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冬薔薇姫

茄子

026 魔人種の国 その3 浄化

※呪文の文章は適当です。ツッコミ不可ですよぉ。

 パパに見送られて魔人種の国の王都を出立して三日、途中魔物にも襲われましたが、問題なくハーロルト兄様達が倒してしまって、わたくしはカチヤ達に守られてばかりでございました。
 魔物も強くなっていますので討伐まで時間が掛かりますし、流石に今までのように無傷と言うわけにもいきませんので、浄化魔法の他にも回復魔法を使えるようになったことが変化と言えば変化でしょうか?
 そして、辺りを付けていた湿地の北側にある滝に到着いたしますと、魔人種の国の勇者一行と合流することが出来ました。

「ちわーっす。あんたらが陛下の言ってた人間種の勇者一行でいいんすよね?」
「人間種の国の一国、ルスハイム王国の勇者、ハーロルトです。こちらは聖女のパウラと言います」
「おお! あんたが陛下の最高傑作の聖女かあ。マジで美人だね、無表情なのがまた人形みたいで良い感じってね。とりあえず、この周辺の露払いはしておいたし、探索もしておいたけど、確かに瘴気は濃いけど、邪悪なるモノの気配はなかったぞ?」
「まだ繭の状態のはずなので、羽化していない為気配が微弱なのかもしれません」
「そっか。細かい瘴気の探索って俺達は苦手だからなあ、そこは人間種の聖女に任せるしかないな。あ、自己紹介が遅れたな、俺はベルク。そんでもってこっちがセパルで、うちの国の聖女な」
「はじめまして。こう見えて聖女になるのは三回目のベテランだから、わからないことがあったら何でも聞いてちょうだい」
「三回目……」

 魔人種などの亜人種は見た目では年齢が分かりませんけれども、お幾つなのでしょうか?
 見た目年齢は二十代後半の美女なのですが、足が蛇のようになっておりますので、ラミアでしょうか?
 勇者は、顔こそ人の物ですが、全身が鱗に覆われておりますし、手にはひれ、後ろには尻尾がございますので、シービジョップかもしれませんわね。
 さて、瘴気は濃いですが、ベルク様、セパル様では邪悪なるモノの探索は出来なかったという事ですわよね。

「では、この辺一帯を探索サーチ致しまして、邪悪なるモノの繭を探したいと思います」
「OK、その間の周辺警戒は任せてくれ」
「お願いいたします」

 そう言うとわたくしは探索サーチをより精密にするために歌を奏上し始めます。
 妖精種の古代語での歌の奏上になりますので、ハーロルト兄様達にはわたくしが何を歌っているかはわからないかもしれませんわね。

「Da mihi potestatem, ut explorarent mala sunt. Deorum, da mihi potestatem filius hominis quoniam visitas perdere impius ubi sunt mirabilia congregentur. Et talem mihi audire cupio. Indica quaeso mihi, ubi est male perdere homines. Quaerere.」

 自然に手足が動き、浄化特化のメイスを持ちながらわたくしは舞いながら歌を奏上いたします。
 そうしますと、滝つぼの奥に微弱ですが、反応を感じました。

「滝つぼの奥に微弱な反応がありましたわ」
「滝つぼの奥ぅ? あそこには洞窟があるけど、昨日行った時は特に何もなかったぞ、なあ?」
「そうね、特に変わったものはなかったと思うけど」
「けれども微弱な反応がございましたので、行くだけ行ってみませんか?」
「まあいいけど」

 わたくし達は滝の裏をまわり滝つぼの奥にある洞窟に入りました。

明かりよルーメン

 このぐらいの魔法でしたら、歌わなくても魔法が発動できますわね。
 周辺一帯に明かりが灯り、視界がはっきり致します。

「あらすごい。私でもここまで広範囲に 明かりを灯すことは出来ないわ。流石は陛下の最高傑作っていうだけあるわね」
「あれだろう、陛下が前に自慢気に言ってた、二代に渡って犯して作ったっていう子供なんだろう? まじですごいよな、陛下。インキュバスとはいえ、自分の娘同然の子供を犯すとか、俺には無理だな」
「普通は無理でしょ。インキュバスにだって理性はあるのよ? 陛下は神の啓示があったから犯したとか言ってたけど、インキュバスの貞操観念の薄さは有名じゃない」
「まあなぁ」
「それにしても、十五年前だったかしら? 陛下が前国王を追い落として国王になった時は驚いたわよね」
「まったくだよなあ。確かに、実力で言えば、前回の勇者してたし、国王になっても文句を言うやつは貴族ぐらいだっただろうけど、前国王を快楽堕ちさせて、貴族や民衆の前で『この者を妾の後継者とする』って宣言させたのにはびびったよなあ」

