話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

冬薔薇姫

茄子

024 魔人種の国 その1

 魔人種の国の領域に入ると、魔物の襲撃が頻繁にございましたが、相変わらずハーロルト兄様達で倒してしまうので、わたくしの出番はございません。
 一度でいいので、この浄化特化メイスの効力を試してみたいものですわね。
 国に入って三日、馬車を走らせると魔人種の国の王都が見えてきました、おどろおどろしい門構えで、よそ者を歓迎しないと言うような風体でございますが、大丈夫でしょうか?
 なんて心配していたのですが、門はあっさりと通行許可が下りまして、そのまま馬車で王都内を進んでいきます。
 活気があるとは言えませんが、独特の雰囲気のある国でございまして、人通りももちろんございますが、建物が前世で見たようなビルに近い物が多い感じですわね。
 といいましても、せいぜい四階建てぐらいなのですけれども。
 窓から魔人種の国の王都を見学しておりますと、突然馬車が止まりまして、ガクンと馬車内の全体が揺れました。
 特にキッチンからガシャガシャと音がいたしますが、いったい何があったのでしょうか?
 御者席にいるヨルクとビーネが心配ですわね。
 まさか王都のど真ん中で魔物が発生するとは思いませんけれども、そのほかで言いますと、何かに絡まれたとか?
 そう思って馬車内で待機しておりますと、馬車の扉がノックされまして、外から声が欠けられます。

「ハーロルト殿下、ヨルクです。その、魔人種の国の国王が、おいででございます」
「は?」

 まあ、国王陛下がわざわざ出迎えに来たのでしょうか?
 と、いいますかよくわたくしどもの馬車を特定できましたわね、先ぶれで魔人種の国に行くという事はお伝えしておりましたが、詳しい日程などは伝えていなかったはずなのですけれども……。
 ハーロルト兄様が馬車の扉を開けて外に出ますので、カチヤとゾフィに守られる形でわたくしも外に出ます。
 そこには、漆黒の髪に紫色の瞳が美しい、超絶美形が少々地面から浮く形ではありますが、立っていらっしゃいました。

「おお、俺の最高傑作。よく来たな、待ってたぞ」

 いきなりフランクですわね。

「お初にお目にかかる、魔人種の国の国王陛下。私は人間種の国の一つ、ルスハイム王国の勇者であるハーロルトと申します」
「あー、かたっ苦しい挨拶は抜き抜き。水鏡でお前達の事は見てたし、自己紹介はいらないって」

 覗き見駄目、絶対。

「いやぁ、感慨深いな。リベロが成長した姿も美しかったが、パウラが成長した姿もまた美しい。まさに俺好みの女に仕上がったものだな。あ、俺の名前はレックス=オールニヒ。パウラ、お前のパパだぞ」
「……ああ、お母様を孕ませたインキュバスですのね」
「ヴィロッテも孕ませたけどな」
「実の娘同然のお母様も犯したのですか」
「だって、俺インキュバスだし? 神からの啓示があったししかたなくな」

 にっこりと笑って魔人種の国王陛下はわたくしの髪を一房取りますと、そこに口づけをなさいました。
 隙の無い動作に、ハーロルト兄様も反応できないようでございます。

「気軽にパパ、と呼んでくれ」
「……わたくしのお父様は一人だけなのですが」
「パパ、と呼んでくれ」
「お呼びする義理はないと思うのですが」
「パパ、と呼んでくれ」
「……呼ばなかった場合は?」
「パパ、悲しくて泣いちゃうかもなあ」
「じゃあ、呼びませんわ」
「悲しすぎて、お前達の支援に協力しないかもしれないなあ」
「非道」
「だって俺、インキュバスだし。ほら、パパって呼んでくれよ」
「……パパ」
「うんうん、パウラはいい子だな。ほら、魔人種の王宮まで案内してやるから、さっさと馬車を動かせ」

 止めたのはどこの誰ですか!
 パパはそそくさと馬車の中に入り込むと、中からわたくし達を手招きしてきました。
 自由人、という単語が頭をよぎりましたわ。
 わたくし達が馬車の中に入りますと、パパは優雅にソファーに座りますと、先ほどまでわたくしが飲んでいた紅茶を飲んでおりました。

