婚約破棄されたので帰国して遊びますね

茄子

02

 さて、戦後処理ではありませんが、王太子の処遇を決めるために、王太子をいったん王宮へと運ぶ必要がございますので、私とローラン様は王太子を風の檻に閉じこめたまま飛んで・・・王宮へと帰還いたしました。
 帰還後すぐさま侍女に捕まってしまい、湯あみと着替えとお化粧をされてしまいましたが、その間に国王陛下自ら王太子に尋問をしているようでございますが、話合いは一向に進んでいないようです。
 まあ、あの王太子ですものね、話し合いなどにはまずならないのでしょうか?
 なんといっても見も知らぬ娘を虐めたなどという、ありもしない冤罪を突きつけてきたぐらいですものね。
 身支度を整えまして、私も王太子が捕らえられているという牢屋に向かいます。近づいていくと、王太子の喚き声が聞こえてまいりました。

「俺にこんなことをして只で済むと思っているのか!俺は隣国の王太子なんだぞ!こんなことをして父上が黙っているわけがないだろう!」
「その王太子が攻め入って来たというわけなのだがな」
「ふんっこの俺の配下に加えてやると言ってるんだ、ありがたく思うがいい」

 あらまあ、流石は阿呆王太子ですわね。言っていることがめちゃくちゃですわね。同じ格であった我が国を配下に加えてやるだなんてなにをいっているのでしょうか?

「国王陛下、お待たせいたしました」
「おお、よく来たな」
「そして王太子様、先ほどぶりにございますわね。相も変わらずわけのわからないことをおっしゃっているようでございますけれども、ご自分のしたことの意味を理解なさっているのでしょうか?」
「な、なんだ」
「国境を越えての軍事行動は戦争を仕掛けて来たも同義でございますわ。ああ、ご安心為さって、貴国の国王陛下にはすでにご連絡済みでございますわ」
「なにぃ!?」
「あら、何か不都合な事でもございましたか?」
「この度のことは父上は関係ないのだ!そのようなことを勝手にするな!」
「まあ!国境を越えての軍事行動を父君の了承もなくなさったとおっしゃいますの?それは何ともお粗末なお話でございますわね」
「しかたがないだろう!必要な事だったのだ!」
「必要な事?」
「ジゼルが妊娠した。妊婦に辛い王妃修行をさせるわけにはいかないだろう、お前を俺の婚約者候補に戻してやってジゼルを安心させてやるのだ」

 あらまあ、妊娠なさったのですか。婚前交渉をするとはまた、不道徳でございますわね。まあ、よく聞く話ではありますけれどもね。

「まあ妊娠なさったのですか、おめでとうございます。けれどもこの私を婚約者にしてやる・・・・などというのはいささか無礼というものではございませんか」
「なんだと!?この俺の婚約者に戻れるのだぞ!」
「戻りたくもありませんわね」
「なっ!」

 そんなに驚くことなのでしょうか?当然のことだと思うのですが。

「ダリアン様、隣国の国王より水鏡で返事が届いておりますよ」
「まあ、ローラン様ありがとうございます」

 さすがはローラン様お仕事が早いですわね。水鏡は国王陛下が使うものなのですが、今回は緊急事態ということでローラン様が繋いだようでございますわね。

『こんの馬鹿者が!戦争を仕掛けるなどどういうつもりなのだ!』
「しかし父上、度重なる書状を無視し続けただけでなく、このような扱いをするのですぞ!実力行使に出なくてどうするのですか!」
『そもそもお前が破棄を申し出たのだ!それにこのような扱いをするというのはお前が侵攻したからだ!順番を間違えるな痴れ者が!』

 全く持ってその通りでございますわね。ヴァナディア国王陛下は本当にまともな方ですのにどうしてご子息はこうなってしまったのでしょうか?
 本当に謎ですわ。教育を誤っただけでこんな風になってしまうものなのでしょうか?

