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未来をやり直します

茄子

3学年5月

「セラフィーナ、最近フランシーヌに随分と小言を言っているそうじゃないか。俺は手紙で言ったはずだ、フランシーヌはあのありのままの姿こそ良いのであって、貴族の枠組みに入れていいものではないと」
「それでもフランシーヌ様が貴族であることに変わりはないと私は申し上げました」

 月に一度のアルベリヒ様とのお茶会は、重くかたい雰囲気の中始まりました。お決まりのあいさつの後に出た言葉はフランシーヌ様についての事なのは、もう飽き飽きしたことにございますね。もちろん前回と合わせてですが。

「それにアルベリヒ様は随分フランシーヌ様をお庇いになっているご様子ですが、フランシーヌ様には将来を誓い合った方がいらっしゃいますでしょう。それなのにあのように距離を縮めるのはいかがなものかと進言いたします。模範たる王太子があのような態度では規律が乱れてしまいましょう」
「王太子だからなんだというのだ。俺は自分の好きなように生きたかったのに、父上と母上が俺を王太子にしたのだ」
「でしたらそうおっしゃって今すぐにでも王太子の座を弟君のどなたかにお譲りになればよろしいではありませんか」
「黙れ!」

 ガシャン…、とカップが割れる音とメイドの悲鳴が豪奢に飾られた応接室に響き渡ります。
 アルベリヒ様が私に向かってまだ中身の残っているカップを投げつけたのです。カップは私に届くことなくテーブルの上で割れてしまいましたが、その破片で私の首に傷がついてしまいました。頸動脈の上だったせいもあり、あまり深い傷ではありませんが血が多く流れてしまっております。

「ぁ……」
「今日はもう帰りますわ」
「まて、手当を」
「自分の宮に戻って致しますので結構でございます。では失礼いたしますわ」

 メイドに渡されたタオルで傷を押さえながらなおざりに礼をして王太子宮を出てその自分の足で歩いて王太子妃宮に戻り、慌てて呼ばれた侍医によって手当てを受けます。
 傷は浅く後も残らないということでしたが、しばらくは首に包帯を巻くので首元を隠すドレスを着なければなりません。
 隣国ではエンパイアスタイルというドレスが主流ですが、この国ではクリノリンスタイルという、腰を細くしてスカートを膨らませるドレスが主流です。
 ハイネックのドレスデザインももちろんありますが、この時期にはあまりそぐわないので手持ちのものがあまりありませんね。スカーフやレースを首に飾って誤魔化すしかないでしょう。
 それにしても、まさかあのような暴挙に出られるとは思いませんでした。
 お顔を拝見した限りでは思わず、というところなのでしょうが、この事はもちろん国王陛下に報告が行くでしょう。
 隣国の帝姪を傷つけたなど国際問題になりかねないことなのですから仕方がありません。
 けれども、このことで兄様たちがこの国にやって来る理由が出来たかもしれません。もともと大使としていらっしゃる予定ではありましたが、時期を早めていただくにはいいきっかけになります。
 交流のない隣国、けれどもその軍事力は無視できない。
 どうしてお母様がこの国のお父様の元に嫁いでいらっしゃたのか、それは魔の森で遊んでいるときに出会ったのだと私はお母様に聞かされました。
 けれども当時帝の姫であったお母様が魔の森で一人で遊んでいるなど、今思えばありえないことではないでしょうか?
 もっとも、私も屋敷を抜け出して魔の森で兄様たちと遊んでいましたから、絶対ないとは言えませんが、限りなく不可能に近かったのではないかと思います。
 だってお母様は、私とよく似ている容姿をなさっていましたが、私よりもよっぽど魅力的で、お父様だけではなくお爺様も伯父様もお母様に魅了されているのだと私は思っております。そう、魅了されている、のです。
 今もなお、お母様の影響は残っているのです。この婚約がその証拠でしょう。私は何度か隣国に住みたいとお父様やお爺様にお願いしましたのに、許可されませんでした。この国の王太子と婚約をするのだから無理だと、そう言われたのです。
 お母様、私の憧れのお母様。なぜこんな遺言を残したのか私にはわかりませんけれども、貴女の娘はお母様の呪縛から逃れようともがき苦しんでおります。

