかったので、式場の予定さえ押さえることが出来れば何とかなるのでしょう。
 私が不服を言えるはずもなく、私は早まった結婚式の準備に追われることになったのです。
 春先用にデザインされていたウエディングドレスは冬用のものに変えなければなりませんので仕立てを始めていたというのに、それを破棄してデザインから考え直さなければならなくなってしまいました。
 もっとも、そのことはまだいいのです。問題は、私の目標である婚約破棄の予定をかなり早めなければならない、つまり2学期中にどうにかしなければならないのです。
 世間の同情票は私に集められておりますし、なかったことになったとはいっても、フランシーヌ様とメルセデス様が婚約を一度したという話しはお茶会や夜会を通じて広まっております。誰も無傷というわけにはいかないのでございます。
 そんな中、メルセデス様から私への個人的なお茶会のお誘いがありました。
 男女二人っきりのお茶会というのは親族でもない限り好まれせんので、私は場所を人が良くいる王宮のカフェテラスに指定してお受けいたしました。
 噴水の水音で会話内容はあまり聞こえませんが、人目がありますので不義を働いているわけではないと証人がいるいい場所としてよく使われる場所です。

「お話しがあるということでしたが、いったいどのようなご用件なのでございましょうか?」
「まず一つ確認させてください。セラフィーナ様は、記憶がありますか?」
「……何の記憶でございましょうか?」
「前回の記憶です」

 この言葉に、メルセデス様も時間を巻き戻したのだということがわかりましたが、私がそれを認めるにはまだ判断材料が足りませんね。

「前回といいますと?2人でのお茶会ははじめてのはずでございますわよね?」
「前回の未来の記憶です」
「……どうしてそんなものがあると思ったのでしょうか?」
「行動が前回とあまりにも違いすぎます。前回のセラフィーナ様は悪く言えば無気力な方でした。アルベリヒ様に従順で、目立ったところのない可もなく不可もない理想的な伴侶を演じていらっしゃいました。もちろんフランシーヌに苦言を言うようなこともありませんでした。だから以前から思っていたんです。もしかしたら俺だけじゃないかもしれないって。そうして観察しているうちに確信しました、セラフィーナ様は前回の記憶があるんだろうって。今回俺は前回の通りフランシーヌと婚約しました。でも無効にされてしまった。俺は前回の事故でフランシーヌを奪われて、狂いそうなほど苦しみました。そして今も、アルベリヒ様にフランシーヌを奪われると思うと、今にも気が狂ってしまいそうなのです」

 終始笑顔で、けれど低く冷たい声でそう語るメルセデス様にぞっと背筋に冷たいものが走りました。愛する人を奪われるというのはこんなにも人を狂気に走らせるのでしょうか。

「セラフィーナ様がアルベリヒ様との婚約をよく思っていないのは有名な話です。でも、政略結婚である以上どうしようもない、今来ている大使は従兄弟だそうですね。その人と実は恋仲だったんじゃないかっていう噂もあります。だから協力してほしいんです」
「何を協力するというのですか?」
「婚約破棄を狙っているんでしょう?お茶会でのうわさ話や夜会での噂話を統合して考えたらその結論に至りました。だから、俺もそれに乗らせてください。セラフィーナ様がフランシーヌにつらく当たったことにより、正妃としての資質の欠如を理由に婚約破棄をするつもりなら、それに加えて冤罪を用意してほしいんです。冤罪を公の場で犯したとなれば、フランシーヌとアルベリヒ様は無傷ではいられない。側妃に迎え入れるという話しも難しくなるでしょう。だからそこで俺はフランシーヌを手に入れます。弱っているときに手を差し伸べられたら人間ってその人に心を許すものでしょう?だからいろいろ考えたんです。いままでのような苦言だけじゃ足りない、実力行使をするべきです」
「ともうしますと?」
「お茶会に誘わない、無視をする、持ち物を壊す、持ち物に無視などを混入させる、突き飛ばす、水をかけるなどですね」
「物語に出てくる悪役令嬢の行動ですわね」
「はい。そしてその中で決定的なもの、殺人を冤罪のテーマにしようと思います」
「なるほど」
「その行為は俺がやります。殺さないようにナイフで切り付けて、でもフードを被って顔がわからないようにします」
「失敗したらどうしますの?」
「自害します」

