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冬薔薇姫

茄子

029 エピローグ

 ランツェル様達の解呪が始まって二ヶ月が経ちました。
 その間、わたくしはいつものように図書塔で読書に勤しんでおりますが、噂によると、エーフィー様が魔法師にすり寄って、魅了の魔眼の封印を解いてもらおうと必死なのだとか。
 無理な話ですのに、無駄な努力がお好きなのでしょうか?
 それにしても、定期的にわたくしの前に現れては盛大に転んだり、急に泣き出したりすると言うのは、いったい何なのでしょうねえ。
 確かに、小説の中ではパウラがヒロインを徹底的に虐めておりましたけれども、なぜ私がそんな時間の無駄なことをしなければならないのでしょうか?
 エーフィー様も、いい加減に諦めて部屋に閉じ籠もってお勉強に勤しんでくだされば、令嬢達からの嫌がらせも受けずに済みますのに、学習能力がないのでしょうか?
 そんな事はさておき、なんとわたくしとハーロルト兄様の結婚式の準備が早まったのでございます。
 理由と致しましては、わたくし達が邪悪なるモノを浄化した祝賀ムードの内に結婚式を挙げてしまおうと言う国王陛下の意志が働いたようでございます。
 まあ、わたくしといたしましては、この国の禁書を読めるのが早まりますので大歓迎なのですが、パパから頂いた禁書もまだ読み終わっていませんし、読む本がたくさんございましてわたくしは嬉しゅうございますわ。

「パウラ様、ウェディングドレスのサイズを測りますので、読書は一旦中止になさってください」
「サイズでしたら、旅に出る前に旅用のドレスを作った際にも測ったではないですか、それでよいのではなくて?」
「パウラ様は成長期です。サイズが若干変わっている可能性がございますので、正確なサイズを測るためにも再度測り直す必要があるのでございます。これも公務でございますよ」
「はあ、わたくしの貴重な読書の時間が失われてしまうなんて……」

 わたくしは読んでいた本を閉じてテーブルの上に置くと、大人しくデザイナーに体のサイズを測られました。

「パウラ様、旅をする前よりも少し痩せましたか? 腰が特に細くなっておいでですね。きちんと食事をなさっておりましたか?」
「わたくしが食事を取ろうとしなくても、ハーロルト兄様が食べさせてくださっておりましたので、問題はないと思いますわよ?」
「然様でございますか? でしたら、よりいっそう女性らしく体が変化しているのかもしれませんね」

 思い当たる事と致しましては、ハーロルト兄様との夜の行為による女性ホルモンの活性化と運動でしょうか?
 まあ、単純に旅をしていたので、その分知らずに運動していたと言う可能性もございますわよね。
 あとは、読書で凝り固まったからだをほぐすために行っているストレッチの効果でしょうか? どちらにせよ、お母様とどんどん体型が違っていきますわね、顔は似ておりますのに。
 そういえば、妖精種の国で頂いた本の中には化粧品に関係するものもございまして、我が国にはまだないものが多数存在しておりましたので、わたくしの前世の知識を合わせて早速開発いたしまして、まずは高位貴族から販売を始めましたところ、大変好評をいただいております。
 まあ、ご神木の朝露なんていういかにもファンタジーな物も使われておりますけれども、我が国にはご神木はございませんので、そこは前世の知識を活用させていただいております。
 決して安い買い物ではないはずなのですが、高位貴族の令嬢や貴婦人方は新しい物好きでいらっしゃいますので、美味しい商売ですわね。
 サイズを測り終えましたら、次はウェディングドレスのデザインを選ぶことになりました。
 結婚致しますので今までのように、髪を垂らすという事は出来なくなり、髪を結い上げ、ブーケなどで隠すようになります。
 わたくしの背が低いという事もあり、子供っぽく見えないようなデザインを選ばなければいけませんので、なかなかデザイン選びは難しいのですよね。
 ウェディングドレスですし、豪華なものにしなければ、王家の面子にも関わってきますものね。
 結局、流行りのデザインを取り入れた物にいたしまして、宝石などを縫い付けた豪奢なデザインの物になりました。
 他国からも要人をお招きしての盛大な式になるとのことですので、今から気が重いですわね。
 とくにパパ辺りが来ましたら、同時に招待されております妖精種の王家の方々とひと悶着ありそうで怖いですわ。
 ……パパには申し訳ないですが、招待状は送らないでおきましょう。
 ええ、無駄な混乱は事前に避けるのが一番ですわよね、いくら製造者とはいえ、血が繋がっているわけではございませんし、招待しなくても問題は……ありませんわよね、きっと。
 まあ、パパの事ですし、招待しなくても来る可能性が大いにあるのですけれどもね。
 ああ、不安ですわ。
 あ、けれども、各国の国王は、魔物の大群に備えて国に常駐するのが常でございますし、いらっしゃいませんわよね。
 うん、そうに決まっておりますわ。
 パパにだってそのぐらいの常識はあるはずですわよね。
 嫌ですわよ、わたくしの結婚式が発端で戦争が始まるとか、全力で遠慮したいですわよね。