 なにしているんですかね、パパ。
 って、前回の勇者!? 魔人種の国、大丈夫ですか?
 魔人種の勇者一行の和気あいあいとした会話を聞きながら、探索魔法を常時発動しております。
 ハーロルト兄様達は周辺に警戒しているのか、口数が少ないと申しますか、押し黙っておりますわね。
 そうですわよねえ、普通はそうですわよねえ。
 魔人種の勇者一行が普通ではないのですわよね。
 ……右奥の方に瘴気が流れ込んでおりますわね、そちらに繭があるのでしょうか?

「こちらの右奥の方に瘴気が流れ込んでいくようです、行ってみませんか?」
「いいけど、昨日行った時はなにもなかったぞ?」
「まあいいじゃない、行くだけ言ってみましょう、何か変化があるかもしれないもの」
「へーへー」

 右奥の部屋に入りますと、そこは行き止まりになっておりまして、壁の中に瘴気が吸い込まれていく感じがいたしました。
 その壁に手を当ててみますと、若干ひんやりとした感じがいたしますわね。
 わたくしは浄化特化のメイスをアイテムボックスに仕舞うと、攻撃特化のメイスを取り出しました。

「パウラ、何をするつもりだ?」
「この壁の向こうに瘴気が流れ込んでおりますので、ちょっと壁を破壊しようと思いまして」
「「「は?」」」

 ハーロルト兄様とベルク様とセパル様が揃って声を上げますが、気にせずにわたくしは身体強化魔法を自分にかけて、思いっきり壁に向けてメイスを振り下ろしました。
 「バゴ」という鈍い音がいたしまして、壁はへこみましたが、破壊するまでには至りませんでしたので、もう一度メイスを振り上げて壁に向かって振り下ろすと言う作業を十回ほど繰り返しますと、「ガゴン」と音がいたしまして、壁が崩れ落ちていきました。

「俺、陛下の作り上げた最高傑作の噂を聞いたことがあるんだけど、病弱だって聞いた気がする」
「私もよ」
「あー、見た目と行動でそう思われているだけで、至って健康体なんですよ」
「流石陛下の最高傑作」
「見た目を見事に裏切る辺り、陛下の製造物よねえ」

 後ろで何か言われておりますが、気にしませんわ。

「皆様、都合よく穴が開きましたので、中に入りましょう」
「こう言うのって、普通回り道をしたり、隠し通路を発見していく場所であって、こんな壁を破壊して直通の道を作る物じゃないと思うんだ、パウラ」
「ハーロルト兄様、効率って大事だと思いますのよ」
「うん、パウラはそう考えるよな」

 わたくしは攻撃特化のメイスをアイテムボックスに仕舞いまして、浄化特化のメイスを再び取り出します。
 部屋の中は暗いので、「明かりよルーメン」を発動いたしまして明るく致しますと、少々手狭ではありますが、四角形の部屋になっておりまして、中央に繭がございました。
 周囲にも糸のような物が張り巡らされておりまして、ねばねばはしていませんが、通るのに苦労しますわね。
 ハーロルト兄様達は剣で糸を切って繭の方に近づいて行きます。

「これが邪悪なるモノの繭?」
「そうですわね」
「これを浄化するって、どうやるんだい?」
「浄化の炎で、消し炭にいたしますわ」
「うはっパウラ様、かっげきぃ」
「普通の浄化魔法では浄化出来ないっていう事なのね。その浄化の炎の魔法、是非とも見てみたいわ」
「では、わたくしは歌を奏上いたしますので、周辺の警戒をお願い致します」
「わかった」

 ハーロルト兄様達が周囲の警戒を始めたのを確認して、わたくしは歌を奏上し始めます。

「Deorum in cælis: quo expiato et sanctificato malum in conspectu dans mihi flammae, quae iustum coram me. Fidelis servus tuus sum ego: da mihi potestatem, et delere mala sunt. Da mihi virtutem impressam exstingueret; et homo impius ab hoc mundo, da mihi potestatem, quod nunc patefactum est et in purificationem flamma.」

 歌の奏上が終わると、眉が青白い炎に包まれて燃えていきます。

「ピギャーーーー」

 耳を劈くような叫び声が聞こえてきますが、蒼白い炎は繭を焼き続けます。

「Cum deficerent perdere flamma Purificationis et mali.」

 追加で歌を奏上いたしますと、より一層青白い炎が勢いを増し、繭を焼き尽くしました。
 繭の形跡が跡形もなくなったのを確認いたしまして、わたくしは繭のあった場所に参りますと、地面に黒い結晶のような物が落ちていましたので、ためらいなく拾って持ちますと「パリン」と音を立ててはじけ飛んでしまいました。
 …………え、今は身体強化魔法をかけておりませんわよ?