 決意は固いということでございますね。
 どうしたものでしょうか。受けても良いのですが、殺人未遂とまでなると流石に気が引けてしまいますわ。

「一つお伺いしたいのですが、どうしてそこまでなさるのですか?」
「今度こそ、絶対に俺のものにするためですよ」

 終始笑顔のメルセデス様の眼には狂気が宿っている気がしてまいりました。いいえ、きっと気のせいではないのでしょうね。

「わかりましたわ。私は嫉妬によってフランシーヌ様に嫌がらせをするということでよろしいですわね。もっとも、政略結婚で望んでいないのにとなると嫉妬という理由付けが少し甘くなってしまいますが」
「そんなの簡単ですよ。政略結婚なのにフランシーヌだけいい思いをするのが気に入らない、それで十分じゃないですか」
「そうなのですか」

 人間の感情というものは複雑で単純なものなのかもしれませんわね。

「今後お話しはセオドア兄様にしていただけますか?私とあまり一緒に居れば怪しまれてしまいますもの。セオドア兄様とは本の趣味があったとでも言っていただければいいかと思います。セオドア兄様は無類の愛読家でらっしゃいますもの」
「そうします」

 そこでメルセデス様と別れて王太子妃宮に戻って自室のソファに座って多少だらしなくぐったりとクッションによりかかります。
 思いがけない展開になったものです。まさかメルセデス様も時間を逆戻っているとは思いませんでしたが、思えば確かに私の行動での影響以外ででも前回とは違う行動をとっていたような気がいたしますね。
 それであんなにフランシーヌ様と言い合いになったりしていたのでしょうか?前回の恨みが残っているからきつく当たってしまう、けれども愛しているから手放したくない。そんなところなのでしょう。
 恋愛感情というのは難しいものでございますね。私が理解できる日が来るのでしょうか?少なくともアルベリヒ様に対して恋愛感情を抱くことはございませんし、前回は淡い恋心をメルセデス様に抱いておりましたが、憧れのようなもので今のメルセデス様に対しては一切あのような感情を抱いてはおりません。
 私が好きになる男性ですか……。

「お邪魔するよ」
「セオドア兄様!いらっしゃいませ」
「メルセデス様に聞いたよ。夕食を一緒に食べながら話をしようか」
「え、はい。……嫌だ、もうこんな時間でしたのね」

 考え事をしている間に随分時間が経過してしまっていたようです。
 ダイニングに移動して兄様と2人で夕食を頂きます。私の宮にいるコックは以前は下働きばかりやらされていた方なのですが、味付けや飾りつけのセンスがとてもよいのです。なので私の宮に来て腕を振るっていただくことにしました。キッチンメイドも自分の仕事に自信をもって行ってくれるん子を選びました。
 2年と少しの間ですが、メイドや侍従の教育もしっかりしておりますので、質がいい使用人がそろっていると自負しております。
 今日の夕食は香草のサラダとブロッコリーと鶏肉の煮込レモン風味、玉ねぎのスープと真鯛のポワレトマトソースになっております。デザートはレモンティー味のシャーベットです。

「セオドア兄様、私色々と思うことがあるのです。恋愛感情というものはどうしてこうも複雑なのでしょうか?まだ権利欲などの陰謀のほうがわかりやすい気がしますわ。私は恋愛というものはわかりませんが、お母様は色々な方に愛されておりました。だからこそこうして遺言が守れらているのですもの。セオドア兄様はおわかりになりますでしょうか?」
「わかるよ」
「そうなのですか」
「俺はセラフィーナを愛してるから、守りたいと思うし手に入れたいと思う。でも俺は蜘蛛人だから花人との相性はあまりよくないだろう?お互いに食い合う、そんな結末になった番は多い。だから俺は、セラフィーナが幸せになってくれれば、今は十分だと思ってる。本当は俺のものになってほしいけどな」
「……からかっていらっしゃるのでは、ないのですね?」
「うん」
「セオドア兄様、私は今はセオドア兄様のことは従兄弟以上の感情はありません。だって、兄様は私にとって頼れる兄様なのですもの。それ以上のことを考えることが出来ないのです。けれど、セオドア兄様の想いを知って、無視し続けるほど私は薄情ではありません。一生懸命考えさせてください」
「いいよ。こんな時にごめん」
「いいえいいのですわ。セオドア兄様にはいつも良くしいただいてますもの」