「うん、美味い。これは妖精種の国で採れる茶葉を使ってるな。懐かしいな、妖精種の国。神の啓示が無かったら近づきたくない国だけどなあ。妖精王にまたがった後にヴィロッテを犯した時なんか、ヴィロッテの奴、超絶絶望って顔を浮かべてて、おんもしろかったなぁ」
「妖精王やダクマ伯母様がこの国に行くなと言ったり、潰れてしまえばいいと言った理由が分かった気がいたしますわ」
「その点、リベロは夢だと思っていたせいか、あっさり俺の事を受け入れたなあ、流石俺が仕込んだ子供だけある。あ、パウラには手を出さないから安心してくれ。俺だって死にたくないし」
「どこから見ていたのですか」
「ん? パウラが産まれてからだな。いやぁ、神にパウラがこの世界の重要人物になるから魔人種の国の国王になれとか無茶な啓示を受けた時は思わず笑ったな。まあ、当時はこの国の王は女王だったんだけど、最終的にはインキュバスの技巧を駆使して快楽堕ちさせて乗っ取ったんだぜ、俺、頑張ったよなあ」

 チャラいですわぁ。
 御婆様、こんなインキュバスに犯されるとか、本気で絶望したのでしょうねえ。
 そしてお母様、多分知らないとはいえ、そして夢だと思っていたからとはいえ、こんな父親も同然のチャラいインキュバスに犯されたのですから、もう少しリアクションがあっても良かったのでは?
 あ、それを言ったらサキュバスになって精を絞られたお父様にも言えることですわね。
 ……これがわたくしの製造者ですか、とてつもなく複雑ですわね。
 紅茶を飲み終えたパパはそのまま馬車の中に積み上げられている本のタイトルと眺めていると、急にケラケラと笑い始めました。
 何事です?

「いやぁ、知ってはいたけどパウラは本当にビブリオフィリアだな。うん、間違いなく俺の子だよなあ。俺も本好きで、よく男女問わずその国の王を誑かして禁書とか手に入れてるんだよ」

 性格が悪いですわね、これだからインキュバスは、って言われるんですのよ。

「まあ、俺はもう読んじゃったし、コレクションの本はパウラに全部やってもいいぞ」

 意外と話せばわかる方なのかもしれませんわ。
 各国の禁書が手に入るなんて、夢のようですわね。

「それにしても、魔人種の国でもこの国は最大の国だけど、独特だろう? ありとあらゆる魔人種が集まってるせいもあって、個性が豊かなんだよなあ。あ、別に魔人種同士で仲が悪いってこともないんだぜ? むしろ他の種族から倦厭されてるから仲が良い方なんじゃないか? ただなあ、皆個人プレーが好きって言うか、個性豊かでなあ。いやぁ、この国をまとめ上げるのも一苦労なんだよ。あ、ハーロルト、お前娼館とか興味あるか? 界渡りを集めた娼館があるんだけど、なかなか面白い娘もいるぞ」
「いや、私にはパウラが居るので」
「そうかそうか。パウラは極上だろう? なんたって俺の子だからなあ、二代に渡って丹念に作り上げた俺の最高傑作だ、存分に味わってくれ」

 オリジナル魔法、かけておいてよかったですわね、もしかけてなかったら興味本位でわたくしも犯されていたかもしれませんわ。
 それにしても禁書に出会えるのが待ち遠しいですわね。
 各国の王を誑かして手に入れた禁書ですもの、さぞかし素晴らしいものが眠っているのでしょうね。

「お、王宮が見えて来たぞ」

 言われて窓から外を見てみますと、それはもう、おどろおどろしい外見の王宮が見えてまいりました。
 え、あそこに入るのですか? 禁書だけ受け取って馬車で寝泊まりしたほうがましなような気がするのは何故でしょうか?

「見た目はあんなんだけど、中は極上ってな」
「そうなのですか?」
「ああ、前国王の趣味であんな外見だが、内装は俺の趣味に変更してあるからな」

 それはそれで趣味が悪そうに思えるのは何故でしょうか?
 インキュバスの趣味って、閨事ですわよね?

「いやぁ、それにしても神の啓示を受けた時はどうなるかと思ったけど、まさかパウラが聖女になるとは思わなかったな。うんうん、俺がこの国を乗っ取っておいてよかったなあ」
「乗っ取っていなかった場合でも、わたくしの親族が女王だったはずなのですが」
「遠い親戚よりパパの方が融通が利くだろう? なに、心配はいらないって。滞在中は丁重にもてなすからさ」
「そうですか」

 ああ、本がわたくしを待っておりますわ。
 おどろおどろしい王宮の門を潜り抜け、馬車が玄関に到着いたしましたので、散らばっていた本をアイテムボックスに収納いたしますと、馬車を下りて、王宮の中に入って行きます。
 おどろおどろしい外見の王宮ですが、中に入ると清潔感に満ちた別世界が広がっておりました。
 ただ、疑問なのが、転々と置かれている金平糖の入った器、あれはいったい何の意味が?