 学院にはスカーフを巻いて登校しましたら、皆様に色々と質問をされてしまいました。そしてちょっとしたブームになって、首元に何かを巻くというスタイルが流行したおかげで、私の首の傷の件は気が付かれずに済みました。
 けれど、学院でのオリエンテーションが終わったにもかかわらず、アルベリヒ様はフランシーヌ様と共に行動をすることが多く、メルセデス様も戸惑いの表情を浮かべることが多くなったように感じます。
 そのことに胸が苦しくなりましたが、それはどちらかというと罪悪感のように感じます。
 前回あった淡い恋心のようなものは感じることがないのは、私がきっと2回目だからなのでしょうね。

「フランシーヌ様、私の言葉に耳を傾けては下さらないようでございますね」

 今日も私は廊下でイザベル様や友人たちを連れてフランシーヌ様に苦言を申すのです。人目があろうとなかろうと関係なく、そうすることで私への糾弾をしやすくそして浮気を理由に婚約破棄をしやすくすることが出来ると私は考えているのでございます。

「アルベリヒ様は友人なんです。友人と仲良くすることをいくら婚約者とはいえセラフィーナ様に言われる筋合いはないと思います」
「その友人の域を超えているような接触があると、いろいろな方々にお伺いしているから申し上げておりますのよ」
「いろいろな方々って誰ですか?教えてください」
「それは申し上げることはできません。貴女がアルベリヒ様に告げ口をしてその方々に何かあったらどうするのですか」
「告げ口とか酷いことを言うんですね。貴族令嬢の鏡とか言われてるのに、実際は陰険なんじゃないんですか?」

 私の背後で友人やイザベル様たちが何かを言おうとしますが、すっと手を上げて制してフランシーヌ様を睨みつけます。

「将来を誓った仲の方がいらっしゃるのに、男友達を作って親しく近しい距離で接するなど、そのようなふるまいをなさる方がこの学院にいるなど、恥以外の何物でもございません。もちろん、アルベリヒ様もです。私という婚約者がいるにもかかわらず節度を守らぬ行いは、何度も忠言しておりますのに、お互いに改める気が無いようで私は本当に呆れておりますの」
「メルセデスは関係ありません!それにアルベリヒ様だって、私といると心が安らぐって言ってくれるんです。それって婚約者のセラフィーネ様とじゃ心が休まらないってことですよね?おかしくないですか?普通は婚約者ってお互いに支え合う仲のはずじゃないですか」
「私とアルベリヒ様は政略結婚、親の決めた婚約ですので、お互いの間に恋愛感情は必要ございませんの。ですから、アルベリヒさまが節度と手順さえ守ってくださるのなら、私は側妃をいくら作っても構わないと思っておりますし、王太子妃の座だっていつでも譲って構わないと思っております」

 今日は見物人が多いので、はっきりと申し上げておきます。

「そんなのおかしいです!セラフィーネ様の努力が足りないんじゃないですか?」

 馬鹿にしたようなその顔に、眉をしかめ手にしていた扇子でその頬をぶちました。もちろん手加減はしましたが、滑らかな肌が扇子の形に赤く染まってしまいました。

「な…」
「無礼者。この私を誰だと思っているのですか?隣国の帝の姪であり、大公辺境伯の娘であり、王太子殿下の婚約者なのですよ。私はこの身分に相応しくあるように努力をしております、それを否定する貴女は貴族令嬢として何の努力をしているというのですか。マナーの一つもまっとうに守れないなら、学院など辞めてしまえばいいのです。平民の学校で平民に交じって勉強なさればよろしいでしょう」
「おまちください!」

 さらに責め立てようとしたところに声がかかり、その声の方を見るとメルセデス様が息を切らして駆け寄っていらっしゃいました。
 おそらくどなたかが知らせに行ったのでしょう。

「フランシーヌの無礼をどうぞお許しください。この子は田舎貴族でございますので、至らないところも多々ございますが、悪い子ではないのです」
「そういう問題ではございません。マナーを注意されて直す気もないということが問題なのです。メルセデス様は将来を誓い合っているとはいえ、婚約者ではないのでございましょう?彼女の責任を負うことはできません。部外者はこの場より立ち去っていただけますか?」
「……いいえ!フランシーヌは僕の婚約者です」
「誠ですか?」
「はい」