 その後、学院が始まってから少し騒ぎになるだろうと兄様は予測なさって、その騒ぎに乗じてフランシーヌ様に嫌がらせをすることを決めました。
 細かな調整などはこうして夕食などを食べながらすることにいたしました。そうして、協力者として友人とイザベル様を仲間に引き込めないかという話しになり、私はその夜にさっそく4人にお手紙を書かせていただいたのです。
 内容は私が時間を巻き戻っていることもすべて記載いたしました。
 翌々日、4人から承諾のお手紙が届きました。もちろん、私に依頼されてやるのだろいう証拠に、送った手紙を保存しておくようにお願いはしておきましたが、皆様処分したと手紙に書いてくださってます。
 5人でお茶会を開くことになり、一週間後に王太子妃宮にご招待したとき、4人はどこか困ったような笑みを浮かべていらっしゃいました。私の顔が苦しそうだったからだそうですわ。

「お気になさらないでください。いじめなど淑女の間では当たり前にあることでございます。公になることで確かに私に傷はつくかもしれませんが、ちょうどよいのです。私は婚約者もいない3女でございますので。修道院に行くかとも考えていたのでございますよ。今回のことで家族にもいい口実が出来ました」
「ライサ様」
「私のこともどうぞお気になさらないでください。この程度のことで私との婚約を破棄する男なんて、私の方から捨ててやりますわ。それに、私の婚約者は今回の件をとても怒っておりますの。ですからどうぞご安心くださいませ」
「ロサマリア様」
「私も、今回の件を容認するような男性を婚約者にするつもりはございませんので、何か言って来たら浮気をするつもりだからアルベリヒ様をかばうのだろうと言い返してやりますわ。もっとも、あの軟弱物にはできないでしょうけれど」
「フェリーチェ様」
「私にはまだ婚約者はおりませんし、お姉様がすでに結婚為さっておりますので、私も研究員か何かになろうと思っておりましたの。ですから今回のことで傷がついても気にすることはございませんわ。もしよければ隣国に行かれるときについていきたいぐらいでございます」
「イザベル様…。皆様、ありがとうございます」

 皆様相応の覚悟を持っていらっしゃることがわかって、安堵の息を吐いて自分の表情がずっとこわばっていたことに気が付きました。

「私、酷い顔をしておりましたのね。ですから皆さまあのように苦笑なさって」
「仕方がありませんわ」

 イザベル様がそうおっしゃってくださいましたが、一応王太子妃になる身としてはこれではいけませんね。
 その後はどのような嫌がらせをするかの話し合いをしていたのですが、いつの間にか恋愛話になってしまいました。そして私が先日セオドア兄様に告白されたことをお話ししましたら、皆様興奮なさったようで私の気持ちを聞いていらっしゃいました。

「わからないのです。セオドア兄様は頼りになる従兄弟とずっと思っておりましたので、そういう感情で考えたことがありませんのよ」
「口づけしてみたいとか思ったりはしないのですか?」
「頬に口づけなら何度かしていただいたことがありますわ。けれども口は……そんな恥ずかしいことできませんわ」
「難しいですわね、では口づけされてもいいと思えるかどうかはどうです?」
「そう、ですわね…。いやではないと思いますわ」
「アルベリヒ様でしたらどうですか?」
「絶対に嫌ですわね」
「ならセオドア様にチャンスがあるのではないでしょうか?少なくともいやではないのですから、前向きに考えてみてはいかがでしょう?」
「そうですわねえ」