「あ、あの金平糖が気になるか?」
「ええ、まあ」
「あれは媚薬入りの金平糖。いつでもどこでも気持ちよくなれるように配置してるんだよ。ほら、夜会とかあるだろう?」

 だろう? じゃないでしょう。

「流石インキュバスですわね、貞操観念がゆるゆるですわ。……ハーロルト兄様、何かわたくしの顔についておりますか?」
「いや、貞操観念についてはパウラは人の事言えない、いや、私だけにしているから貞操観念があるのか?」
「?」
「ああ、ハーロルトの童貞はパウラが喰っちまったもんなあ。まあ、パウラの処女も喰えたんだしお互い様だろう。それにしてもパウラ、その避妊魔法は手強いな、インキュバスの俺の能力を使っても孕ませるのは出来そうにないぞ」
「試さないで下さいね?」
「いや、だから死にたくないからパウラを犯す事は無いって。しかし、本当に俺の最高傑作はいいな、まさに最高の存在だよ。ハーロルトも感謝しろよ? こんな最高の正妃を持てるんだからな。あ、魔人種の女を側妃にするつもりならいつでも相談してくれよ? 手ごろないい女を紹介するから」
「そうなった時は相談させていただきます」

 ハーロルト兄様、滅茶苦茶苦そうな顔をなさっておいでですわね。
 廊下を進んでいきますと、ふとパパの足が止まりまして、目の前にある扉を大きく「バーン」と音がしそうな感じで開けました。

「ここがパウラとハーロルトのこの国での愛の巣だ。子作りはしないみたいだけど、性行為はするんだろう? 道具が必要だったら言ってくれ、準備させるから」

 これだからインキュバスはっ!

「お気遣いだけ頂いておきますわ。それじゃあ、侍従やメイド達は食料品の買い出しもありますので、これで失礼を」
「あ、パウラ。図書館に行くぞ、本がお前を待ってるぞ」
「分かりましたわ、パパ。ハーロルト兄様、行ってまいりますわね」

 本、本、本~♪

「パウラ……」

 ハーロルト兄様達が呆れた顔を向けてきますが、本がわたくしを呼んでいるのですもの、仕方がありませんわよね。
 それにしても、自ら本好きを名乗るのですもの、蔵書も期待できますわね。
 しばらく歩いていると、大きな扉の前につきまして、パパが呪文を唱えますと、音もなくその扉が開きました。

「まあ!」

 祖国や龍人種の国のような図書塔ほどではございませんが、中々の蔵書量ですわ。

「この部屋に有るのは全部俺のコレクションの禁書だから、全部持って行っていいぞ」
「え! いいのですか?」
「ああ、俺はもう読み終わったからな」
「ありがとうございます」

 こんな膨大な量の禁書が一気に手に入るなんて、この国に来てよかったですわ。

「普通の本はこの部屋の隣の方な、ここの本の五倍ぐらいの量があるけど、一応共有物だから、そっちはくれてやれないんだけどな」
「いいえ、これだけの禁書を頂けるだけでも十分ですわ」

 ああ、本当に夢のようですわね。
 わたくしは図書館の中に入りますと、片っ端から本を手に取ってアイテムボックスの中に仕舞っていきます。
 どんどんと空になっていく棚が気持ちがいいですわね。
 二時間ほどかかって図書館にある本を全部アイテムボックスに仕舞いますと、扉の方に戻ります。

「いやぁ、パウラが楽しそうで何よりだ」
「ええ、本は素晴らしいですものねえ」
「うんうん、わかる。本当にパウラは俺の子だな、俺の嗜好にそっくりだ。いや、それ以上だな。あ、普通の図書館の本も見ていくか? 禁書はいつでも読めるだろうけど、普通の本はこの国に滞在している間しか読めないだろう?」
「そうですわね、そうさせていただきますわ」

 わたくし達は隣の部屋に移動いたしまして、今度は呪文を唱えることなく扉を開けますと、そこには壁一面を埋め尽くす本がわたくしを待っておりました。
 はあ、素晴らしいですわ。

「この国にはどれぐらい滞在するつもりなんだ?」
「食料品などの確保が終わり次第旅立つ予定ですわ」
「そうか、じゃああんまり本を読んでいる暇はないな」
「う……」

 ああ、本が、本が……。
 けれども、ここに腰を据えて本を読んでいる間に邪悪なるモノが羽化しても意味はありませんものね。
 禁書が手に入っただけ良しとすべきでしょうか?
 わたくしはとりあえず今日読む分の本を確保致しまして、部屋に戻ることにいたしました。

「冬薔薇姫」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く