「父上!とにかくここから助けてください!」
『やかましい!お前がいない間ジゼルが王宮内でどれほどのことをしでかしたかも知らずにこの馬鹿者が!』
「ジゼルに何かあったというのですか!?」
『妊婦をいたわれなどと言って贅沢三昧に拍車がかかっておるのだ!いい加減に儂の堪忍袋の緒も切れるというものだぞ!』

 ああなるほど、ヴァナディア国王陛下の懐が異常に広いというか、甘やかしすぎでこうなってしまったのですわね。

 お家事情はともかくとして、この王太子の処遇はどういたしましょうか?先ほどからお父様が半ギレで神罰を下したそうにしているのですわよねぇ。
 まあ、婚約破棄の時点でかなりキテおりましたし、こうなるのも仕方がないのかもしれませんけれども、神罰が下れば…まあろくなことにはなりませんわね。

「国王陛下、ヴァナディア国王陛下、私の父神様が王太子に神罰を下したいとそわそわしておりますの、どういたしましょうか?」
「『え』」
「困りましたわよねえ、神罰を個人に限定していただくにしても、ヴァナディア国にはもしかしたら次期国王がいなくなってしまうかもしれませんもの」
『そ、それは…』

 困りますわよねえ、他は皆様姫君でいらっしゃいますものね。けれども姫君の中には優秀な方々もいらっしゃいますし、この際特例として女性にも継承権を認めてはいかがでしょうか?その方が安泰というものだと思うのですけれども。
 それとも…、

「私と致しましては、このままヴァナディア国を我が国に吸収してもよろしいのではないかと思いますのよ?」

 にっこりと言えば、ヴァナディア国王陛下はうろたえたように視線を彷徨わせます。
 ヴァナディア国王陛下は愚かではないので我が国に貴族が流出していることをご存じでいらっしゃるのでしょうね。
 顔色が悪くていらっしゃいますもの、うふふ。
 まあ、ヴァナディア国王陛下に恨みはないのですが、次期国王というか現王太子に思うところがあるのですから仕方がございませんわよね。

「ですがまあ、私も鬼ではございませんし、今回の件での和解に関しては国土の半分を頂ければ結構でございますわよ?だってこの私に対しての無礼なのですもの、一国を潰されてもおかしくないのにその半分で済むのですから相当これでも温情をかけておりますのよ?といいますか、これでも相当お父様をおさえておりますのよ?」

 にっこりと言えば、ヴァナディア国王陛下が蒼白な顔で頷かれました。
 ローラン様に至っては、おかしくて仕方がないと言わんばかりに噴き出す手前のようなお顔でいらっしゃいますわね。実際に神が自分の子供を不当に扱われて国を滅ぼしたという記録はございますので、言い過ぎというわけではございませんのよ。

「それで、こちらの王太子の処遇ですがどういたしましょうか?お父様からしてみれば八つ裂きにしたそうなのですが、流石にそれはお気の毒なのではないかと思っていますのよ?私だっていたずらに命を奪うような真似はしたくありませんの」
「ではダリアン様、どのようにいたしますか?」
「ローラン様、離宮に閉じこめるということも考えたのですが、それでは私のお父様が納得しなさそうなのでございますわ」
「そうでしょうとも、私の親神であってもそうだと思われます」

 私とローラン様の話に王太子の顔色が悪くなっていきます。今更自分の立場に気が付いたというのでしょうか?

「国王陛下、私はこの国にて王太子を奴隷に落としてはどうかと思いますの。見目だけは麗しいのですから、エリスのように男娼として扱われるかもしれませんが、それもまたよろしいのではないのでしょうか?ああ、ジゼルという娘もまた奴隷にすべきですわね。お子様には罪は今のところございませんので、産まれ次第離宮に監禁というのでは如何でしょうか?」
「私はそれで構わぬが、ヴァナディア国王陛下はいかがお思いか?」
『う、うむ……』

 悩んでいらっしゃいますわね。
 駄目王太子とはいえかわいいお子様ですものねえ。

「父上!俺を奴隷に落とすなどとんでもありません!どうかこの者たちを罰してください!」
『なっ』
「あら」
「ふむ」
「クスクス」

 この私を罰するだなんて随分なことをおっしゃいますわね。
 そもそも、この私が罰せられるいわれがないのですが、この王太子の思考回路は本当にどうなっているのでしょうか?