「わ、わたくしのせいじゃないですわよ?」

 周囲からの視線に耐え切れず咄嗟にそう言いましたが、どう見てもわたくしが指先で砕いたように見えますわよね。
 違うのですよ、本当に持っただけではじけ飛びましたのよ。

「まあ、とりあえず邪悪なるモノは浄化できたんだし、一旦王都に戻らないか?」
「あ、俺達はまだこの湿地に残って魔物討伐をするから、先に帰ってくれよな」
「そうね、邪悪なるモノが浄化されても、魔物は残っているものね」
「そうか、じゃあお言葉に甘えて報告を兼ねて私達は先に王都に戻らせてもらうよ」
「まあ、陛下の事だから水鏡で見てんだろうけどな」
「そうよねえ、なんたって最高傑作って自慢する実の娘みたいな存在だものねえ、産まれてからもずっと見て来たっていうし、ストーカーよね」

 いえ、多くは語りませんが、国民のしかも勇者一行にストーカー呼ばわりされるパパって、威厳とか全く無いのでは?
 魔人種の国の国王の座を奪い取った方法と言い、神の啓示があったからとはいえ、国王に向いているとはとても思えませんわね。
 それにしても、羽化していないとはいえ、邪悪なるモノの浄化はあっさりとしたもので終わってしまいましたわね、小説の中であんなに苦戦していたのは何だったのでしょうか?
 ともかく、わたくし達は魔人種の勇者一行と別れて、魔人種の国の王都に向かう事にいたしました。
 帰り道は魔物に襲われることもなく、スムーズに帰還することが出来、三日ぶりに王都に入りますと、馬車の屋根の上にドスン、という衝撃が襲ってきました。

「なんでしょうか?」

 馬車を止めて、フートが御者席から屋根の上を確認いたしますと、どうやらパパが屋根の上に飛び乗ったようなのでございます。
 知らせを受けて、馬車から下りますと、上下逆さまの状態になったパパがわたくしの前に顔を出しました。

「お疲れ様、パウラ。思いのほかあっさりおわちゃったなー、流石俺の最高傑作。もうマジ最高」
「ありがとうございます」
「うんうん。とりあえず王宮に行こうか、ほら、馬車の中に入って」

 パパの言葉に、わたくし達は馬車の中に入りますと、馬車の上から大きな声で「しゅっぱーつ」と聞こえてきました。
 馬車の上に国王が乗っているとか、恥ずかしいので止めて頂きたいのですけれども、言っても止めては下さらないのでしょうね。
 ああ、窓から街道を見るのが怖いので見られませんわ。
 きっと奇異な物を見る目で見られているのでしょうね……、本当に恥ずかしいので止めて頂きたいですわ。
 羞恥プレイのまま、王宮に到着いたしますと、やっと屋根からパパが下りてくれたらしく、馬車の扉が「バーン」と開けられます。
 もちろん開けたのはパパでございまして、ニコニコとした笑顔を浮かべて馬車の中からわたくしを引きずり出しました。
 ええ、文字通り馬車の中に乗り込んできて、わたくしを持ち上げるとそのままずるり、と引きずり出したのでございます、この人、本当にこの国の国王ですか?

「邪悪なるモノの浄化お疲れ様―、見てたけどパウラ大活躍だったね。妖精種の古代語の歌も綺麗に奏上できてたし、やっぱり俺の最高傑作なだけはあるな」

 両脇に手を入れられて抱えられたままなので、早く下ろしていただきたいのですが、ご機嫌なパパはまだ下ろしてくれそうにありません。

「あ、そうだ。ご褒美に甘いお菓子をたんと用意してあるんだ。パウラはお菓子好き? 本のほうがいいだろうけど、とりあえずはお菓子でも食べてゆっくりしろよな」

 なにが楽しいのかわかりませんが、パパはニコニコしながらわたくしを抱えた体勢のまま、王宮の中を歩いて行きます。
 すれ違う方々の視線が痛いので早く下ろしてくださいませ。

「あ、祖国に帰るんだったよな。そのまえに図書館にある本を読むのにゆっくり滞在していくのがいいんじゃないか?」

 魅力的なお誘いですわね。
 けれども、一日も早く祖国に帰って邪悪なるモノを浄化した報告をしなければならないのも事実なのですわよね。
 ああ、悩ましいですわ。

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