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冬薔薇姫

茄子

027 魔人種の国 出立

 パパの誘惑もあって図書館の本を読むのに熱中していたせいか、気が付いたら魔人種の国の王都の王宮に滞在して一週間たっておりました。
 時間が経つのって早いですわね。
 その間ハーロルト兄様達は魔人種の兵士の方々に混ざって訓練をしていたようです。
 たまにパパも混ざっていたようですけれども、ハーロルト兄様曰く、前回の勇者だけあって強いとのことですが、わたくしに対する態度を見るに、全くそんな感じはしませんわね。
 魔人種の国は、十五年前までは貴族が勢力をふるう国だったそうなのですが、パパが国王になってからというもの、実力主義を重視するようになったそうなのです。
 前国王である女王を快楽堕ちさせて王座を奪った割にはちゃんと仕事しているのですね。
 わたくしの事をしょっちゅう眺めているというストーカーまがいの事をしておりますけれどもね。
 この国の王宮の図書館の本はまだ読み終わっていませんが、いつまでもここに滞在しているわけにもいきませんので、そろそろ出立する事になりました。

「ええ、もういっちゃうの? パパ悲しい」

 全力笑顔でパパがそう言ってきます。
 どこが悲しいのでしょうね、顔と台詞があっておりませんわよ?

「うちの国の勇者一行はまだ湿地で魔物討伐してるしー、パパ退屈になっちゃうぞぉ」
「国王のお仕事がございますでしょう?」
「うーん、最近それにも飽きて来ちゃったから、そろそろ貴族に王座を返して俺は自由に過ごしたいんだよなあ。どうせ俺が国王になったのも、パウラのサポートをしろとか言う意味での啓示だったんだろうし、もういいと思うんよなあ」
「まあ、いくら同盟を組んでいるとはいえ、他国の内政にまで首を突っ込むことは出来ませんので、自由になさればよろしいのでは? ただし、わたくしの弟妹を増やすような真似は出来るだけなさらないで頂きたいのですが」
「だから、俺ってば草食系なんだって。無意味にサキュバスにもならないし女を犯す事もないって」
「だとよろしいのですけれども、インキュバスの貞操観念は低いと書物にございますし、いまいち信用できないのですよね」
「えー、パパを信用しなって。379歳になって制作した子供はリベロとパウラだけだって」

 そんなお年なのですか。
 確かにそれだけ生きていて、制作した子供がお母様とわたくしというのであれば、確かに草食系と言ってもいいのかもしれませんわね。
 まあ、パパとか呼ばせてくるあたり、チャラいのには変わらないのですけれども。
 これ、お母様にお会いしたら同じようにパパ呼びさせるのでしょうか? けれども、お母様はご自分が忌み子だと知っているかもわかりませんし、会わせないのが一番ですわよねえ。
 そういう意味では、この国で国王を大人しくしてくださっているほうが良いのですけれどもね。
 ふと思いましたが、お母様が社交行事に積極的に参加なさっているのって、パパの影響でしょうか?
 ありそうですわよねえ……。
 まあ、妖精種自体が奔放という説もございますので、何とも言えませんけれどもね。

「それで、出立はいつにするんだ?」
「明朝に出立しようと思っています。我が国に一日も早く邪悪なるモノの浄化を報告し、国民を安心させたいので」
「ふーん。パウラぁ、お前の婚約者は真面目だなあ。人間種の次期国王ってこんなものなのか? パウラもこんな男の正妃になるぐらいならこの国でゆっくり過ごすっていうのはどうだ?」
「お誘いはありがたいのですけれども、わたくし、ハーロルト兄様の正妃になると決めておりますので、そのお誘いはお断りさせていただきますわ」
「そうか? 来たくなったらいつでも来てくれていいんだぞ」

 気軽に来る距離ではないのですが、理解なさっておいででしょうか?
 まあ、諸国漫遊する際には寄らせていただこうとは思いますけれども、いつになるかわかり ませんものねえ。
 魔物討伐という名目で、諸国漫遊して書物を読み漁る旅、いいですわねえ。
 あ、外交官として同盟を組みに諸国漫遊するというのでもいいかもしれませんわ。
 ハーロルト兄様は次期国王ですし、諸国に顔を覚えていただくと言うのも大事なお仕事ですわよね。
 その日の晩餐はパパも加わりまして豪勢なものになりました。