「ではこういたしましょう」

 私は、ポン、手を叩きました。

「王太子には神罰を与えさせていただきますわ」
「『え』」

 国王陛下とヴァナディア国王陛下が驚いたように声を上げます。

「だって、流石にこの私を罰せよなんておっしゃるんですもの。お父様を押さえるのも限界なんですの」

 にっこりとほほ笑んで言えば、ヴァナディア国王陛下は真っ青になってしまわれました。

「何がよろしいでしょうか?目をくりぬいてしまいましょうか?それとも歯を全部抜いてしまいましょうか?殺しはしませんのでどうぞご安心くださいませね」
「くすくす。そんな奴隷を誰が買うんですか?」
「まあローラン様、では手足をもぐというのはいかがでしょうか?そうすれば男娼としては役に立つとは思いますのよ?」
「ああ、それはいいですね」

 我ながら中々にえぐいことを言っている気がいたしますけれども、そのぐらい致しませんとお父様のお怒りが鎮まりそうにもないのでしかたがありませんわよね。

「ジゼルのほうは奴隷落ちだけで構いませんわよ。なんと言っても妊婦なのですもの、多少の恩情は掛けなければなりませんわ」

 私はクスクスと笑います。
 実際問題、皆様には見えていない、ああ、ローラン様には見えているかもしれませんけれども、お父様が先ほどから王太子を睨んでいるのですわよね。全くもって、この状況が見えないって羨ましいですわ。
 王太子の処遇も決まりましたしあとはジゼルがこの国にやって来るのを待つばかりになりましたわね。妊婦だからと言って移動をさせないということにはなりませんわ。
 まあわかりやすく言えば、私を陥れようとしたことに対する神罰とでもいえばいいでしょうか?
 移動の際にお子が流れてしまわないようにお父様には加護を与えてくださるようにお願いはしておきましたわ。お子様は無事に生まれさせなくてはなりませんものね。

 さて、隣国との問題が解決したところで私の問題が残っておりますわね。今回の件でローラン様と共闘してみて思ったのですが、ローラン様ってば意外とお強くていらっしゃいますのよね。
 主神殿にこもっていらっしゃることが多いとお聞きしておりましたので、てっきり戦闘系の技術は学んでいないのかと思っておりましたわ。
 ああ、私は王妃教育の一環で学んでおりましたわ。王太子はサボっていたようでございますけれどもね。
 まあその、ローラン様は頼れる御方だと思いますわよ。けれどもお父様がおっしゃっていたような恋心とはまた違うようなそんな気がいたしますのよね。
 うーん、私ってばどうしてしまったのでしょうか?ローラン様が気になってしまいますわ。
 ああいけませんわね、婚約者を決めるのは国王陛下ですので私が私情を挟むべきではありませんもの。

「どうかなさいましたか、ダリアン様」
「いいえなんでもありませんわ、ローラン様」

 そう、なんということはありませんのよ。それに、遅かれ早かれ主神殿には参りますし、いずれはローラン様と一緒に暮らすようになりますものね。
 焦らずとも構いませんわ。

* * *

「ダリアン様、ご無事で何よりです」
「スペンサーご心配ありがとうございます、けれどもこの通り無事でございますわ」
「はい、安堵いたしました」

 私のところにスペンサーが駆け寄ってまいりました。本当に心配しているというような感じでございますわね。本当にワンコのようでかわいらしいですわ。
 ああ、なるほど、もしかしたらこういう庇護欲を愛おしいというのかもしれませんわね。
 そうなりますと、私はスペンサーを好いているのでしょうか?うーん、それもなんだか違う気がいたしますわね。
 はあ、恋愛というものは面倒な事でございますわね。もっとこう、バッサリとわかりやすいものだといいのですけれども、こう、悩ましいのは性に合いませんのよね。

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