話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

冬薔薇姫

茄子

028 祝賀の夜会

 ランツェル様達が呼び戻されて、驚愕の事実が発覚致しました。
 エーフィー様に着けていた魅了の魔眼封じの腕輪が無くなっていたのでございます。
 なんでも、獣人種の国で取って貰ったと胸を張って言っておりましたので、今度は簡単に外すことが出来ないように、腕輪なんて甘いものではなく、封印の魔法を施す事になりました。
 体中に、蔦模様の痣が出来ますけれども、しかたございませんわよね。

「邪悪なるモノはヒロインであるあたしが浄化する予定だったのに、余計なことをしないでよ!」
「いきなり部屋に入ってこられて、そのように申されましても、もう済んでしまった事でございますので、変えようがございませんわね。大丈夫ですわ、エーフィー様は今後も聖女として、各地の魔物討伐を続けることになるのですもの。今回の旅の間、聖女としての力もわずかながらに身に着けたと聞きますわ。今後も旅をしていく中で、より一層、聖女としての実力を身に着けて、さぞかしご活躍なさるのではないかと思います。わたくしの部屋になど乗り込んでこずに、今夜行われます、邪悪なるモノの浄化祝賀夜会の準備でもなさったら如何? ランツェル様にエスコートされるのでしょう? ああ、再び旅に行く前に、ランツェル様達に掛けた魅了に関しては解呪するという事で話がまとまりましたので、せいぜい魅了の魔眼を使わずにランツェル様との仲を深めていってくださいませね。解呪には数か月かかりますので、その間は王宮で聖女の勉強に励むことになるかとは思いますが、その間、令嬢達から嫌がらせを受けるでしょうねえ。そうならない為にはお部屋から一歩も出ずにお勉強をなさるのが一番だと思いますわ。そういえば、ランツェル様は王族としての義務を捨てて、平民になりたいなどと仰っておりましたが、愛する方の望みですものね、もちろん、そうなってもランツェル様について行かれるのでしょう? 立派ですわねえ。わたくしにはとても真似できませんわ。平民になってしまいましたら、図書塔にある書物を読むことも出来なくなってしまいますもの。まあ、エーフィー様は書物にご興味があまり無いようですので、構わないのかもしれませんわね。それで、いつまでわたくしの部屋にいる気でいらっしゃいますの? わたくしも夜会の準備がございますので、暇ではございませんの。貴重な読書の時間を邪魔されるような真似は、今後なさらないで頂きたいのですが、よろしくて?」

 わたくしは一気にそう言いますと、ゾフィに命じてエーフィー様を部屋の外に追い出しました。
 ふう、これで読書を続けられますわね。
 夜会の準備の間も、着付けなどをしている最中もカチヤに本を持ってもらって読書を続けております。 
 着替えている間って、されるがままでございますので、読書にはうってつけなのでございますよ?
 夜会の主役であるわたくしは、いつも以上に着飾られてしまいまして、滅多にされないお化粧までさせられてしまいました。
 鏡を見ると、そこには無表情なだけに、ビスクドールのように美しい少女が居りましたわ。
 まあ、自画自賛ですけれども。
 ……体型は、お母様に似ていないのですよね、お母様はどちらかと言いますとスリムな方ですけれども、わたくしは身長の割には出る所はしっかり出ていると言う感じなのでございます。
 ……誰の血でしょうねえ。
 そんな感じで着付けが終わって本を読みながらハーロルト兄様を待っておりますと。正装をしたハーロルト兄様が部屋に入ってまいりました。

