復讐します

茄子

番外編 その後の姉

「あらぁ、負け犬さんじゃないの。今日も学校に来るなんて、相当神経が図太いのねぇ。私だったら恥ずかしくて学校になんて来れないわ。転校したらいいのに」

 あのベストカップル賞以来、こうして誰からも嫌味を言われるようになったわ。私が何をしたっていうのよ。全部美零が悪いんじゃなの。
 お父さんとお母さんも、警察に連れていかれて、私は家で一人で暮らさなくっちゃいけなくなっちゃったし、なんかわからないけど、カウンセリングなんて定期的に受けなくちゃいけなくなって、いい迷惑だわ。
 本当に、全部美零が悪いのよ。

「やだぁ、こっち見ているわよ。睨んでくるとかいい度胸よね。あんな恥を晒しておいて堂々としているとか、神経を疑うわ」

 神経を疑うのはあんたらの方よ! 私は何も悪くないわ。
 美零と久艶君はベストカップル賞になって、学校中から祝福されて、おかしいわよ。久艶君は私と結ばれるはずなのに、美零に洗脳されているに違いないわ。
 この私の愛で洗脳をといてあげなくちゃ。

「やだ、久艶君を見ているわよ。あんなことがあったのにまだ未練があるのかしら?烏滸がましいわよね」

 なによ、未練なんかじゃないわ。これは正当な事なのよ。あんたら底辺の人間にはわからないだけなのよ。
 それにしても問題は美零よ。私に逆らうなんていい度胸じゃないの。ここはわからせてやる必要があるわよね。どうしてくれようかしら?

「あらぁ、何か悪だくみしているみたいだけど、もしかして美零に何か悪い事でもしようとか企んでるんじゃないわよねえ? そうだとしたらお門違いもいいところだわ。美零が可哀そうよ。貴女のせいで心因性のストレスをただでさえ抱えているんだし、もう関わらないでもらえる? せっかく美零は家を出て貴女と関わらずに済むようになったんだから。そうそう、久艶も貴女には私怨しかないのよ? なんといっても、好きでもない女に纏わりつかれていい迷惑っていってたぐらいだもの。身の程知らずなことはしないことね」

 何よ、さっきからこの玲羅って女うざいわね。まさに物語に出てくる悪役令嬢その者じゃないの。
 あら、そうだとすると私がヒロイン? 苦難を乗り越えて、久艶君とのハッピーエンドが待っているのよね。

「嫌だ、気持ち悪い。顔がにやけているわ。ろくなことを考えてないのよね、きっと」

 うるさいわね。こんな女放っておいて久艶君の所に行かなちゃ。久艶君はどこかしら?
 さっきから姿が見えないのよね。
 廊下に出て久艶君の姿を探すけど、見当たらないわ。

「やだ、あの子って例のベストカップル賞の時の子でしょう? なんでまだ学校にいるの?」

 ……玲羅以外にもこうしてあたしに嫌味を言ってくる人が増えて来たわ。どういうことなのよ。
 きっと美零が裏で動いているに違いないわ。
 何があたしが原因の心因性のストレス障害よ。こっちがストレス障害になりそうだってのよ。
 それにしても、お母さんとお父さん、いつになったら帰って来るのかしら?
 家政婦がいるとはいえ、家であたし一人なんて、何かあったらどうしてくれるの?
 あたしは病弱なのよ? 風邪なんか引いて重症化したらだれが責任を取ってくれるの?

「……あ、久艶君!」

 美零のクラスから出てくる久艶君を見つけて駆け寄ってその腕にあたしの腕を絡ませようとしたら、問答無用で手を払われてしまった。
 どういうこと? 確かにあたしとはベストカプル賞にはなれなかったけど、相思相愛の仲のはずでしょう? 美零のせいで邪魔されたけどね。

「いい加減うざい。もう関わらないでくれないか」
「久艶君、何を言っているの? 美零に何か言われたんでしょう? 美零の言うことは全部嘘なのよ。あたしも、お父さんもお母さんも何もわるくないのよ。それなのに、一人で被害者面して、本当にどういう神経しているのかしらね」
「お前こそどういう神経しているんだ? 俺と美零は本物の恋人同士だ。お前にどうこう言われる筋合いはないな」
「どういうことよ、何洗脳されているの? 久艶君はあたしと恋人同士じゃないの」
「何勘違いしているんだ、今までそんな事実が存在したことなんかないだろう」
「なによ! あんなに仲良くしてあげたじゃなの」

 なによ、なによ! 久艶君ってばどうしてこんなに意地悪になっちゃったわけ?

「久艶君、正気に戻ってよ。美零に洗脳されちゃっているのかもしれないけど、あたしとの仲をちゃんと思い出せばわかるはずよ。あたしと久艶君は運命の相手なんだから」
「はっ、馬鹿らしいな。俺の運命の相手は美零だよ。まあ、将来のことまではわからないけど、ベストカップル賞に選ばれた二人は結婚するって言われているんだしな、このまま恋人関係を続けていずれは結婚するつもりだ」
「なっなにをいっているのよ! 美零なんてただのちんくしゃじゃないの! あんなブスのどこがいいのよ!」
「美零がブス? 頭だけじゃなくて目も悪いんだな。まあ、俺のひいき目もあるかもしれないけど、美零はかわいいだろう」
「なにいっているのよ! あんなチビの何がいいのよ!」
「発育不良はお前らのせいだろう? 美零のせいじゃない。お前、本当に醜いな、今後俺に関わらないでくれよな。本当にいい迷惑だから」
「なっ」