「パウラ、この国で過ごす最後の夜なんだし、俺特製の金平糖とかめっちゃ食べてみない?」
「遠慮しますわ」

 そんなもの無くても兵士と訓練をなさっているハーロルト兄様は十分にわたくしを求めてくれておりますわ。
 これ以上だなんて、毎晩読書の時間を削ってお慰めするわたくしの身にもなっていただきたいものですわね。
 晩餐が終わり、あてがわれた部屋に戻りますと、わたくしは早速読書を始めます。
 その間、ハーロルト兄様はわたくしを膝の上に乗せて、頭を撫でたり、ほっぺたをつついたりしてきますが、もう慣れておりますので何の反応も返しませんわ。
 ハーロルト兄様もわたくしが何の反応も返さないので、余計に構ってくるのでしょうねえ。
 この王都での最後の夜ですし、出来る限りの本を読みたいので、今夜ばかりは本を読むのを邪魔しないで頂きたいですわね。

「ハーロルト兄様。わたくし、今夜は読書にいそしみたいのですけれど」
「うん? いいよ」
「そうですか。では、ハーロルト兄様は先にお休みください」
「もうちょっとパウラを堪能してから寝るよ」
「そうですか」

 堪能という名の構いまくり攻撃ですわね。
 まあ、わたくしは読書にいそしみますので反応は返しませんけれども。
 それにしても、この国に来て、沢山の本を読むことが出来ましたわね、特に魔物に関する本が多くて、わたくしの知恵の泉がさらに充実いたしましたわ。
 その日の夜、と申しますか、真夜中まで読書を楽しんでおりましたら、ハーロルト兄様に本を取り上げられてしまい、カチヤに引き渡されると、湯あみをさせられて寝着に着替えさせられてしまいました。
 髪を乾かしてもらっている間、本を返していただきまして、読書を再開致します。
 ふう、知恵の泉が潤っていくって素晴らしいですわね。
 髪を乾かしきってもらってカチヤ達が部屋から出ていくと、ヒョイっとハーロルト兄様に抱えられてベッドに移動させられまして、本を読んだ体勢のままでいると、ハーロルト兄様に本を取り上げられまして、ベッドに押し倒されますと、肌掛けをかけられて、ハーロルト兄様に抱きしめられると、強制的に目を閉じさせられてしまいましたので、眠らざる得ませんでした。
 翌朝、ハーロルト兄様に強制的に眠らされたので、日が昇りきる前に目が覚めましたので、早速昨日読んでいた本を手に取ると、続きを読み始めました。
 そうしていると、夜明けとともに目が覚めたハーロルト兄様に「おはよう」と言われまして、頭にキスをされますと、いつの間にか部屋に入って来ていたゾフィに手渡されまして、朝の支度をされております。
 着替えの一瞬以外、本から目を離すことはございませんで、準備が終わりますと、ゾフィから再びハーロルト兄様に手渡されまして、そのまま抱えられたまま椅子に座ったハーロルト兄様の膝の上に乗せられて、一口サイズに切り取られた食事を口元に持ってこられますので、それを咀嚼しながら読書を続けました。
 食事を終えた瞬間、読んでいた本が丁度読み終わりましたので、本を閉じますと、テーブルの上に本を置きます。

「パウラ、満足した?」
「ええ、充実した日々を過ごすことが出来ましたわ」

 流石は本好きが治める国の蔵書でございました。
 ハーロルト兄様に口の周りを拭いて頂いている間、蓄えた知識を整頓いたします。
 知らない魔物の生態などを知れて本当に素晴らしい蔵書たちでございました。
 出立するのが躊躇われますが、理由を付けてまた来ることも可能でしょうし、その時を楽しみに致しましょう。
 ハーロルト兄様達と馬車が停まっている場所まで行くと、パパはひょっこりと現れました。

「パウラ~、もういっちゃうの? パパ、寂しいなあ」

 満面の笑みで言われましても……。
 そのままニコニコと手を振ったパパに見送られて、ハーロルト兄様達と一緒に魔人種の国の王都を出立いたしました。

「それにしても、禁書がこんなに手に入るだなんて、夢のようですわ」
「禁書の扱いにはくれぐれも気を付けるんだぞ、この前みたいに急に意識が飛んじゃったらどうするつもりだ?」
「あれは、油断していたわけではないのですが、神の力には逆らえなかったと申しますか……」