 明らかに嘘ですが、この場は納得して差し上げたほうが良いでしょう。

「では、婚約者であるのならフランシーヌ様のことをどうにかしていただけますか?婚約者がいるにもかかわらず異性と親しくするなど、浮気を疑われても仕方がないのだと、きつく申し付けていただけますわね」
「かしこまりました」

 フランシーヌ様は何か言いたそうにしていらっしゃいますが、メルセデス様に口をずっと押えられているので何も言えずにいます。

「そういえば先日のお茶会の時も、カップを持ったまま席を立って移動なさっていらっしゃいました。あれはどういうおつもりなのでしょうか?何のために給仕係がいると思っているのでしょう。そもそもカップに紅茶が入ったまま移動するなんて、ありえないことだと思うのですが、私は何か間違っておりますでしょうか?」
「もうしわけありません。平民ではそう言った行動をとることもありますので、癖で出てしまったのだと思います」
「ものを食べながらしゃべるのも平民との接触でついた癖だということですのね?……メルセデス様には悪いのですが、お2人が婚約者というのであれば子爵家を継ぐということでしょう?社交界に出るときにも同じようなことをなさるおつもりなのでしょうか?夜会や正式な学院の外のお茶会でそのような真似をなされば、家名が傷つくだけではなくその家で働いているすべての使用人の経歴に傷がつくのです。そのことをご理解なさるよう、二人でよくお話合いになってくださいませ」

 最後にきつく睨みつけて、私たちはその場を立ち去っていきます。
 その後の出来事としましては、メルセデス様とフランシーヌ様が大喧嘩を始めたそうでございます。フランシーヌ様は気が強いので、私の言いなりになるメルセデス様が気に入らなかったのでございましょう。
 そもそもまだ婚約をしていないという話しにもなっていたそうで、それこそ見物人が大勢集まったそうです。
 そしてその間に割って入ったのがアルベリヒ様だったそうです。ありもしない婚約の話しをまず謝罪すべきだというアルベリヒ様に、将来を誓い合っているのだから同じだとメルセデス様は反論し、そしてフランシーヌ様とアルベリヒ様の距離の近さのせいで私に責められるのだとはっきりとおっしゃったそうです。
 その言葉にアルベリヒ様は機嫌を悪くし、フランシーヌ様をかばうように立ち、自分たちは友人なのだから傍にいてなんのおかしいところもないと宣言されたのだと、そう報告を受けたのでございます。
 友人の距離というにはあまりにも近い為に、忠言しているというのに、まったくもって理解なさっていないのか、それとも開き直っているのかはわかりませんが、私の思う通りに事が進んでいるようでようございます。
 フランシーヌ様はわかりませんが、アルベリヒ様は確実にフランシーヌ様に惹かれていっているようです。王太子としてではない自分を見てほしいなどと、子供じみた事をいう子供なのですから、仕方がないのかもしれませんが、本当に愚かしいことです。
 己の役目を果たすことから逃げ出すという意味では私も人のことを言えませんけれども、王太子という役目はそれこそ譲ることもできるのに、自分という個人も見てほしいなどという欲の深いことを望んでしまう。王太子としては致命的ですね。
 本来は私と支え合わなくてはならないのでしょうが、あいにく私は前回のこともあって支え合うという選択肢は最初から選ぶつもりがありません。
 前回はそれでも頑張って理解しようとしていたと思います。従順に、謙虚にあの人の傍で過ごしていたというのに結局は裏切られてしまったのですから、もういいのではないかと思うのです。
 もっとも、前回を知っているのは私だけなのですから、アルベリヒ様にとっては私は不愛想な礼儀のなっていない冷徹な女に思えているかもしれませんね。
 構いませんけれどもね。その方がかえって関わらずにいてくださるので助かります。
 それにしても、高位貴族である私や他の聴衆がいた中で、婚約をしていると言ったメルセデスさまの覚悟は立派なものでしたが、フランシーヌ様には通じていないようで残念でなりませんね。否定されたメルセデス様の経歴に傷がつくとは思わなかったのでしょうか?
 そんなこともわからないほど、クーベルタン子爵家では教育を怠っていたのでしょうか?
 けれども、前回の時にご兄弟とお会いしたことがございましたが、皆様礼節を守った良き方々でしたので、フランシーヌ様が特別なのでございましょう。
 兄弟の中での末娘ですので、甘やかされて育ったのかもしれませんね。