 お茶会は結局恋愛話で終わって、皆様が帰った後に寝室で一人セオドア兄様のことを考えてしまうのでございます。
 頼れる兄様だとずっと思っておりましたし、私に対して愛しているといったいるのは場を和ませる冗談だとずっと思っておりましたから、ああして告白されてしまうと、頭の中がセオドア兄様のことでいっぱいになってしまいます。
 そう言えば、昔結婚するならスチュアート兄様とセオドア兄様のどっちがいいかと言われたときに、私は困ってしまって泣いてしまったことがありました。あの時にはもうお母様に王太子と婚約するのだと言われていましたので、お2人を悲しませてしまうと、私の方が悲しくなってしまったのです。
 結局答え出さないままでいましたが、セオドア兄様に恋愛感情を抱けるかどうかがまずは課題でございますね。
 恋愛感情…。物語では胸が苦しくなったりときめいたりするとありますけれど、セオドア兄様にそのような感情を抱いたことはございませんよね。そうなりますと、やはり恋愛感情を抱いてはいないということなのでしょうか?
 けれど、口づけをされたらいやかと言われれば、そんなことはございませんわ。スチュアート兄様だったらどうでしょうか?……そう、ですわね。いやではありませんけれども少し抵抗感があるかもしれません。頬にするものとは違いますもの。
 そう考えますとスチュアート兄様よりはセオドア兄様のほうが恋愛対象に向いているのかもしれませんね。
 ではこう考えてみましょう。セオドア兄様がどこかのご令嬢と婚約をして結婚したとしたら、私はどう思うでしょうか?
 ………少し胸が苦しいかもしれません。仲の良いセオドア兄様を取られてしまったようで、悔しいような気もしてきます。
 スチュアート兄様でしたら心から祝福できると思えますのに、不思議なものでございますね。同じように接してきているはずなのに、どうしてこうも向ける思いが変わってきてしまうのでしょうか?
 セオドア兄様のことが私は恋愛感情的な意味で好きなのでしょうか?まだわかりませんわね。
 だって今はフランシーヌ様とアルベリヒ様のことで必死にならなくてはいけない時期なのですもの。私自身の恋愛なんて……そんな暇はありませんわよね。

「……でも、セオドア兄様の花嫁になってみたいかもしれませんわね」

 ふと口に出た言葉に、思わず笑ってしまいました。こんなことを考えるなんて、答えが出てしまったようなものではありませんか。
 もっとも一時的なものなのかもしれませんので、セオドア兄様にも他の皆様にも伝えることはしないでおきましょう。だって、ご協力いただく友人の皆様は随分私の恋愛事情に興味津々でいらっしゃいましたもの。予定をそっちのけで私とセオドア兄様のことにかかりっきりになってしまうかもしれませんもの。
 でも、物語の主人公やメルセデス様、アルベリヒ様のような燃え上がる思いとは違いますね。
 ランタンのほのかな灯りと暖かさのような、そんなささやかで小さな感情のように思えます。これは人それぞれなのか、それとも私のこの思いが恋愛感情ではなく、従妹としての独占欲なのかはわかりません。
 やはり皆様にお伝えするのはもっとよく考えてからにいたしましょう。
 今はフランシーヌ様への嫌がらせに集中しなくてはいけませんものね。
 月が変われば学院が始まります。今回のアルベリヒ様の側妃問題はもう広まっておりますし、いろいろと騒がれますでしょうが、何とか乗り越えなければなりませんね。

「少し歌を歌ってみましょうか」

 まだ眠くはありませんし、自分で自分に子守歌を歌うというわけではありませんか、こんなに月がきれいな夜ですもの、歌ってみたい気分になってもおかしくはありませんわ。

『月の昇った空を見上げ 風が吹いて木々をざわめかせる
 私の心も同じようにざわめいているわ
 未来はどこに向かっているのか見えないのだから

 運命を変えたい 明日の朝日を見たいから
 悲しみの夜は もう迎えたくないから

 先の見えない分かれ道 どちらに進めばいいかわからない

 運命に逆らい 明日の朝日を見てみたい
 その先に見える景色をあなたと一緒に見たい
 運命を変えたい 明日をあなたと歩みたいから
 泣いているあなたよりも笑っているあなたをみたい

