話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

復讐します

茄子

早速餌に食らいつく獲物の図

 入学式、私は好みのタイプの男の子の隣の席になった。文学青年でおとなしそうな彼の名前は久艶君。
 サラサラの黒髪を七三分けにして、シルバーフレームの眼鏡が余計にかっこよく見えて最高だと思った。
 あたしが見つめたからか、あたしの方を見て少し困ったように微笑んでくれて、これは脈があるなって確信したのよね。いままで通りあたしの魅力で落として見せる。
 あたしは幼いころから病弱で、ちょっとした風邪でも重病化して、家にいるよりも病院で過ごしてた時間のほうが多かったぐらい。
 だんだん良くなっていったけど、中学に入ってもやっぱりよく倒れて皆に心配をかけちゃってた。
 美人薄命とかいわれちゃったけど、縁起が悪いってあたしは泣いちゃって、言った子は皆から責められて転校していっちゃった。仕方がないよね、酷いことを言うのが悪いんだもん。
 この全寮制の私立高校の女子制服は、全国でもトップレベルの可愛さで、この制服目当てであたしもここのを推薦入学させてもらったのよね。
 白く清楚でかわいらしい制服、凛とした佇まいの女生徒はあたしの憧れだったんだもん、ママとパパは心配したけどあたしの説得に折れてくれたんだよね。
 それに、気に入らないけど妹も一緒の学校だっていうから、なにかあったらあいつに言うっていうことで納得してもらった。
 あのがり勉女がこの学校とか、気に入らないけどそのおかげでここに入ることを許してもらえたんだし、少しは役になったんじゃないの?
 昔からあたしの引き立て役にしかなれないんだから、この学校でもせいぜいあたしの役に立ってもらおうじゃないの。

******************************

「って感じに考えていると思うなあ」
「ナニソレ、双子のテレパシー的な感じ?」
「違うって、お姉ちゃんの行動パターンから割り出した思考回路だよ。それよりも玲羅、クラスでの様子はどうだった?」
「さっそく病弱だけどがんばるねアピールしてたよ。あの可愛らしい顔に騙されたクラスメイトの多さったら笑いそうになったわ」
「さっすがお姉ちゃん、無駄にカリスマ性あるね」
「久艶に目を付けたのもわかりやすかったな。ちらっちら見ているし、今も具合が悪くなったとか言って保健室に連れていってもらっているし」
「久艶乙。絶対もうちょっと一緒にいてとか言われているよ」
「カワイソー。それにしても、あの頭悪そうな子がなんでここに入れたんだろうね」
「寄付金と学校の推薦入学でしょ。世の中金だもん」
「真面目に学業で入学した身としてはむかつくわ」

 放課後、いつものように図書室の談話室の一室で本を片手に飲み物を飲みながら、玲羅とさっそく今日のお姉ちゃんの行動を確認する。
 頭が悪くてこっちの思い通りの行動をしてくれるから、本当に楽でいいなあ。
 
「お?爪綺麗じゃん、ネイルサロン行ったの?」
「そうそう昨日…って秋津入って来るならノックぐらいしてよ」
「まあまあいいじゃん」

 この私立高校にはなんとヘアサロンとネイルサロンもあったりする。ようするに、外で派手に何かされるよりも、決められた範囲内でやってもらったほうがいいっていう学校側の事情らしいけど、学割があって結構便利なんだよね。
 その気になれば学校の外に出なくても生活できるよね。まあ、映画館とかはないし娯楽施設がないから遊びは外になるよね。

「お揃いの色違いにしたんだよー。期間限定桜ネイル♪」
「うんかわいいかわいい」
「男子生徒もネイルケアしている人いるじゃん?秋津と久艶もしてみなよ。爪綺麗な男子っていいじゃん。もているかもよ」
「俺がモテてどうするよ。彼女としてそれはどうなんだよ」
「私はかまわないよー。浮気したら殴るけど♪」
「こえーよ」
「仲良しだよねえ。私と久艶とは違う感じでキャッキャしている」
「普通だって」
「そうだよ。二人が淡々としすぎなの。ところで、その久艶はどうしたの?保健室に送った後、一緒じゃなかったの?」
「ああ、早速ターゲットに捕まってたから置いてきた」
「「マジ」」

 秋津の言葉に思わず私と玲羅の声が被ってしまった。
 お姉ちゃん行動早いなあ。まあいいけど、久艶も気の毒だなあ、早速捕まったとかいうけどなんだろう?学校見学とかそんな感じ?
 病弱(笑)のお姉ちゃんに付き合ってとか、時間かかりそうだなあ。今日は来ないかもね。

「それにしても、美零のお姉ちゃんすごいよねえ。速攻で『私病弱だけど、皆気にしないでね』とかアピールしてたよしかもあの可愛らしさで、嫌みがない程度にって感じだから好感度上がったんじゃない?」
「さっすがお姉ちゃん。親曰く天使(笑)」
「うちのクラスにもCクラスに美少女がいるとか噂ひろまっているな。ついでにAクラスの美少女も」
「つまり私のことも噂になっているのね」
「自分で美少女とかいっちゃう美零が大好き♪」
「でもCクラスの美少女って玲羅も当てはまるんじゃない?美少女っていうか、知的美女?」
「あっはは、照れるじゃん」
「口を開けばこんなんだけどねえ。見た目は知的美女だよ、うん」
「ある意味こんなんだから俺は付き合っている」
「なんかひどい言われようだけど、まあいいか」