「ほら、パウラ。夜会の会場に行くよ」
「もうですの? まだ読み終わってないのですけれども」
「帰ってきてから読もうな」
「あ」

 本を取り上げられてしまいました。
 まあ、仕方がないですわね。
 図書塔から借りた千冊も結局各国で本を読んでいましたので読み終わっておりませんので、早く読んでしまいたいのですよね。
 後ろ髪をひかれつつ、ハーロルト兄様にエスコートされて夜会の会場である大広間に到着いたしました。
 すでに多くの人が集まっていたのか、ざわざわとしておりましたが、わたくしとハーロルト兄様の入場が告げられますと、一瞬の静寂の後、盛大な拍手が沸き起こりました。
 ただ、拍手をしてこない一団、ランツェル様一行もございますけれどもね、それは仕方がない事なのかもしれません。
 ただでさえハーロルト兄様にコンプレックスを抱いておりましたのに、(実際はわたくしがしましたが)邪悪なるモノの浄化などされてしまったのですものねえ。
 そんなにハーロルト兄様に負けるのが嫌なのでしたら、日ごろから兵士に混じって訓練でもしていればよろしかったのに、なさらないから旅に出立しても地道にレベル上げなんてしなくちゃいけなかったのですよね。
 自業自得というものではないのでしょうか?
 そういえば、エーフィー様は旅の途中の講義で、小回復スモールヒールとごくわずかではありますが、浄化魔法を覚えたのだそうです。
 やはり、閉じこもって勉学と向き合うと言うのは大切な事ですわよね。
 ランツェル様達の解呪が済むまで、部屋に閉じ籠もってお勉強に一生懸命取り組めば、小説の中に出てくるヒロインのようになれるかもしれませんわよね。
 まあ、魅了の魔眼をもう使えませんので、解呪されたランツェル様達をもう一度篭絡できるかはわかりませんけれども。
 今日の夜会が終わりましたら、解呪を始めるとのことですわ。
 大変ですわよねえ、解呪は精神的に苦痛が伴うと申しますし、だからあれほど国王陛下やハーロルト兄様が護身魔道具を付けるように仰っていたのに、必要ないと拒否なさっていたからこんな事になってしまいましたのよ。
 そういえば、エーフィー様のお母様を犯したインキュバスってどなたなのでしょうか? パパではないのですよね。
 他にインキュバスにも神様が啓示を与えたとか?
 ありそうですわねえ。
 考えているうちに、国王陛下が入って来まして、夜会の開催が告げられました。
 わたくしは早速ハーロルト兄様に手を引かれて、ダンスホールに躍り出ますと、三曲連続でダンスをして、いつものように大広間の隅っこに移動しました。
 ここから眺めておりますと、ハーロルト兄様がひっきりなしに令嬢からダンスの申し込みを受けているのが見えます。
 モテるって大変ですわねえ。
 あ、わたくしはいつものように、三曲もダンスを踊って疲れてしまったと言って逃げてまいりました。
 向こうが勝手にわたくしのことを病弱だって思ってくれておりますので、お断りすることは簡単でございましたわ。
 わたくしが社交の場に出ることなんてほとんどございませんし、わたくしを知らない方は見た目で信じて下さるのですよね、楽勝ですわ。
 壁の花を決め込みまして、カーテンや観葉植物で陰になっている場所に移動いたしますと、早速アイテムボックスから本を取り出しまして読み始めました。
 しばらくそうして本を読んでいると、本に影が差し込みましたので、顔を上げますと、エーフィー様一行がわたくしの前に立っていらっしゃいました。
 何の用でしょうか?
 わたくしが本を閉じてアイテムボックスしまっていると、エーフィー様がいきなり涙をぼろぼろと流し始め、ランツェル様にもたれかかりました。
 何でしょう、なんのお芝居が始まるのでしょうか?