 夜露に濡れた花は誰の涙になるのだろう
 たとえ私が死んでしまっても あなたは生き続けてほしい

 それが私の最期の望み』

 歌い終わって、ああ、と思い出す。私は自分で喉を刺した瞬間、私のために怒り嘆くであろう人々のことを考えていました。
 スチュアート兄様の事、サミュエルの事、お父様の事、お爺様や伯父様の事。そして、セオドア兄様のことを考えておりました。
 ずっと私の味方であってくれたセオドア兄様をきっといつの間にか私は好きになっていたのかもしれません。そのことに気が付かないほど自然に好きになっていたのでしょう。
 けれどやはりわからないのです。セオドア兄様が他の人と結婚するとなれば、苦しく思うでしょうけれど、奪いたいとは思わないのです。時間はかかると思いますが祝福もしようと思うに違いありません。
 まるで炎のような恋愛感情と私の恋愛感情は別のものの気がします。
 これは私が花人だからなのでしょうか?花の魔物から進化した花人は待つ恋や惹きつける愛に特化していると聞いています。だから私は燃え上がるような恋をしないのかもしれません。
 けれどもし、セオドア兄様が私のものになってくれるというのなら、手放すことは決してできないと確信できます。
 とらえて甘い蜜で閉じこめて、私だけのセオドア兄様にしたいと思ってしまうに違いありません。
 蜘蛛人の恋愛も自分の糸に絡めるように番を自分の元から離さない恋愛をするといいます。そして蜘蛛人と花人が相性が悪いと言われるのはそのせいなのです。束縛し合い喰らい合ってしまう。そしてそれが本人たちの望みの上での行為なのだと言います。
 最高に相性が悪く、最高に相性がいい。それが蜘蛛人と花人でございます。
 食虫植物の花人だと特に虫系の亜人を喰らいたい衝動にかられてしまうのだそうですから、スズランの亜人でよかったと思えてなりません。
 今度から恋愛ものの物語をもっといっぱい読むようにいたしましょう。悪役令嬢になるにあたり、いろいろ読みましたが、恋愛感情を主軸に読んではいませんでしたし、読み直すのもいいかもしれませんね。
 そういえば、この想いをセオドア兄様にお伝えしたほうがいいのでしょうか?告白されたからには返事をしなければなりませんし、お待たせしてしまうのは申し訳がありませんものね。近いうちにお伝えしなければいけませんけれど、今私が想いを伝えてしまうと計画の邪魔になってしまうかもしれません。
 ああ、どうしましょう。こういう時は誰に相談すればいいのでしょうか?……イザベル様達、でしょうか?ああいえ、でもだめですわ。皆様にお伝えするのは終わってからだと決めたばかりですもの。
 セオドア兄様に相談して……って、何を考えているのでしょうか私は。ご本人に相談してどうしろと言いますの。

「こんなことで悩んでいる場合ではないと言いますのに。セオドア兄様が好き……なんて言えませんわ」

 すっかりほてってしまった頬を両手で抑えながらベッドの上でゴロゴロと動き行き場のない感情を発散させて少し落ち着いたところで、ふう、と息を吐き出しました。

「とにかく、今は悪役令嬢として目指せ婚約破棄ですわ!」

 改めて心に決めて、まずは新学期に向けて色々と話し合ったいじめをするために脳内シミュレーションをいたしましょう。
 廊下で会ったときに足を引っかける、ぶつかってけがをしたふりをする。嫌味を言う、お茶会に誘わない、もしくは誘ってもいない者として扱う。あとは、突き飛ばしたり、えっと……そう、ものを目の前で壊したりするのでしたね。
 本当に物語に出てくる悪役令嬢のようで少しワクワクしてしまいますが、お芝居は得意ではないのですけれど大丈夫でしょうか?そこが私は不安で仕方がありませんわ。

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