 3人でまったり読書にいそしんでいると、スマホの通知音が3人同時になったのでグループ会話に送信されたんだろうとわかり、久艶だなと3人とも察してスマホの画面を見ると、スタンプでHELPと表示されていた。
 私はとりあえずドンマイ(笑)と送信しておいたけど、2人も似たようなものだった。

「とりあえず、私たち4人は仲良しだって話しはしておいたけど、ターゲットはどう動くかしらねえ。早速久艶に手を出しているけど」
「お姉ちゃんのことだし、自分の想いが叶わないわけがないって思うはずだから、今頃はウッキウキじゃないかな」
「ってことは」
「私と久艶の仲の良さを見せつければイラついてくれるわよねえ」
「性格悪いなあ」
「それでこそ我が親友よ!」

 乾杯、と玲羅が手に持っているカップを掲げたので私と秋津も併せて持ち上げてカポンと情けない音を立てて乾杯する。

「美零に接触はなかったの?」
「あったわよ。おととい寮に来てすぐに私の部屋に来て、部屋の片づけをしてよ、ってね。もちろん従順な妹の私はお姉ちゃんの言うとおりにお片づけをしてあげたわ。ついでにちょっとサプライズもしかけておいたけど」
「盗聴器でも仕掛けた?」
「そんなところ」
「悪趣味ねえ。まあ、証拠は多い方がいいんだろうけど、下手に見つかったらあんたがやばいわよ」
「見つからないわよ。お姉ちゃんがパソコンの解体が出来れば別だけど」
「そりゃ無理だ。あの女は絶対しそうにない」
「そういうこと」

 3人で笑い合っているともう一度スマホが通知音を鳴らす。
 今度はスタンプじゃなくて写真だった。お姉ちゃんが楽しそうに笑っている写真に私たちは大笑いをする。
 この笑顔が崩れるのが一日でも早く見たい。
 ソファとテーブルと、持ち込んだ飲み物と本だけの何にもない談話室で、私たちは大声で笑い合う。この部屋は防音だからこうして密談もし放題。
 ただし監視カメラで監視はされているから、いちゃつくのにはお勧めしない場所。
 私立のこの学校にはあらゆるセキュリティが張り巡らされている。電子マネーもその一つだと思っているし、学校のあっちこっちに監視カメラが設置されている。ないのは更衣室とトイレぐらいと言われているぐらい。
 外出許可には寛容だけど、規則違反には厳しい罰則がある。そんな学校。
 お金持ちの子女も多く通うせいか、上品な印象のある学校だけど、実際はそこら辺の学校と生徒の質は変わらない。だって結局は同年代の子供なんだからしかたがない。
 そう、私たちは子供だから、加減も大人よりも分からない。
 徹底的に、食うか食われるかの生存競争を毎日繰り広げなくちゃいけない。この狭い学校という箱庭で蟲毒のように勝ち残らなくちゃいけない。
 そのためには何でもする。
 時には自滅する足の引っ張り合いでもなんでもして、勝者になって大人になる。

******************************

 あたしのことを久艶君は写真に撮ってくれた。笑顔がかわいいって言って。
 でも、気になるのは美零と同じ中学校出身で仲が良いっていうこと。あんな役立たずな妹と仲がいいとか、ありえないでしょ。
 それともあれかしら、成績がいいもの同士で知り合って付きまとわれているとかそういう感じ?そうだとしたらあたしからちゃんと言い聞かせてやらなくちゃ。
 身の程を弁えろっていうのよ。根暗でグズの美零がこんなにかっこいい久艶君と知り合いだってだけでも十分すぎることだっていうのに、仲がいいとか勘違いしているんなら、わからせてやらないと。
 それにしても、この学校はやっぱり素敵。
 セーラーカラーのブレザーの清楚で可愛い制服、お金持ちの子供もいるから品がいい感じだし、セキュリティも万全だし、買い物し放題だし、なによりも今日の自己紹介でみんながあたしに注目してくれてた。
 あたしのけなげさをわかってもらえた証拠よね。
 それに、一番最初に久艶君に声をかけたのはあたしなんだから、皆あたしたちのことを応援してくれるに違いないわ。
 というか、あたしこそが久艶君の魅力をわかってあげられるの。控えめで地味って思われそうだけど、ちゃんと見ればわかるわ。
 知的で理知的でまじめそうなイイ男。
 最高じゃない。ママが言ってたイイ男の条件にぴったりよ。将来結婚するならこういう男が良いってママが言ってたもの。
 パパもそういうタイプ。ママの言うことをよく聞いてくれて、あたしにも優しくてなんでも言うことを聞いてくれるパパ。
 あたしもママみたいにイイ男と結婚して幸せな家庭を築くの。
 でも、あたしの家族は完璧なのに美零っていうお邪魔虫がいるせいでちょっと、なのよね。
 美零を排除できればいいのに、ママもパパも優しいからちゃんと育てているっていうのに、あの子ってばまったく感謝のもしないで嫌な奴。

******************************

 初日からいい独り言をありがとうお姉ちゃん。
 嫌な奴でごめんね、でもすぐに終わるから安心してね。

「復讐します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く