「酷いです、パウラ様。あたしが男爵家の庶子だからって、魅了の魔眼を使ったなんて冤罪でこんな醜い痣を付けさせるなんて、いったいあたしが何をしたって言うんですか。しかも、ランツェル達を苦しめる解呪をするなんて、そんなにあたし達の事が憎いですか?」
「何をしたって、魅了の魔眼を使ってランツェル様達を篭絡なさいましたでしょう? あと、憎いとか言われておりますけれども、わたくし、エーフィー様個人は鬱陶しいとは思っておりますけれども、ランツェル様達には取り立て何の感情もございませんわよ?」
「嘘です! じゃあどうしてこんな嫌がらせをしてくるんですか」
「あら、たった数か月で自分の言った発言をお忘れになる鳥頭なのでしょうか?」
「え?」
「わたくしは公式の場でエーフィー様に、わたくしの事を貶めるような発言をされましたし、仮にも聖女であるエーフィー様が虚言を吹聴しているなどという噂が立たないよう、エーフィー様が仰ったことを実行して差し上げただけですわよ。いうなれば自業自得というものではございませんか?」
「あたしが何を言ったって言うんですか!」
「本当に鳥頭ですわねえ。わたくしの事を娼婦のようだと仰ったではございませんか。私とっても傷つきましたのよ。それに、わたくしが皆様を誘導して嫌がらせを行っていると言う虚言を仰ったでしょう? それを真実にして差し上げているだけではございませんか。何度も言うようですが、嫌がらせを受けたくないのであれば、部屋から一歩も出ずにお勉強に精を出して、聖女らしく振舞えばよろしいのですよ?」
「……邪悪なるモノはあたしが浄化する予定だったのに!」
「あら、そうなのですか? ごめんあそばせ? けれども、一日でも早く浄化したほうがよろしいでしょう? そう考えましたら、のろのろとレベル上げをしていらっしゃるランツェル様達がいかれるよりも、わたくし達で行ったほうが早いと判断しましたのよ。それに、実際に邪悪なるモノは北の湿地におりましたが、ランツェル様達が向かったのは南の獣人種の国でございましょう? 方向が真逆。皆様が邪悪なるモノがいる場所まで到達するのを待っておりましたら被害が拡大する一歩でございましたでしょうね」
「そんなの、わからないじゃないですか」
「何を仰いますの? 魔物が活発化した場合、迅速な対応をするのが鉄則ではございませんか。ご安心為さって? 魔物がまだ全滅したわけではございませんので、勇者と聖女の仕事はまだまだたくさんございますわ。わたくしとハーロルト兄様はしばらく王宮に留まって、ハーロルト兄様はたまっている公務などをする予定ですし、わたくしも読書に勤しむ予定でございますので、ランツェル様達の解呪が済みましたら、速攻で再び旅に出ていただく予定でございますので、挽回のチャンスはございますわよ?」
「そ、そもそも、なんで解呪なんて」
「あら、されては困る理由でもおありなのですか? ご安心為さって、実際に魅了の魔眼が使われていないのでしたら、すぐにでも終了し、苦痛も何もない只の儀式でございますもの」

 いつものように無表情でそう言いますと、それが気に食わなかったのか、ランツェル様がわたくしを指さして来ました。

「それだ、その取り澄ましたような無表情! 本当に気味が悪い。親に捨てられた子供のくせにエーフィーに意見する気か?」
「では、逆に聞きますが、邪悪なるモノを浄化した聖女であり、ハーロルト兄様の正妃となる婚約者であり、大公姫であるわたくしに、ランツェル様は意見する気ですか?」
「なっ」
「身の程を弁えるのはどちらでしょうか?」

 わたくしはそう言ってランツェル様達をじっと見つめます。
 その視線に一瞬びくりと体を震わせたランツェル様ですが、腕に絡みついているエーフィー様の姿を確認すると、己を奮い立たせるようにこぶしを握り、口を開きました。

「はんっ、邪悪なるモノを浄化したというのも事実かどうかわかったものじゃないな」
「魔人種の国の勇者一行もその場におりましたが?」
「ともに嘘をついている可能性があるじゃないか、信用出来ないな」
「では、解呪が終わりましたら、北の地に向かってみてはいかがですか? 魔人種の国の勇者一行はまだ北の湿地で魔物討伐をしていると聞きますので、事実をその耳で確認していらしては?」
「北の地など、危険な場所に第二王子である俺に行けと言うのか!?」
「あら、ハーロルト兄様は行きましたわよ?」
「くっ……」
「ハーロルト兄様に勝ちたいのでしたら、せいぜい解呪の間、兵士に混ざって訓練でもなさったら如何です? ああ、エーフィー様は嫌がらせを受けたくないでしょうし、お部屋に籠ってお勉強をなさるのがいいでしょうね。魅了の魔眼も完全に封じられてしまいましたが、聖女なのですもの、そんなものがなくても十分に働いてくださると信じておりますわよ?」
「だまれ! 人が同情してやっていればいい気になりやがって!」

 いつ同情されたのでしょうか? 覚えがございませんわね。
 まあ、とにかくそんな捨て台詞を吐いてランツェル様一行はわたくしの前から姿を消してくださいました。
 まったく、わたくしの読書の時間を邪魔していう言葉があの程度の低能な言葉など、ありえませんわ、もっとお勉強してからわたくしの元に来ていただきたいものですわね。

「冬薔薇姫」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く