 その後、ランツェル様達の解呪は見事に成功したようでございまして、わたくしの結婚式までに解呪が間に合ってよかったですわ。
 解呪されておりますが、ランツェル様は相変わらずエーフィー様と体を重ねているようでございます。
 もっとも、体を重ねているのはランツェル様だけではないようですけれどもね。
 まったく、エーフィー様はご自分が清楚なヒロインからかけ離れて行っていると自覚があるのでしょうか?
 ペトラ様は、未だにランツェル様を想っているようですが、肝心のランツェル様がこの状態では、復縁はまず無理でございましょう。
 そもそも、公共の場で婚約破棄を言い渡された挙句、もう婚約破棄の手続きは終わっておりますものね。
 あんな扱いを受けたのに、まだランツェル様を想っているペトラ様って、ダメンズウォーカーなのでしょうか?
 そんなこんなで、結婚式の準備は着々と進み、一週間後にはわたくしはハーロルト兄様のお嫁さんになることになりました。
 招待客の中には同盟を組んでいる国の要人も多数出席なさる予定になっておりまして、思った以上に盛大なものになりそうでございます。
 幸いな事に、魔人種の国からは、お婆様の親族がいらっしゃることになっておりますので、パパは参加致しません。
 まあ、お手紙をいただきまして、水鏡で様子を見ているという、ストーカーまがいの事が書かれておりましたが、気にしたら負けですわよね。


 結婚式当日、わたくしはウェディングドレスに着替えまして、ハーロルト兄様のいらっしゃる礼拝堂に向かいます。
 本当に久しぶりにお会いするお父様の腕に手を添えた時、お父様が「パウラ、大きくなったな」といったのが印象深かったです。
 まあ、数年会っていませんし、大きくなったと言う感想も当然だとは思うのですけれども、もっと他に言いようがあったのではないでしょうか? 仮にもこれから嫁に行く娘ですのよ?
 まあ、育児放棄をしているようなお父様ですので、期待するだけ無駄という事でしょうか。
 それはともかくとして、わたくしは王宮内にある礼拝堂に入りまして、祭壇の前まで行きますと、お父様からハーロルト兄様に手渡されました。
 祭司の祝詞に合わせまして、わたくしとハーロルト兄様が「誓います」と答え、誓いの口づけを行いますと、礼拝堂のあちらこちらから拍手が沸き起こりました。
 あ、ちなみに、ランツェル様は解呪の苦しみにまだ耐えているという理由から参列を拒否なさいました。
 エーフィー様は健気にも、そんなランツェル様達に寄り添うと言う理由で、同じく参列を拒否なさっております。
 まあ、あの方々がいない方がスムーズに式の信仰が行えそうなので問題はございませんわね。
 何事も問題なく、結婚式を終えまして披露宴会場に向かったのですが、それはもう、賑やかなものになっておりました。
 これを機に、各国の同盟を強めたいと言う思いで皆様いらっしゃったようで、会話の大半が外交の事だったのには思わず笑いがこみ上げて来そうになりましたわ。
 まあ、邪悪なるモノは一度浄化してしまえば、数百年は次の邪悪なるモノが登場しないと言うのが通説でございますので、人間種にとってはこの機会に亜人種の国との同盟を強めておきたいのでしょうね。
 まあ、人間種の国の王族なんて、亜人種の血が混ざっているのがほとんどでございますので、通常の人間種よりも長い気をするのが普通なのですけどもね。
 それにしても、これで我が国にある禁書が読み放題になりましたわ。
 ああ、どんな知恵の泉がわたくしを待っていてくださるのでしょうか。
 まあ、禁書を読む時はハーロルト兄様が一緒じゃないといけないと言われておりますので、読む際はハーロルト兄様の執務室で読むことになるでしょうね。
 国に帰ってきてからというもの、ハーロルト兄様の膝の上に乗って本を読むという事がほとんどなくなってしまい、少々寂しい気もしておりますけれども、ハーロルト兄様の執務の邪魔をしてはいけませんものね、我慢しなくてはいけませんわ。
 一応、表向き今夜が初夜という事になるのですが、今更ですわよねえ。
 わたくしの純潔の証はとうの昔に国王陛下に提出されておりますし、旅の間何度もハーロルト兄様とは肌を重ねましたもの。
 ただ、帰国してからは致しておりませんので、久しぶりと言えば久しぶりになるのでしょうか?
 結婚式に当たり、ハーロルト兄様の公務は倍増したと言っておりましたし、あまり初夜から無理をさせる必要もございませんわよね。
 今夜は静かに眠るだけで良いのではないでしょうか?
 まあ、住まう離宮も一緒になることですし、今夜しなくても致す機会はいくらでもございますわよね。
 あ、でもハーロルト兄様はわたくしが第一子を孕むまでは側妃を取らないと宣言しておりますし、避妊魔法を解いたとしまして、一日も早く妊娠できるような魔法を作ったほうが良いのでしょうか?
 排卵日に性行為をすれば、高確率で妊娠できると思うのですけれども、着床した胎児が流れないとも限りませんし、安産の神様に祈っておくべきでしょうか?
 あの神々に祈ると言うのも、なんというか、しゃくなのですけれども、背に腹は代えられませんわよね。
 妊娠が即座に判明する魔法でも作ると言うのはどうでしょうか?
 この世界には妊娠検査薬という物がございませんし、そんな魔法を開発出来たら、魔法技術の提供だけでもそれなりに稼げると思うのですよね。
 避妊魔法に関しても、娼館関係の方々に高値で売れましたし、良いのではないでしょうか?
 なんてことを考えているうちに、披露宴が終わりまして、わたくしは王妃になるまでの間、ハーロルト兄様と住まう事になる離宮に移動いたしました。
 代々王太子が使用してきたという事もあり、立派な離宮でございまして、図書塔からも距離はそんなに離れておりませんので、わたくしと致しましては文句はございません。