 さて、私の今直面している問題は、アルベリヒ様が直接王太子妃宮に乗り込んできたことでございましょう。
 今までこのようなことはございませんでしたが、恐らくフランシーヌ様を扇子でぶったことに対する抗議なのだと予想は出来ますが、わざわざ乗り込んでくるほどお気に入りになっているとは、予想以上でございますわね。

「よりにもよって顔をぶつなど、何を考えている!白い肌が赤くなって酷く痛々しかったぞ」
「手加減は致しましたし、あれは無礼討ちでございますれば、私にある当然の権利にございましょう。そもそも、傷をつけた云々と申しますのであれば、先日アルベリヒ様に首を傷つけられた私はもっと正式に抗議をすべきでございますね」
「それは今は関係ない」
「いいえございます。私は私をのことを馬鹿にされたので無礼討ちをしただけでございますのに、こうして理不尽に怒鳴られております。先日の傷の件も適当な謝罪文とお見舞いの花のみで誠意をかじることはございませんでした。今年、隣国から従兄弟がこちらに監査に参りますが、その時期を早めていただきたいと思います」
「早めたところでお前の思うようにはならないぞ。客人を留める宮に寝泊りしてもらう予定だし、お前との接触には父上の手ごまの監視が付くと決まっている。それにしても初めてこの宮に来たが、こうも隣国風のものをそろえるということは、お前は隣国に随分かぶれているようだ。そんな女を正妃にしなければならないなど嘆かわしい」
「これは自分の好きにしていいと言われたからでございます。ドレスも装飾品もこの国の主流の物を着用しているではありませんか。私だってこの国の王太子妃となるべく努力しております」
「いつもそうだ!王太子、王太子妃としてふさわしいだのふさわしくだのなんてもう聞き飽きた。お前は俺の好きなものを知っているか?嫌いなものは?最近読んだ本は何かを知っているのか?何も知らないくせに何が王太子妃としてふさわしくだ。お前は最初から俺を嫌って避けているじゃないか」
「ええ、そうでございますわね。だってこの婚約は親が決めたもので逆らうことなんてできなかったのですもの。私はこの婚約は破棄になってしまえばいいと思っておりますわ」
「ならどうしてフランシーヌにつらく当たる!手を上げたんだ!」
「ですから私は当然のマナーを守るように言っているだけだと何度言えばお分かりいただけるのですか。無礼討ちだって私を馬鹿にされたからしたのでございます」
「無礼討ちするほどの何を言ったと言うんだ」
「私の努力が足りないと、そうおっしゃったのでございます」
「たったそれだけでか?」
「それだけ?それだけと申されますか?一般の貴族令嬢が日々どれほどの努力をしているか、殿方はご存じないのですか?そして王太子妃として、学業以外にも仕事を任されている私に努力が足りないとおっしゃったのです。無礼討ちに値すると私はは思ったので打ったのでございます。このことを国王陛下に報告するというのならなさればよろしゅうございます」

 王太子妃宮の応接室が使われることはそれなりにございますが、このようにアルベリヒ様がやってきてこんな言い合いになったことはございませんでしたね。前回も含めて、でございますけれども。
 怒り心頭といった感じのアルベリヒ様ですが、国王陛下と口にした瞬間、一瞬真顔になり口を押えて何かを飲み込むようになさった後に、すっかり冷めてしまったカップに入った紅茶を一気に飲みました。

「父上には報告しない。このことで婚約破棄になれば、お前はわかっているのか?」
「なんのことにございましょうか?」
「父上はお前の母君に執着していた。寝室と執務室にはお前の母君の肖像画を飾っているほどだ。お前は母親によく似ている。そんなお前が手に入る機会があるのなら、あの父上がそのチャンスを逃すはずがない」
「そんなこと私には関係ございません。母は母、私は私でございます」

 そう、お母様と比べられるのはもう十分すぎるほどされてまいりました。従兄弟や弟はお母様を知らないのでそんなことはございませんが、お父様やお爺様、伯父様は私をお母様とよく比べるのです。
 そのことが悪いわけではございませんが、私個人を見ていない、面影を重ねられているようであまり好きではありませんでしたが、皆様が私に向けてくださる愛情は、確かに私に対するものでしたので私はそのことについて文句を言うことはありませんでした。