 そう言ってクラスに入っていく久艶君の後ろ姿を呆然と見つめる。
 あたしはいったい今何を言われたの? このあたしが醜い? 久艶君、目が悪いのかしら? お父さんやお母さんはあたしの事を世界で一番かわいいって言ってくれてたわ。だからあたしいは世界で一番かわいいのよ。
 久艶君を追いかけて教室の中に入れば、玲羅と久艶君が何かを話している。
 久艶君には話しかけたいけど、玲羅が邪魔だわ。

「ねえ、美嘉さん。レポートの提出期限は今日までなんだけど、いい加減出してくれない?出してくれないと私が先生に怒られるのよ。本当に、どうして貴女はいつもぎりぎりに提出するの? もっと余裕をもってできないわけ? しかも美零さんに前は押し付けてたっていうじゃないの。そんなのありえないわよね。本当に人間としてどうかと思うわ」

 委員長がいきなり話しかけてきた。このあたしに向かって何を言ってきているわけ?レポート? そんなもので来ているわけがないじゃないの。誰も手伝ってくれないんだもの。

「できてないわよ。先生には期限を延ばしてくれるように言ってくれる? あたしの為なんだからそのぐらいできるでしょう?」
「はあ!? 何言っているの? レポートの課題が出たのは一ヶ月も前じゃないの。その間何をしていたわけ? 久艶君のお尻を追いかけるのに夢中だったとか言わないわよね?」
「そんなわけないじゃないの。そもそも、この学校はレポートが多すぎるのよ。もっと量を減らすべきだって貴女が進言してよ」
「そんなの自分で言ってよ! どうでもいいからレポートを提出してちょうだい」
「だから出来てないって言っているでしょう!」
「だったら今からすぐさま取り掛かりなさいよ。途中まででもいいから提出してちょうだい!」

 この委員長何を言っているの? なんでこのあたしがそこまでしなくちゃいけないのよ。
 まずはこの学校の体質を変えるように動くべきでしょう? 本当に使えない委員長ね。

「やだぁ、なんてわがままなのかしら? ねえ、久艶」
「本当だな。この学校はレポートがそのまま内申点に反映されるっていうのに、それを理解しないで入学したのか? 身の程知らずだな。そもそもあの頭でどうやってこの学校に入れたんだ?」
「裏口入学かしら?」
「推薦者枠だって聞いたぞ?」
「あらそうなの? 口八丁で先生方を言いくるめたのかもしれないわね。試験は、まあ、この学校はレポート重視だし、それこそ美零に押し付けたのかもしれないわ。ああ、いやだあさましい」

 玲羅、うるさいわね。っていうかこっちの話を盗み聞ぎするんじゃないわよ。

「ちょっと! あたしは正式にこの学校に入学したのよ。何か文句を言わる筋合いはないわ!」

 まあ、レポートは美零に書かせたのは事実だけどね。

「あら、文句の一つでも言いたいわよ。私の親友の美零が今も心因性のストレスを抱えているんだからね。貴女が近くに近寄っただけでも具合が悪くなるのよ。いい加減にしてほしいものだわ。本当に転校してくれればいいのに」
「なっ! なんてことを言うのよ。そんな最低なこと欲も言えたものよね、あんた、性格が最悪だわ!」
「貴女に言われたくないわねえ。ねえ、久艶」
「そうだな」

 久艶君まで何を言っているの? あたしの性格が悪い? そんなわけないじゃないの。
 クラスにいる人たちがあたしたちの会話を聞いてクスクスと笑っているのが聞こえる。どうして誰もあたしを守ってくれないの?
 お父さんとお母さんは本当にいつまで帰ってこないの? まさかこのままずっとあたしは一人であの家で暮らさないといけないの?
 家政婦はあたしを甘やかしてくれるけど、役に立たないババアだし、この先どうやって生活していけばいいのよ。
 あたしも美零みたいにおばあちゃんたちの家にどうして引き取られないわけ? 美零だけずるいじゃないの。
 おじいちゃん達は両方ともはあたしに譲る財産はないとかいうし、どういうつもりなわけ? 孫のこのあたしに譲るお金はないとか、差別よね。
 お父さんとお母さんが残してくれた貯金だって限度があるのよ? まあ、それが無くなる前には帰って来るとは思うけど、本当になんで捕まっちゃったのかしら?
 美零に対する児童虐待とか言ってたけど、お父さんとお母さんはあたしにかかりきりだっただけで何も悪くはないわよ。

「とにかく、レポートの提出期限は今日の放課だから、どんなものでもいいからとにかく提出してよね」

 うっさいわね、委員長。どんなものでもいいなら適当に書いて出してやるわよ!

「っていうか、貴女のレポート、毎回再提出を喰らってるじゃないの。レポートは毎回一か月前には告知されるのよ? どうしてまともなものが書けないの?」
「なによ、うるさいわね! あんたが毎回どんなものでもいいからっていうから、適当に書いて出してあげてるだけじゃないの」
「私が悪いっていうの?」
「そうよ」
「信じられない! 貴女、本当に最低ね。美零さんが本当に可哀そうだわ。こんな人と姉妹だなんて」

 何よ煩いわね。美零はこのあたしと姉妹であることを光栄に思いこそすれ、可哀そうなわけがないじゃないの。

「本当に委員長の言う通りだわ。美零が可哀そうよね。ああ、久艶、今のうちに美零にこの女との縁切りを提案しておいたほうが良いんじゃないの? そうしないと美零と結婚したら義理の姉になっちゃうのよ」
「そうだな。それは最悪だな」
「だから! 久艶君はあたしの恋人だっていってるでしょう!」

 どうして誰もわかってくれないのよ。久艶君自身もよくわかってないみたいだし、やっぱりあたしの愛の力で目覚めさせてあげなくちゃいけないわね。

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