「パウラ様、ハーロルト殿下がいらっしゃる前に湯あみを致しましょう」
「わかりましたわ」

 慣れた手つきで髪や体を洗われまして、髪を乾かした仕上げに香油で髪を纏めていきます。
 一応初夜という事を考慮されてなのか、寝着はリボン一つで取れる仕組みのものになっておりました。
 寝室に入ったわたくしは、ハーロルト兄様がいらっしゃるまで読書でもしようと思いまして、アイテムボックスから本を取り出しますと、本の世界に没頭致しました。
 知恵の泉を堪能しておりますと、急に体が持ちあげられまして、何事かと本から顔を上げますと、そこにはハーロルト兄様がいらっしゃいました。
 夜だからなのか、いつもはオールバックにしている前髪も下ろされて、わたくしの旦那様になった方をこう言うのもなんですけれども、女性にモテるのも仕方がないと言った感じの方でございますわね。

「ハーロルト兄様、公務お疲れ様でございました」
「うん、パウラは相変わらず本に夢中だな」
「それは仕方がありませんわ。本がわたくしに読んでほしいと言っているのですもの。わたくし共が旅をしている間に、図書塔の蔵書も増えましたし、本当に毎日が幸せでございますのよ」
「うんうん、それは何よりだ。ところで、一応対外的には今夜が初夜だってわかっている?」
「ええ、もちろんでございますわ。けれども、わたくしの初めての証はとうの昔に国王陛下に提出されましたし、今更初夜を気にすることもないと思いますのよ?」
「パウラならそう言うと思ったよ。でも、私はパウラに触れたくて仕方がないから、今夜は読書はお預けだな」
「まあ」

 そう言ったハーロルト兄様に本を取り上げられますと、ベッドに押し倒されてしまいまいました。
 ふむ、子供を授かる魔法を作るのは急いでしたほうが良いかもしれませんわね。
 インキュバスの性能を魔法にできれば早いでしょうか?
 まあ、何はともあれ、わたくしはハーロルト兄様の愛に包まれて、愛する本に囲まれて、幸せな人生を送ることになります。


 ああ、言い忘れておりましたわ、ランツェル様達は、解呪が済みましたので、エーフィー様達と一緒に再び魔物討伐の旅に出たのですが、相変わらず弱い魔物の討伐を続けていらっしゃるようです。
 他国の勇者一行は率先して強い魔物討伐に向かっていると言うのに、情けないですわね。
 そうそう、エーフィー様ですが、魅了の魔眼を完全に封じられましたので、なんとその体を使ってランツェル様達を繋ぎとめているのでは? ともっぱらの噂でございます。
 いやはや、女性という物は怖いものですわね。
 けれども、ランツェル様が平民になりたいと常々零しているせいか、最近ではアウェス様に乗り換えるのではないかという噂もございますのよ。
 ランツェル様は、身分なく自分を見てくれているエーフィー様に惹かれていると仰っていましたけれども、そのエーフィー様が一番身分で人を判断しているのではないでしょうか?
 大人しくペトラ様と結婚為さっていれば、いずれペトラ様が王子という身分に関係なくランツェル様を愛していたと気が付けたかもしれませんのに、本当に残念でなりませんわね。
 ……あ、わたくしのその後でございますか?
 特に変わりはございませんわよ?
 いつものように図書塔の最上階の植物園で本を読み、夜はハーロルト兄様の腕に抱かれると言う日々を送っているだけでございます。
 子供はまだできておりませんが、そもそも亜人種の血が混ざりに混ざっている私とハーロルト兄様の子供ですから、中々できなくても仕方がないのかもしれませんわね。
 一応、妊娠促進の魔法は開発中でございますけれども。
 さて、わたくしの聖女としての物語はこの辺で終わりとなります。
 皆様が少しでも楽しめる物語になっていれば良いのですけれども、わたくしにそれを知ることは出来ませんわね。
 では、名残惜しゅうございますが、この辺で失礼いたします。
 皆様、どうぞお元気で。

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