「とにかく、アルベリヒ様が行動を改めてくだされば、私があのような抗議をすることもございません。そのことをよくお考え下さい」
「お前に指図されるいわれはない」
「私はアルベリヒ様の婚約者でございます」
「黙れ!もういい、帰る」
「そうでございますか」

 そう言って部屋を出ていくアルベリヒ様の姿が見えなくなるまで立ち上がって見送って、応接室の扉が閉まったことを確認してため息をついてソファにぐったりと力なく座り込む。
 私という障害が積極的に動いているせいか、アルベリヒ様のフランシーヌ様への想いは思った以上に成長しているようです。そのことは構わないのですが、こうして乗り込まれるのは困ってしまいますね。
 それと、アルベリヒ様が国王陛下の思惑に気が付いているとは思いませんでした。そう言ったところは流石王太子というべきなのかもしれませんね。
 カサリ、と少し開けた窓から手のひらほどの大きさの蜘蛛が部屋の中に入ってきます。これはセオドア兄様手下の蜘蛛で、合わせて20匹ほどお譲りいただいております。この王宮などの諜報活動に使わせていただいておりますが、この子たちは蜘蛛の魔物なのでございます。
 蜘蛛人ではございませんが、頭の部分を人のようにすることが出来、人語を理解しまた話すことが出来るのです。
 どうやら今回のアルベリヒ様の行動は国王陛下にもう知れてしまっているようです。恐らく監視か何かが付けられているのでしょう。
 アルベリヒ様が気が付いているのかは存じませんけれども、私にも監視はつけられております。もっともこの宮の中に入ることが出来ず、外からの監視になっておりますけれどね。その件も含めての人材選択でございました。
 フランシーヌ様はメルセデス様と婚約をしていないといったそうですが、将来を誓い合ったということはそういう盟約を親の元で交わしていないだけではないのでしょうか?
 夏季休暇明けには前回は正式に婚約したとアルベリヒ様に嬉しそうに話しているのを見たことがあります。
 けれど、話しに聞く様子では婚約に至るかは微妙なところかもしれませんね。私の結末にはどの方がよいのでしょうか?前回の学院生活では、メルセデス様に恋するフランシーヌ様に横恋慕したアルベリヒ様が、いろいろと気を引くためにわざと私との仲を見せつけることもありました。
 あの時はよくわかりませんでしたが、当て馬というものにされていたのかもしれません。
 前回はメルセデス様が結局婚約をして結婚しましたが、最終的にはアルベリヒ様がフランシーヌ様を手に入れましたね。
 結末は最後まで分からないとは申しますが、私が死んだあとはどうなったのでしょうか?気狂いの末に自害というシナリオだったのでしょうが、それを私の従兄弟や隣国の伯父様たちが許すとは思えませんので、侵略され乗っ取られたか滅ぼされたのかもしれませんね。
 国王陛下もそのことを気にしているからこそ、私への接触は極力控え、監視を放っているのでしょう。
 手に入れたいけれども、お母様の決めた婚約を無理やり破棄させて国王陛下が私を側妃にするとなれば、隣国の気を害してしまうことになるでしょう。
 今年中に兄様のどちらかがいらっしゃると聞いておりますが、恐らくはセオドア兄様でいらっしゃるでしょうね。諜報に長けていらっしゃいますし、スチュアート兄は血の気が多いですのでもめ事を起こしてしまうかもしれません。
 セオドア兄様にもきっと監視はつけられますが、そのような者はセオドア兄様には関係ありません。セオドア兄様の手下は蜘蛛ですのでどんなに監視をしてもその監視の目を潜り抜けてセオドア兄様は情報を集めてしまわれるのです。
 本当でしたら私の宮に客人としてお迎えしたかったのですが、隣国の大使という名目でいらっしゃいますので、残念ながらそれは叶いませんでした。
 けれども、頻繁にやり取りをすることは悪いことではございませんので、今も行っているお茶会にお呼びしたり致しましょう。
 様々な貴婦人やご令嬢に監視をつけるためにも必要な事でございます。
 なんてことはありません、服に小さな子蜘蛛を付けて監視させるだけでございます。蜘蛛の魔物は親蜘蛛に離れていても状況を伝えることが出来るそうなので、諜報活動にとても向いている魔物なのです。
 飼いならすことは蜘蛛人のセオドア兄様にも難しかったそうですけれど、それを成し遂げたということは素晴らしい功績だと私は思っております。

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