当て馬の当て馬ってあんまりですわ

茄子

私だけのもの ※シンシア視点

「ラディおかえりなさい。愛してるわ」

 学園から帰ってすぐに出迎えてくるシンシアを抱きしめてコンラードは満足そうに笑みを浮かべる。

「私も愛しているよ」

 腰を抱いてシンシアに与えられた部屋に行く。セシーリアがいたときと何も変わらない内装。流石に浴室や衣裳部屋の中身は変わっているが目に映る部分は以前と変わらない。
 ソファにシンシアを座らせてゆっくり口づけて首筋を撫でる。

「今日は何をして過ごしてた?」
「何もしてないわ。ただ本を読んでただけ」
「何の本?」
「何の本だったかしら。覚えてないわ」
「ふーん?」

 結われてる髪をほどいて手で梳かして背中におろして首筋に口付けて吸う。

「この宮から一歩も出てない?」
「もちろんよ」
「侍女以外に会ってない?」
「ええ」

 ドレスのリボンをほどいて胸元にも口づける。コルセットではなくブラジャーをつけるように言った命令もちゃんと実施されている。
 初めは戸惑っていたけれども、今ではコルセットの締め付けがなくていいと気に入っているらしい。

「そうだ、今度夜会があるんだ」
「そうなの?」
「一緒に参加しよう」
「でも、セシーリア様に悪いわ」
「いいんだよ。私は一緒に出たいんだ、また一緒に踊ろう」
「怒られるわ」
「怒られないよ。私が守ってあげる、いい子だから一緒に参加するって言ってくれるよね」
「んっ…ラディがそういうなら」
「いい子だね」

 いくつも胸元にキス痕を残しながらドレスを下していき、見えてきた鳩尾や腹にも口づけをしていく。
 座ったままなのでドレスを完全に脱がせることが出来ず、ゆっくりとドレスの裾をたくし上げていく。

「ラディ、はずかしいわ」
「いつまでたっても初々しいね」

 持ち上げた足を撫で上げ、ガーターストッキングを脱がす。

「愛してるよ」

 そのままシンシアを押し倒して口づけて体を起こす。
 中途半端に脱がされたドレスのままの姿に目を細めて満足そうに笑みを浮かべると、ゆっくりと頬を撫でて首に手を当てる。

「私の、私だけの……」
「ラディ?」
「喉が渇いたね。お茶を淹れさせよう」

 そう言って手をたたけばすぐさま侍女が部屋に入ってくる。
 慌ててドレスを戻そうとしたシンシアの手を止めて、コンラードは胸に手を当ててゆっくりと撫でつける。

「ら、ラディ?」
「そのままでいいっていつもいってるのに、いつになったらいうことを聞くいい子になるのかな?」
「ご、ごめんなさい。でも、恥ずかしくて」
「侍女なんて気にしないでいいよ。ほら私を見て。ゆっくり呼吸をして、そう…上手だよ」

 呼吸する喉に唇を当てて歯を軽く立てた後にゆっくりと舐めていく。

「動けないだろうから私がお茶を飲ませてあげる」

 侍女がお茶を淹れたカップののったトレイをコンラードのもとに持ってきたので、カップをもって一口含むとそのままシンシアに口づけて紅茶を流し込む。

「おいしい?」
「はい」
「そう、ならよかった」

 そう言ってコンラードはカップを戻すと侍女に視線を向ける。
 そして次に侍女が持ってきたのは氷の浮かぶ赤い液体の入ったグラス。

「それは?」
「イチゴのジュースだよ」
「ひぅっつめ、なに?」

 グラスを片手で取ってもう片方の手で胸を寄せてその間に赤い液体を落としていく。

「私も喉が渇いたからね」

 日に当たっていない白い肌と白いブラジャーに赤い液体が広がっていくのを目で追って、ゆっくりと舌を這わせる。

「真っ赤な血が流れてるみたいだ」
「ふっん…くすぐったいわ」
「じっとして」

 両手で胸を押さえつけ、ソファに乗り上げた足でスカートを押さえつける。
 着せたところでうっとりと笑うコンラードにシンシアがびくりと動きを止め、次第にフルフルと震え始める。

「ああ、寒い?震えて可哀そうに……」
「ね、ねえ。もうジュースはないわ」
「そうだね。でもべたべたするだろうし脱がないといけないよね」
「そうね。着替えないといけないわよね」

 体を離して腕を引いて無理やり立たせると侍女がその場でドレスと下着を脱がせ、新しい下着を着せたところで動きを止める。

「……違うな」
「え?」
「なんでもないよ。部屋に閉じこもりきりだと退屈だろう?宮の中なら散歩をしてもいいよ」
「本当!ありがとうラディ」
「夜会にも一緒に行こう。ドレスを決めないと。何色が似合うかな、夜色のドレスなんてどうかな、髪によく映える」
「そ、そうかしら」
「そうだよ」

 うっとりというコンラードの瞳に嘘は浮かんでおらず、シンシアは戸惑いながらうなずく。
 下着姿のまま、コンラードに抱きしめられて愛してるとささやかれて口づけをされ、シンシアは目を閉じる。
 コンラードの愛していると言葉にも、笑顔にも嘘はない。

(もう私にはラディしかいない)

 望むものを、欲するだけの愛をくれるコンラードにシンシアは溶かされていく。
 以前は恥ずかしかった格好ももう慣れてしまった。この宮にいれば悲しいことはない。

(ラディは私に幸せをくれる。愛してくれてる)

 でも、とシンシアは思ってしまう。

(でも、ラディはいつから私の名前を呼んでくれなくなったの?)

 「シシー」と愛しそうに言ってくれたのはいつだっただろうか。

「どうかした?」
「なんでもないの。なんでもないに決まってるわ」

(私はラディを愛してるの。ラディは私を愛してくれる。ラディは私を裏切らない、私を離さない。ラディだけ、そうよ)

 信じることを疑ってはいけない。
 何もかもを失ったシンシアをコンラードだけが助けてくれた。

「愛してるわ、ラディ」
「私も愛しているよ」

 抱き上げられて下着姿のままソファに座らされてシンシアはコンラードを見つめる。

「ねえ、ラディ。お願いがあるの」
「なにかな」
「名前を呼んで?」
「どうして?急にどうかした?」
「お願い。私の名前を呼んで、愛してるって言って」
「愛してるよ。私のシンシア」
「うれしい」

 シンシアは涙を流してコンラードに抱き着く。久々に名前を呼んでもらっただけでこんなに嬉しいのだから、コンラードを愛しているのに嘘はない。あっていいはずがない。

「愛してるって言ってほしかったの?何度でも言ってあげる。いい子でいれば何度でも」
「うん。いい子でいるわ」

 触れられる手の暖かさに震えが止まる。

(私は、ラディだけのもの)

 もう疑ったりしないとシンシアは心に刻み付け、コンラードに抱き着く手に力を籠める。

(……ラディ私が幸せにしてあげるの。暖かい家庭を築いてかわいい子供を産んで…、他の誰もラディは幸せに出来ないわ。セシーリア様じゃ無理だもの。私がラディを幸せにするの。傍にいるの)

「寒い?」
「ううん。あのねラディ、私と笑顔の絶えない幸せな家庭を作りましょう。私ならセシーリア様みたいにラディを寂しくさせない、悲しませたりしないわ。嘘の笑顔なんて作らなくていいの。私が傍にいるわ。ラディを幸せにしてあげるわ」
「そう。嬉しいな」

 そう言って笑みを浮かべるコンラードにシンシアは満足そうに笑みを浮かべた。

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