わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

75. 橘部長が告白する_3


 新地中華街から歩いて約十分。中島川公園会場は私の想像以上に綺麗だった。
 川沿いに黄色いランタンが並んで、その光が川面かわもに写りこんで水面もキラキラしてる。たくさんの人たちが写真を撮ったりしてる中で、私は宮燈さんとごく自然に手を繋いで歩いてた。

「すごい……こんなの見たことないです!なんて綺麗なんだろう……!」

 中華街は絢爛で賑やかだったけど、ここは雰囲気が全然違う。飾ってある大きなランタンも、金魚や鳥などをモチーフにしてあって、穏やかで幻想的。すぐ近くを路面電車が走っているから、私の好きなモーター音が聞こえてきてわくわくした。

 人はたくさんいるけれど、みな息を飲んでさざめくように話しているから何故かとても静か。会場を一周して、眼鏡橋の下流、袋橋のたもとまで戻ると宮燈さんが立ち止まった。私が笑って見上げると、宮燈さんが屈託なく笑った。

 こんなに笑ってるの初めて!とびっくりしていると、宮燈さんが繋いでいた手を引く。私が一歩近づくと、真っすぐに私を見つめている宮燈さんが告げた。

「桜、ありがとう。私は桜を愛している。いつも一生懸命な君を、愛している」

 ゆらゆらしてる川面。
 石作りのアーチ橋。
 連なるランタンの淡い光。
 優しく笑ってる私の夫。
 私はこの風景を一生忘れないと思う。


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