 ごにょごにょと言い訳を呟きますが、禁書を読んでいる間に意識を失ってしまい、神界に意識を連れ去られてしまったのは事実ですし、どんなに言い訳を言っても、禁書を読むときはハーロルト兄様が一緒の時だと約束させられてしまいました。
 馬車の中では、すっかり定位置になったクッションが沢山置いてある場所にハーロルト兄様が座り、その膝の上にわたくしが座って本を読むという形になっております。
 旅に出てからというもの、このスタイルがすっかり定着してしまいましたので、今更変えるのもなんだか変な感じがいたしますわね。


 帰り道、妖精種の国、水の龍人種の国、風の龍人種の国を経由いたしまして、祖国に帰ることになりました。
 各国で邪悪なるモノを浄化したことを伝えましたら、各国で盛大な夜会が開かれまして、夜通し邪悪なるモノを浄化したことを祝われたのは良き思い出ですわね。
 褒美として様々な本を頂けたことが、何よりのご褒美でございますわね。
 それにしても、ランツェル様達の勇者一行は未だに南側に居るのだと思いますけれども、今後は勇者らしくまっとうに魔物討伐にだけ勤しんでくださればよろしいのではないでしょうか?
 わたくしにはっぱをかけられて嫌がらせをしていた令嬢達も居なくなったことですし、エーフィー様の聖女教育も進んでいるはずですものね。
 邪悪なるモノとの最終決戦もしなくてよいのですし、魔物討伐の旅から帰って来ましたら、魅了の魔眼によって魅了されたランツェル様達を解呪しなければなりませんけれども、それに関しては魔法師が行ってくださいますでしょうから、わたくしは祖国に戻って今まで通りに本を読む作業に没頭できますわね。
 邪悪なるモノを浄化したせいか、北の湿地帯に集まっていた瘴気が分散され、各地で一時的に魔物が強くなっているという報告も受けておりますが、わたくし達が旅している道中に現れた魔物は相変わらずハーロルト兄様達で処理できる程度のものでございましたので、各国の勇者一行が頑張って魔物討伐を続けていれば、しばらくの間は平穏な時が続くのではないでしょうか?
 まあ、いつまたどこで邪悪なるモノの種が孵化するかはわかりませんけれども、読んだ小説には続編を示唆するような事は書かれておりませんでしたし、しばらくは平穏でしょう。
 それにしても、数か月ぶりの祖国の王都の門を見ますと、感慨深いものがございますわね。
 門を通り抜けまして、王宮に辿り着きますと、魔改造した馬車の中にある様々なものをカチヤ達がアイテムボックスに仕舞っていきます。
 どんどんと空になっていく馬車の中を見るのも、感慨深いですわね、これで旅が終わってしまうのかと思いますと、もう少し諸国漫遊して各国の本を読み漁りたかったですわ。
 けれども、邪悪なるモノを浄化したという報告はしなければいけませんし、一度帰ってくるしか選択肢はございませんでしたのよね。

「パウラ、ほら、父上に謁見に行くよ」
「わかりましたわ、ハーロルト兄様」

 すっかり空になってしまった馬車を置いて、わたくし達は国王陛下に報告をするために謁見室に参りました。
 謁見室で本を読みながら待っていますと、慌てた様子の国王陛下がいらっしゃいました。

「ハーロルト、パウラ。良く帰って来た。無事なのだな? 先ほど、ヘルムより邪悪なるモノを浄化したと聞いたか真か?」
「そうですよ、父上。パウラが聖女として邪悪なるモノを浄化しました」
「そうか、よくやってくれたパウラ。これでしばらくの間は魔物が再び大量発生するという事はないだろう。いや、誠によきかな。ハーロルト達が出立する前はどうなる事かと思ったが、いやはや、こんな結末になるとは思わなんだな」
「それで父上、ランツェル達の方ですがどうします? そんなに遠くには行っていないでしょうし、一度王都に帰らせますか?」
「そうだな、邪悪なるモノが浄化されたことを伝えねばならぬしな。そうだ、各国にも書簡を回さねばならない。なんと言っても我が国の勇者一行が邪悪なるモノを浄化したのだ、これほどめでたいことは無い」

 国王陛下はそれはもう嬉しそうになさっておいでです。
 それはいいのですけれども、これでわたくしの聖女としての役割も終わりましたわね、さて、図書塔に籠って読書に勤しむ日々が返ってきましたわ。
 図書塔の本を全て読破しましたら、外交という名目で、ハーロルト兄様と一緒に諸国漫遊いたしまして、各国の書物を読み漁るのもいいかもしれませんわね。

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